瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

2012-04-01から1ヶ月間の記事一覧

山下武『20世紀日本怪異文学誌』(04)

香山滋の次に平井呈一「エイプリル・フール」が取り上げられている。4月6日付「平井呈一『真夜中の檻』(18)」に疑問点を挙げて置いたが、そこでも述べたように私は怪異小説を殆ど読んでいないから、山下氏が本書で紹介している作品も殆ど読んでいない。雑…

山下武『20世紀日本怪異文学誌』(03)

本書については、以下、順を追って瑣事を挙げて行くつもりだけれども、十分整理し切れている訳ではなく、後回しにした事項も少なくない。いづれ前後することとなると思うので、章題の作者・作品名を一々挙げることはしないで置く。改めて、初出誌と対照する…

山下武『20世紀日本怪異文学誌』(02)

スキャンミスに起因する誤植が多いようだ、と言いながら、昨日挙げたのはそうでないような例ばかりだった。その続き。 * * * * * * * * * *・42頁13〜16行め、昭和13年(1938)1月号から雑誌「令女界」に連載が始まる久生十蘭「妖術」について、山…

山下武『20世紀日本怪異文学誌』(01)

山下武『20世紀日本怪異文学誌 ―ドッペルゲンガー文学考―』(2003年9月5日初版発行・定価2500円・有楽出版社・391頁)を読み終えた。4月5日付で触れたが、誤植が多い。 以下、疑問点を列挙して行くが、誤植の原因は、やはり雑誌連載のコピーをスキャンして、…

新小説「怪談百物語」(03)

この特集を再録するちくま文庫版『百物語怪談会』について。まだ「新小説」は見ていません。書影は2011年3月23日付(01)に挙げました。この「怪談百物語」が如何なるものであるかは、この(01)と2011年3月24日付(02)に述べました。 他にも述べたいことが…

中島敦の文庫本(19)

・旺文社文庫(6) 話を旺文社文庫に戻す。 並製本(昭和44年重版)と昭和43年版は200頁「年譜」に続いて奥付があるが、昭和59年版は1頁「旺文社文庫〈現代語訳/対 照〉古典文学シリーズ」の広告があり、その裏が奥付である。 奥付の体裁は、昭和43年版と…

中島敦の文庫本(18)

・旺文社文庫(5) さて、本文には違いはないようだが、巻末の解説・エッセイの「筆者紹介」のうちの、氷上氏(169頁)と井上氏(172頁)は同文だが、岩田氏のそれ(178頁)は相違している。この岩田氏の「筆者紹介」については、前回触れておくべきだった…

中島敦の文庫本(17)

・旺文社文庫(4) ここまで、改版の『愛と青春の名作集』を「上製本」と呼んで来たが、これは良い呼び方ではなかった。 何故なら、文庫版の上製本が旺文社文庫にはあるからである。 そういえば、私の高校にも、この上製本の旺文社文庫と、それから上製本の…

終電車の幽霊(3)

よく似た話は埼玉県北埼玉郡羽生町(現・羽生市)でも、「大東亜戦争」の末期に行われていた。昭和59年(1984)刊『羽生昔がたり』の2頁に載っている(第1話)。原本未見だが羽生市のHPの「『羽生昔がたり』」*1に公開されている「終電車の怪」*2。――東武…

終電車の幽霊(2)

新美南吉(1913.7.30〜1943.3.22)は半田市(生誕時は知多郡半田町)岩滑の出身で、最寄駅は知多鉄道(現・名鉄河和線)の半田口駅である。知多鉄道は愛知電気鉄道常滑線の太田川駅から分岐している。 この話、新美氏は有名人だし、このノートは大日本図書の…

終電車の幽霊(1)

『校定 新美南吉全集』第十二巻(日記ノートIII・書簡・画帖)(一九八一年五月三一日初版第一刷発行・一九八三年四月二八日第二刷発行・大日本図書・593頁)の「昭和十六・十七年ノート」(表紙欠)は昭和16年(1941)12月1日から昭和17年(1942)9月17日ま…

高木敏雄の記事について(1)

昨日、高木敏雄の縁者の方から、問い合わせのコメントが入っていました。 このブログ、全く何を書いているのか分からないような状態で、とにかく毎日更新するということにして、惰性で続けているなぁと反省した次第です。 このブログの存在は、知人には全く…

夏目鏡子『漱石の思ひ出』(2)

岩波書店から刊行されている単行本について。 * * * * * * * * * * 『漱石の思ひ出』四六判上製本。昭和4年(1929)に第一刷が刊行され、平成15年(2003)に至って改版された。 私が見たのは第八刷(昭和四年十月十日印刷・昭和四年十月十五日第一…

現代詩文庫47『木原孝一詩集』(6)

一昨日からの「鎮魂歌」の続き。 * * * * * * * * * * 第9連は「一九五五年」でここまでは偶数連と奇数連が同じ年の昭和(年号)と西暦だったのが、ここでは10年ずれている。 さて、この詩は周囲からも注目されており、「作品論・詩人論」でも複数…

現代詩文庫47『木原孝一詩集』(5)

「鎮魂歌」の続き。 * * * * * * * * * * 第8連「昭和二十年/五月二十四日の夜が明けると/弟よ おまえは黒焦げの燃えがらだった/……」。木原氏の一家の昭和2年(1927)以降の住所は自伝昭和二年条(127頁上段)によれば「東京府下荏原郡戸越町蛇…

現代詩文庫47『木原孝一詩集』(4)

