瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

北杜夫『南太平洋ひるね旅』(5)

 昨日の続きで、①ポケット・ライブラリ版と②新装版について。
 ①は見返しの遊紙などはなく、表紙をめくるとすぐに1頁(頁付なし)扉、2本の紐が緩く絡み合ったような飾り枠(約12.5×約8.0cm)に、横組み中央揃えで行間を広く取って、上部に「北  杜 夫/南太平洋ひるね旅」標題は太字で大きい。下部に「ポケット・ライブラリ/25/新 潮 社 版」。
 ②は見返し(遊紙)は青い紙で表紙に貼付けられていないので2枚ぶらぶらしている。次いでアート紙の扉、文字は全て横長の明朝体横組みで、上部に標題、中央右下に青で「北 杜夫」その左に椰子が1本生えた半球状の島と漁網を積んだ漁船の線描のイラスト、右下に「Ryo.」のサイン。これらの上、標題の下に水深を表したようなの3色。漁船のイラストの下左に版元名。下はやや広い余白。1頁(頁付なし)はさらに扉で、中央やや上に明朝体縦組みで標題。
 以下、文字はキャプション(ゴシック体横組み)を除いて全て明朝体
 3~5頁(頁付なし)は目次で、3頁は上部中央に「目 次」、下部中央に壁のない建物の円錐形の大きな屋根の頂部近くに2人の人物がいる。大きさは①(4.9×3.9cm)②(5.0×4.7cm)で②で左右が広くなっている。4頁は1~10章めまで、5頁は11~15章めまで、15章めを例に取ると「15 旅の終り ………… 二三九」漢数字は半角、章題と頁の間の3点リーダ「…」は25箇で①は6.7cm、②は6.6cm、1つめの3点リーダの真ん中が欠けているのが一致するから同版で、増刷を重ねるうち、紙型が 0.1cm縮んだか。①は以下余白だが、②はもう1行、下寄せでやや小さく「イラスト 山 本 忠 敬」と追加されている。
 7頁(頁付なし)中扉、左側に「南太平洋ひるね旅/  ハワイ→タヒチ→フィジーニューカレドニアサモア」とあって、他は①は余白になっているが、②は右下に写真(5.0×4.3cm)がある。屋外で炊事をする少女のようだ。
 9頁から本文で頁付がある。②は若干縮んでいるようだが①と同版で、その分余白が広くなっている。
 以下、本文は同じ(らしいの)だがふんだんに挿入される写真に差替えがある。写真は③文庫版にも収録されているので、写真については別に纏めて検討することとしよう。
 ①258頁まで。②は①では白紙になっていた259頁に、一回り小さい活字の「後  記」がある。前半、2~8行めを抜いて置こう。

 この本は、一九六二年四月に、一度新潮社から刊行されたものを、このたび新装版として復刊する/ことになったものである。
 当時、もちろんハワイは除いて、南太平洋の島々を旅した日本人はまだ少なかった。ジャーナリス/トでは朝日新聞の記者二名が訪れ、文章を発表したくらいのもので、まだまだ幻想性が残っていた。
 現在では、この本に述べられたより遙かに飛行機の便もよくなっているし、日本人観光団がいくら/も出かけるようになった。その代り、これらの島々は、ますます観光地化され、「最後の楽園」を夢み/て旅するならせめて今のうちと考えられる。                 (一九六七年記)


 2~5行めの2段落については、10月27日付「赤いマント(289)」に③文庫版と④全集の該当箇所を抜いて置いた。異同は註記しない。ここでは6~8行めに当たる箇所を見て置こう。
 ③文庫版(二十一刷・二十二刷)227頁7~9行め(改行位置「/」)、④全集251頁上段7~10行め(改行位置「|」)

 現在では、この本に述べられたより遙*1かに飛行機の便も|よくなっているし、日本人観光団がい/くらも出かけるよう|になった。その代り、これらの島々は、ますます観光地化|され、「最後の楽/園」という言葉もあやしくなった。


 最後の灰色太字にした箇所が改稿されている。(以下続稿)

*1:③ルビ「はる」。

北杜夫『南太平洋ひるね旅』(4)

