瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

森川直司『裏町の唄』(08)

・「投稿 風便り」(1)
 さて、2019年12月31日付(06)に、森川氏の執筆活動が数年前まで確認出来ると書いたのは「参禅専門道場 大本山活禅寺」HPへの投稿に拠ってである。
 2019年12月25日付(02)に引いた『昭和下町人情風景』奥付の略歴に「活禅寺徹禅無形老師から得度を受ける。法名は秀安。」とあったところから、或いは「森川秀安」名義で執筆した文章もあるのではないか、と思い検索して見た。
 結果、図書館OPACではヒットしなかったが、「参禅専門道場 大本山活禅寺」HP内の「風便り」と云うページに幾つか「森川秀安」名義で随想を投稿していることが分った。
 この「風便り」は参禅している人が随想や写真を自由に投稿するコーナーで、管理人である活禅寺管長徹空無厳(中城無厳)に採用されたものが掲出されているらしい。
 平成13年(2001)11月29日付の op.1 から、平成26年(2014)9月20日付の op.70 まで、70件の投稿があるが、その大半を森川氏の投稿が占めているのである。
 このコーナーが始まった経緯や、終わった(或いは中絶してしまった)事情はよく分からない。以下、森川氏の投稿を中心に、細目を確認して見よう。適宜、2019年12月28日付(03)に示した本書の細目、2019年12月29日付(04)に示した『昭和下町人情風景』の細目と対象させつつ、メモして置く。
op.1 トンボ  森川秀安さん(東京都) H13/11/29
 「ノスタルジア74」に応じて蜻蛉の思い出を語ったもの。「Nostalgia」は徹空無厳少年期の回想*1を中心とした随想で、 「卵どんぶり op.1 (H11/12/9)」から「凧揚げ op.160 (H23/12/1)」まで160篇、森川氏が挙げているのは日付と内容からして「とんぼ op.55 (H13/11/24)」に違いない。番号が異なるのはその後整理した項目があるからであろう。
op.2 クビキリギズ  森川秀安さん(東京都) H14/10/10
 これも「ノスタルジア84」の「女たちの社交場でもある小川の洗濯場」からの連想で、まづ前半、深川の「共同水道」や「木っ端拾い」「定額電灯」について回想している。これも日付と内容からして「Nostalgia」の「なかみぞ1 洗濯場 op.65 (H14/9/18)」に違いない。「Nostalgia」ではさらに「なかみぞ2 しじみ op.66 (H14/10/9)」「なかみぞ3 ひご釣り op.67 (H14/10/18)」「なかみぞ-4 その後 op.68 (H14/11/20)」と続稿があるが、森川氏が本項を執筆した際には「なかみぞ1」のみで、題も違っていたのであろう。
 この前半の内容は本書の【26】「定額電燈」【27】「木ッ端拾い」【46】「共同水道」の要約と云うべきもの。なお『昭和下町人情風景』Ⅰ 昭 和【17】「定額電灯」は異稿、Ⅱ 下 町【23】「共同水道」は再録。
 後半は『昭和下町人情風景』Ⅱ 下 町【7】「矢切りの渡し」に述べてある江戸川河川敷の開墾、そして最後に題になっている「クビキリというバッタ」の話になる。
 以下は次回以降に回す。――この森川氏の長文の投稿を見て、自由投稿欄のようなものの開設を思い付いたのかも知れない。それが「op.1 トンボ」からなのか、それとも「op.2 クビキリギズ」以降なのか、気になるのだけれども。(以下続稿)

*1:高知県高岡郡窪川町(現、四万十町)の仁井田川流域、国鉄土讃本線(現、JR四国土讃線)沿線。

森川直司『裏町の唄』(07)

・『昭和下町人情風景』の「あとがき」(2)
 2019年12月31日付(06)の続き。
 続けて『昭和下町人情風景』の「あとがき」を見て置こう。234頁12行め~235頁3行め、

 作品は、昭和四十七年(一九七二年)六月から平成二年(一九九〇年)十月まで一八年間に/及ぶから、書かれた年代を考慮して読まないと、現在では納得できないものもあると思うので、/一編ごとに末尾に年月日を記載した。この年月日は、『商取ニュース』の発行日なので、原稿を/書いたのはそれより三日ないし、一カ月前である。また、『裏町の唄』に作品は、本の完成まで【234】一年を要したが、出版の昭和五十三年とした。
『商取ニュース』の随想は、始めの二年半に二十三編、後の五年に三十一編で、この中間の十/年間には七編しか載せていないが、この間に『裏町の唄』を出版している。


 2019年12月29日付(04)に示した『昭和下町人情風景』の細目に、各篇の末尾の括弧にある年月日を添えて置いたが、その意味と理由はここに説明されている。本書『裏町の唄』成立の経緯は2019年12月30日付(05)に引いた「まえがき」に説明されていた。
 235頁4~8行め、

 題名の『昭和下町人情風景』は筆者の発案ではないが、内容をよくとらえていると思う。
 便宜上、八十一編を四章に分け、題名の「昭和」「下町」「人情」「風景」を冠しているが、そ/の内容についてはそれほど厳密に区分しているわけではない。
 全編が、書かれた年月順に配列されているのだが、同じ五十年代ということで、「下町」の章/に『裏町の唄』の十八編が収録されている。


 「商取ニュース」の随想は、細目を見ても分かるように時事も取り上げ、本文中にもしばしば言及している。そこで発表時期を一々断ることにしたと云うのだが、この配慮は非常に有難い。同種の文章でも単行本収録に際して初出の情報を省いてしまった例を多々見ているが、それでは利用価値が何割か減ってしまう。筆者にその意識がなくても編集サイドが、雑誌や業界紙よりも後代に残ることに思いを致して、最小限の情報は少々面倒になっても漏らさないで欲しい。
 それから、標題及び章立てに関して、ちょっとそぐわない印象を受けたのだが、上手い案が浮かばなかったので次善の策として採用したもののようである。「書かれた年月順に配列」したのでは、そもそも「厳密」な「区分」など初めから目指していないので、切れ目なく並べるのではなく、何となくであっても分かれていれば良かったのであろう。(以下続稿)