瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

2015-10-01から1ヶ月間の記事一覧

山本禾太郎「東太郎の日記」(23)

昨日まで12回に分けて本文を紹介しました。 探偵小説ではありませんから、本作と若干の未収録作品のために新たに論創ミステリ叢書『山本禾太郎探偵小説選Ⅲ』が編まれるようなことは、恐らく望めないでしょう。10月13日付(06)に述べたように本文の売込み(…

山本禾太郎「東太郎の日記」(22)本文⑫完

日記の11日め。【 34 】頁上段18行めから下段7行めまで。 下段の余白、下部に四角いお盆の上に桃を3つ盛った六角形の陶器の鉢に陶器の水差しが載っているカットがあります。 今回新たに新字で代用した漢字は「娯」です。 ×月×日 おふくさんと伏見の停留所で…

山本禾太郎「東太郎の日記」(21)本文⑪

日記の10日め。【 29 】頁上段10行めから【 34 】頁上段17行めまで。 【 29 】頁下段は3行めまでで、残りは挿絵で、10月27日付(19)本文⑨、日記の8日めの前半、真っ暗な中で2人が並んで正座して、おふくさんが東太郎の右肩に左手を掛け、東太郎の左手がおふ…

山本禾太郎「東太郎の日記」(20)本文⑩

日記の9日め。【 28 】頁下段5行めから【 29 】頁上段9行めまで。 今回新たに新字で代用した漢字は「並・述・寛・雪」です*1。 ×月×日 今日は四五日前から決まつてゐた圓八君夫婦の退座の日だ。これは主/として圓八君の希望によるもので、圓八君はおふくさ…

山本禾太郎「東太郎の日記」(19)本文⑨

日記の8日め。【 27 】頁下段11行めから【 28 】頁下段4行めまで。 28頁上段12行めまでの字数が少ないのは、この頁の右上に階段を描いた挿絵があるからで、床に届こうという暖簾により階段の先は隠れています。暖簾は「江ん」つまり「××さん江」の下部が描か…

山本禾太郎「東太郎の日記」(18)本文⑧

日記の7日め。【 27 】頁上段11行めから下段10行めまで。 今回新たに新字で代用した漢字は「望」です。 ×月×日 今日二時間ばかり自分の部屋にゐたおふくさんは、いろ/\と身の上/話をした。*1 若州の小濱近在の生れださうな、父母もなければ兄弟もない。浪…

山本禾太郎「東太郎の日記」(17)本文⑦

日記の6日め。【 25 】頁下段18行めから【 27 】頁上段10行めまで。 【 26 】頁の上下段とも6行と行数が少ないのは、左側に、おふくさんが旅館の薄暗い廊下を自室へ戻って行く場面が描かれているからです*1。右上に [哲] 印(1.0×0.6cm)があります。これは2…

山本禾太郎「東太郎の日記」(16)本文⑥

日記の5日め。【 25 】頁上段4行めから【 25 】頁下段17行めまで。 今回新たに新字で代用した漢字は「脱・煙・喫・嘘」です*1。 ×月×日 今日から〃曾我兄弟〃の改作だ。大圓氏自筆のネタ本を見ると、頼朝/のことを〃ヨリ友〃なぞ隨所にヘンなことが書いてあ…

山本禾太郎「東太郎の日記」(15)本文⑤

日記の4日め。【 21 】頁上段10行めから【 25 】頁上段3行めまで。 【 22 】頁と【 23 】頁は見開きの挿絵で、10月21日付(14)本文④に示した日記の3日め、楽屋で京山大圓が圓八・おふく夫婦と対面する場面でしょう。【 22 】頁、姿見の前に立って弟子たちに…

山本禾太郎「東太郎の日記」(14)本文④

日記の3日め。【 19 】頁上段2行めから【 21 】頁上段9行めまで。 要領はこれまでに示した通りで、新字で代用した漢字は「習・記・墨・浮・掻・産・寝・騒・絶」です*1。 ×月×日 大圓氏はいつも旅館へ床屋へ招いて調髪する習慣だのに、けふは珍ら/しく床屋…

山本禾太郎「東太郎の日記」(13)本文③

日記の2日め、【 15 】頁上段14行めから【 19 】頁上段1行めまで。【 16 】頁と【 17 】頁の下段は挿絵で、並べた座布団の上に腹這いになって巻紙に何か書き始めようとしている男性。 入力の要領は前回示した通りです。新字で代用した漢字は、前回に示したも…

山本禾太郎「東太郎の日記」(12)本文②

それでは日記の1日めの本文を紹介します。【 13 】頁上段4行めから【 15 】頁上段13行めまで。 用字はなるべくそのままにしようと思ったのですが、表示不可能な文字及び外字の一部は検索の便宜を考えて新字にしました。順に「羽・黒・急・縁・者・節・説・要…

山本禾太郎「東太郎の日記」(11)本文①

10月16日付(09)の続き。 まず、10月15日付(08)に見た、昭和9年(1934)1月1日発行の「週刊朝日」新年特別号(第25巻第1号)について、若干の補足をして置きましょう。 【 223 】頁は太い破線で囲われた「編輯後記」は、5段組で収録作品や企画について編…

試行錯誤と訂正

これはもともと10月17日付「山本禾太郎「東太郎の日記」(10)」の前置きとして用意したものなのだけれども、長くなってしまったので本題の方を先にして、別に投稿することにしました。 * * * * * * * * * * 私は山本禾太郎という名前を意識したの…

山本禾太郎「東太郎の日記」(10)