 昨日の続きで、①ポケット・ライブラリ版と②新装版について。
 書影は10月27日付「赤いマント(289)」に貼付して置きました。
 現在、新書にはカバーが掛かっておりますが、当時の新書にはカバーはありません。①の表紙は光沢のあるやや厚い紙で、文字は横組みで上部には右寄りに明朝体で標題、その下に以下の版には引き継がれていない「● ナマケモノの神の息吹きを浴びて」との副題、少し空けて「北 杜 夫」の著者名、飛行機から見下ろした環礁のカラー写真があって、最下部中央にゴシック体で小さく「ポケット・ライブラリ」のシリーズ名。
 ②の表紙は白地に、椰子が1本生え、水色と青の水に取り囲まれた焦げ茶色のドーム状の島の絵。椰子や島、水は切り絵で、椰子の横縞19本と水の周囲の7つの波が黒(もしくは濃紺)の万年筆で書き入れられている。文字は横長のゴシック体横組みで、最上部に幅一杯に大きく標題、中央やや右上にやや大きく「北 杜夫」。
 ①の背表紙は明朝体縦組みで上部に標題、中央に上空から見下ろした木々の生い茂った森の写真を木の形に合わせてほぼ円形に切ったものに緑色を被せたカット(径0.9cm)、その下に標題よりやや大きく「北 杜 夫」、2字分空けて小さく「25 」その下、最下部に版元名が入っているのではないかと思われるのだが分類票貼付のため不明。
 ②の背表紙は横長のゴシック体で、上半分に青で大きく標題、中央やや下にやや大きく黒で「北 杜夫」。最下部の版元名は横長ではないゴシック体。
 ①の裏表紙は左上に白黒写真(4.6×4.2cm)、草原(?)の向こうに壁のない、屋根ばかりが大きい家3棟と何本かの椰子を遠景に、現地の子供の肩を右後ろから軽く抱いて笑顔の北氏が写る。アロハシャツで右肩に大きな袋状の鞄を肩に掛けている。右傍下寄せに明朝体で小さく「東サモアの部落にて」のキャプション。その右にゴシック体縦組みで、

ハワイタヒチフィジー→ /ニューカレドニアサモア。 /アオレレ(飛ぶ雲)のように放浪したどくとるマンボウの紀行!

とある。その右、上に背表紙中央と同じような緑のカット(右上~左下1.0cm)。
 これら、リード文や写真の下、裏表紙の大部分を明朝体の紹介文が占めている。

日本の端、奄美、いや沖縄の海辺に立って太平洋の彼方を/見ると、……この向うは何処だろう、アメリカかな? と/思う。その前に何かあったようだ。ハワイだ。そしてその/南!、南太平洋の、日本へ回流してくる潮のちょうど上手/の方に、無数にちらばる島々。夜半にジェット機で羽田を/立つとホノルルまで一とび、夢のような気候のなかで、東/京の人よりはもっと日本式の一世が働き、二世が飛躍して/いる。タヒチ、フィジーニューカレドニア、東西サモア/となると、気持ちの良さにうとうとと、うっかり飛行機を/逃がせば一週間はおいてきぼり、丸木舟なら何日かかるか/見当もつかぬ。土人へみやげのビニール風船片手に、島か/ら島へと気の向くままのどくとるマンボウ単独行。ポリネ/シア娘をものにするなんてことより、もっと楽しい旅の味/を、胸いっぱい吸って歩く、日本脱出の二カ月。……風と/光と、観光の仮面を脱いだ生のままの大人、子供との交り/に、文明的ストレスも雲散霧消!


 バーコードで隠れているところもあるが裏から光を当てて何とか全部読み得た。
 最下部、中央上寄りに緑のカット(左上~右下1.0cm)、その左にやや大きく「¥ 200  」、右に「  新 潮 社 版」と明朝体横組み。
 ②の裏表紙は表紙と同じ絵をやや左寄りに載せ、文字は右下にゴシック体で「¥ 300」。
 ②は、カバーではないが折返しがある。しかし切除されていて、表紙折返しは上部に写真(縦2.7cm)、その下に明朝体縦組みの紹介文があったことが分かるが、1行め「夜半、ジェット機に乗り込んで日本を脱出すると、ホノルル‥‥」までが読めるばかりである。裏表紙折返しは下部に細いゴシック体縦組みで「装幀 柳原良平」とある。(以下続稿)