「詩篇」Ⅰには10篇を収録するが、その9番め(22〜23頁)に「鎮魂歌」がある。 これは木原氏の代表作で、高校教科書(『現代文』教育出版)にも収録されている。 ネット上にも複数のサイトで全文が引用されており、感想を述べているブログもいくつかあるので…

現代詩文庫47『木原孝一詩集』(3)

内容は、1頁(頁付なし)扉、3〜8頁(頁付なし)「目次」、4〜160頁は中扉を除き2段組。 9頁(頁付なし)中扉「詩篇」10〜30頁「Ⅰ」31〜43頁「II」44〜67頁「III」68頁〜80頁上段「IV」80頁下段〜96頁「未刊詩篇から」97〜112頁「放送詩劇」(1篇「記憶の町…

森鴎外『阿部一族』の文庫本(6)

・PHP文庫 鴎外の武士道小説(PHP文庫)作者: 森鴎外,長尾剛出版社/メーカー: PHP研究所発売日: 2009/12/01メディア: 文庫 クリック: 1回この商品を含むブログを見る 森鴎外/長尾剛 編『鴎外の「武士道」小説 傑作短編選』2009年12月14日第1版第1刷・定価476…

現代詩文庫47『木原孝一詩集』(2)

さて、この1年の錯誤だが、昭和一六年条に、 一二月。大本営付被命。八日朝、淵野辺から電車に乗/り、その車内で、対米英開戦を知る。大本営に出頭する/と、戦時設計規格、戦時構造規格、設計委員を命ぜられ/る。建築技師不在の軍隊で、容易に兵舎や陣地…

現代詩文庫47『木原孝一詩集』(1)

小学4年生のときの担任が、生徒に詩を毎日書かせる人で、それを毎日編集して、藁半紙に印刷して配布してくれた。当時は版下を全て手書きで作成しないといけないので、今から考えるとすごい労力で、とにかく書くのも書かせるのも、読むのも好きだったのだと思…

中島敦の文庫本(16)

・旺文社文庫(3) 2月6日付(09)の続きで、旺文社文庫『李陵・弟子・山月記』とその改版の上製本『李陵・山月記(愛と青春の名作集)』の比較。 * * * * * * * * * * 文庫版では続いて170〜172頁に、井上靖「「李陵」と「山月記」」がある。最…

夏目漱石『吾輩は猫である』の文庫本(03)

・角川文庫109(2) ・平成九年六月十日改版八十五版発行 カバー表紙折返しの上部に著者の写真、その下に縦組みの著者紹介文で改版七十八版に同じ。カバーの担当者名はなし。カバー背表紙、淡い桃色地、上部に「QRコード|な|1-1|Y460|」ゴシック体の著者名…

夏目漱石『吾輩は猫である』の文庫本(02)

・角川文庫109(1) 吾輩は猫である (角川文庫)作者: 夏目漱石出版社/メーカー: 角川書店発売日: 1962/09/01メディア: 文庫 クリック: 72回この商品を含むブログ (39件) を見る 当初上下2冊で、上が角川文庫109、下が角川文庫110だったようだが、未見。 現…

平井呈一『真夜中の檻』(19)

次に「エイプリル・フール」だが、これにははっきり年は書き込まれていない。ただ、ヒントはある。 「1」章の冒頭にいきなり引用されるN・Hからの「3・31」付の手紙(133〜134頁)に、「明後日(金曜日)」とある。 そこで、昭和31年辺りからの3月31日…

平井呈一『真夜中の檻』(18)

山下氏の本について、前回誤植が多いことを指摘したが、差し当たり「平井呈一「エイプリル・フール」」の章から拾って置く。 ・97頁10行め 「相手に引き寄せられた津田は」とあるが、津田はヒロインの姓であって男の方は「原田」。 ・97頁18行め 「二階で寝…

平井呈一『真夜中の檻』(17)

さて、2月2日付(16)以来2ヶ月が経過し、いつの間にかエイプリル・フールも過ぎてしまった。それにしても、あんな下らぬ趣向を考えるくらい(しかも不発)なら、平井氏の「エイプリル・フール」について書いて置くべきだった。 * * * * * * * * * …

夏目漱石『坊っちゃん』の文庫本(07)

・角川文庫13390(2) 3月23日付(06)の続き。 改版初版と改版九版の内容は同じ。以下、必要に応じて改版初版とその前に出ていた角川文庫79の改版六十六版*1との違いを指摘して置く。1頁(頁付なし)扉、3頁「目次」、4〜6頁(頁付なし)中村明「夏目漱石…

夏目鏡子『漱石の思ひ出』(1)

岩波書店から単行本が未だに刊行されているが、まず文庫本から見て置く。 * * * * * * * * * *・角川文庫740(1) 夏目鏡子/松岡譲 筆録『漱石の思い出』431頁。 改版六版・改版十七版・改版二十一版を見た。奥付にはそれぞれの版の発行日「昭和…

角川文庫の『竹取物語』(04)

・角川文庫6817(3) カバー表紙折返しの下部は「月刊カドカワ」の広告、その下のカバー写真のキャプションは3月31日付(02)で言及した。背表紙は3月30日付(01)に紹介した中河與一訳注の角川文庫808の四十六版と同じレイアウトで、上部に標題、中央に「…

角川文庫の『竹取物語』(03)

・角川文庫6817(2) カバー表紙折返しにはまずゴシック体で標題を示し、17行もの紹介文がある。1段落め(11行)は『竹取物語』は「世界で最も古い「SF」ではないかといわれている」として「アポロ宇宙船」が「ついこの前のこと」なのに「1000年以上も前の…