前回の【追記】について片付けて置きましょう*1。 山本禾太郎について調べ始めてまだ1ヶ月半なのでまだ見ていない文献ばかりで、今は見る傍からメモを取っているのですけれども、昨日、仕事の帰りに返却期限で立ち寄った図書館で、Amazonレビューに山本氏に…

山本禾太郎「東太郎の日記」(09)

・「週刊朝日」の「新大衆文藝『事實小説』募集」(5) 前回、住所をそのまま載せましたが、82年前の懸賞小説で関係者も死に絶えているでしょうし、遺族がそのまま在住していても住所表示も変わっているであろうと思ってのことです。分かる人には分かる(か…

山本禾太郎「東太郎の日記」(08)

・「週刊朝日」の「新大衆文藝『事實小説』募集」(4) 次に当選発表の号を見てみましょう。 ・週刊朝日新年特別號(第二十五卷/第 一 號)昭和九年一月一日發行・朝日新聞社・224頁・B5判並製本 この号も製本されているものを見たので、号数や発行日は目…

山本禾太郎「東太郎の日記」(07)

・「週刊朝日」の「新大衆文藝『事實小説』募集」(3) 10月12日付(05)の続き。 日を改めて仕事帰りに再びその施設を訪れ、やはり書庫請求の機会は1度しか許されないくらいの時間しかありませんでしたが、もう何を見るべきかは分かっています。昭和8年(1…

山本禾太郎「東太郎の日記」(06)

さてここで、10月7日付(02)の前置きで予告した、論創ミステリ叢書『山本禾太郎探偵小説傑作選』編集時に「東太郎の日記」を見付けられなかった理由の見当を、述べておきましょう。 ・九鬼紫郎『探偵小説百科』 探偵小説百科 (1975年)作者: 九鬼紫郎出版社/…

山本禾太郎「東太郎の日記」(05)

・「週刊朝日」の「新大衆文藝『事實小説』募集」(2) 昨日の続き。 しかしながら、昭和八年一月の「週刊朝日」新年特別號の「當選發表」を見ても「東太郎日記」らしき作品は見当たらないのです。誌上に掲載された当選作を見てもやはり浪曲界の内幕物では…

山本禾太郎「東太郎の日記」(04)

・「週刊朝日」の「新大衆文藝『事實小説』募集」(1) この企画は、10月7日付(02)に引いた山下氏の指摘する当時の風潮の中から発想されたものでしょう。 それでは、募集の出た号について眺めて置きましょう。 ・週刊朝日創刊十周年特別記念號(第二十二…

山本禾太郎「東太郎の日記」(03)

10月7日付(02)の続き。 ネットではヒットしないし検索も出来ない、館内限定の端末検索で「週刊朝日」の記事を検索したところ、見当通り「新大衆文藝事実小説」の懸賞が昭和7年(1932)にあったことが分かりました。そこで、その募集記事の掲載されている号…

夏目漱石『こゝろ』の文庫本(17)

・新潮文庫315『こころ』(2) 5月27日付(13)の続き。順番に辿るつもりだったのだが、先に最近見て今手許にある④百八十四刷と百八十七刷についてメモして置く。 カバーは白地の布目。現在、Amazon詳細ページではこのカバーの書影が表示され、「商品の説明…

怪談同好会編『古今怪異百物語』(3)

東雅夫 編『昭和の怪談実話ヴィンテージ・コレクション』の「編者解説」及び『百物語の怪談史』の書き方を見るに、本書には装幀挿画の担当者の名前が入っていないらしい。 そこで、ここに装幀挿画の担当者を明示する資料を紹介したい。確か、6月上旬に「讀賣…

山本禾太郎「東太郎の日記」(2)

本稿も先月末から準備していました。この小説を探索するに当たっての見当の付け方について述べています。但し(1)と違って完成稿になっていなかったので今回投稿に際して大幅に手を入れました。 その後、従来、本作を上手く探し出せなかった理由も分かって…

山本禾太郎「東太郎の日記」(1)

本稿は当初「山本禾太郎「東太郎日記」(1)」という題で9月27日から29日に準備しました。山下武『探偵小説の饗宴』の記述を手掛かりに、どこに行けば探索・閲覧・複写が出来るか、大体の見当が付きましたので、その後、今週、仕事の帰りにその施設に2度、…

山本禾太郎『消ゆる女』(1)

この本も、たぶん手にする機会はなかろうと思っています、やはり山下武『探偵小説の饗宴』所収「『小笛事件』の謎」にしばしば言及されることで知りました*1。 まず9月26日付「山本禾太郎『抱茗荷の説』(1)」に引いた「Ⅰ」章(179頁3行め〜189頁10行め)…

山本禾太郎『抱茗荷の説』(09)

昨日の続きで、細川涼一「小笛事件と山本禾太郎」に示される「抱茗荷の説」梗概が「‥‥田所君子という娘が、八歳まで育ててくれた祖母の死後、流れ流れてふたご池のほとりにある豪家(実は母の実家)に女中として雇われるという因縁譚」としていることについ…

山本禾太郎『抱茗荷の説』(08)

9月27日付(02)に、単行本『抱茗荷の説』を「実見しての記事」は「ネット上に‥‥見当たらないのです」と書いたのですが、 ゆーた @latteteddy 2014年5月22日 『論創ミステリ叢書15 山本禾太郎探偵小説選Ⅱ』の解題で「黒子」を〝単行本に収録されるのは今回が…

山本禾太郎『抱茗荷の説』(07)

それでは9月30日付(05)の続きで、細川涼一「小笛事件と山本禾太郎」に示されている「抱茗荷の説」梗概の疑問点について、確認して置きましょう。例によって「抱茗荷の説」の引用は、論争ミステリ叢書15『山本禾太郎探偵小説選Ⅱ』に拠ります。 主人公の両親…