瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

2016-10-01から1ヶ月間の記事一覧

阿知波五郎「墓」(7)

前回から随分経ってしまったが、それまで借りていた本を返却して別の図書館で借り直し、その間にやはり懸案であった別の調べを足したりしているうちに手が離せなく(?)なって、借り直した本の返却期限が来てしまった。 * * * * * * * * * * 10月…

山田風太郎『戦中派虫けら日記』(11)

9月20日に関係箇所の入力が終わる前に返却してしまったため、そのままになっていたのを、遅ればせながら補って投稿して置く。 * * * * * * * * * *・別冊太陽 日本のこころ 198「山田風太郎」(4) うっかりしてこの雑誌について、9月10日付(10…

森まゆみ『風々院風々風々居士』(5)

それでは昨日予告した、単行本のメモに、文庫版での修正を添えたものを投稿して置く。 * * * * * * * * * *・101頁3〜6行め、 ――ガックリきますよね。そして東京府には夏目漱石のお父さんもいて、ここでは二歳の樋/ 口一葉と六歳の夏目金之助が出…

森まゆみ『風々院風々風々居士』(4)

・ちくま文庫版(2) 10月20日付(3)にも述べたように、9月に単行本を通読した際のメモを、文庫版での修正を確認した上で書き直そうと考えていたのだが、出来上がっているメモを書き換えるのが面倒なことと、寒暖の差が大きく乾燥も進んで仕事でも少々草…

『吉野賛十探偵小説選』(1)

・論創ミステリ叢書65『吉野賛十探偵小説選』2013年7月15日初版第1刷印刷・2013年7月30日初版第1刷発行・定価3600円・論創社・368頁・A5判上製本)吉野賛十探偵小説選 (論創ミステリ叢書)作者: 吉野賛十,横井司出版社/メーカー: 論創社発売日: 2013/07メ…

人力車の後押しをする幽霊(4)

さて、海賀氏が「事実はともかく」としているのは、10月24日付(2)に挙げた初代三遊亭圓左の速記に、マクラ(悋気の火の玉)から本題の幽霊車に切り替えるに際して、例えば『圓左落語會』では139頁6行め「……是れは全たく有りましたお話しでございます……*1…

人力車の後押しをする幽霊(3)

「幽霊車」については、海賀變哲『落語の落』(大正三年十一月十三日印刷・大正三年十一月十七日*1發行・定価金六拾五錢・三芳屋書店・序4頁+いろは分索引22頁+529頁)にも取り上げられている。 本書の成立については「甲寅十一月」付の「序」に、序2頁4行…

人力車の後押しをする幽霊(2)

昨日の続き。 落語や講談の速記を載せた雑誌「百花園」は明治22(1889)年5月から明治33(1900)年11月まで全240冊が刊行された。デジタル復刻版 百花園: 明治期落語・講談速記雑誌 全240号収録 ()" title="デジタル復刻版 百花園: 明治期落語・講談速記雑誌…

人力車の後押しをする幽霊(1)

「幽霊俥」と云う落語がある。私がこの噺に注意することになった理由は後述するが、とにかく落語の演目を調べるにはまづは『落語事典』を参照するべきだと思ったものの、どこの図書館にもある訳ではなく、何館か廻って漸く、かつて卒業論文執筆時に参照した…

七人坊主(53)

・松谷みよ子『現代民話考|Ⅴ| あの夜へ世へ行った話・死の話・生まれかわり』1986年2月15日第1刷発行・定価1800円・立風書房・451頁) 157〜422頁「第二章 死の話」の、293頁11行め〜296頁1行め「五、うらみ」の1項め、293頁12行め「本妻の思い」に載る3話は…

七人坊主(52)現代民話考

私は体験談が苦手なので『現代民話考』の中でも、学校や乗物の怪異に関する巻はよく手にしているが、個人的な体験の多い次の巻などは敬遠していた。 ・ちくま文庫『現代民話考[5] 死の知らせ・あの世へ行った話』二〇〇三年八月六日第一刷発行・定価1400円…

森まゆみ『風々院風々風々居士』(3)

・ちくま文庫版(1) 9月20日付(2)の続き。 9月6日付「山田風太郎『戦中派虫けら日記』(6)」に追加して置いたように、文庫版を見た。単行本の誤りは大体訂正されているようである。 以下のメモは単行本を読んで作成したもので、文庫版を見るに訂正さ…

Hans Carossa“Rumänisches Tagebuch”(2)

・岩波文庫『ルーマニア日記』高橋健二訳(2) 昨日の続きで、第九刷・第一〇刷・第12刷の本体を比較して見る。 1頁(頁付なし)扉、匡郭の大きさが第九刷・第一〇刷(10.4×6.5cm)と第12刷(10.6×6.6cm)で異なり、中の文字も組み直されているが、異同は2…

Hans Carossa“Rumänisches Tagebuch”(1)

・岩波文庫4869-4870『ルーマニア日記』高橋健二訳 ・昭和二八年三月 五 日 第一刷発行(164頁) ・昭和四七年三月一〇日 第九刷発行 定価★★ ・昭和四九年一月三〇日 第一〇刷発行 定価★★ ・岩波文庫32-436-2『ルーマニア日記』高橋健二訳 ・1953年3月5日 …

亡魂船(1)

・松谷みよ子『偽汽車・船・自動車の笑いと怪談(現代民話考III)』 1985年11月25日第1刷発行・定価1,800円・立風書房・384頁・四六判上製本現代民話考 3 偽汽車・船・自動車の笑いと怪談作者:松谷 みよ子立風書房Amazon Amazon詳細ページの書影には図書館のリ…

浅沼良次『流人の島』(5)

昨日の続きで[八丈島名所案内]の「大賀郷地区」の改訂七版以後、改訂十七版までに増補された部分について見て置こう。 ・「12 八丈島空港(一七〇頁参照)」改訂十七版206頁3行め 本文(3行)を引用してみよう。206頁7〜9行め、 旧海軍用飛行場を戦後民間…

浅沼良次『流人の島』(4)

それでは[八丈島名所案内]の詳細を、改訂七版と改訂十七版の異同を中心に見て置きたい。 見出しはゴシック体5字下げ3行取りで、4字下げや2行取りのところもある。地区ごとに算用数字で番号が打たれている。以下、見出しの位置を示し、本文の行数を添え、改…

浅沼良次『流人の島』(3)

改訂七版は215頁、改訂十七版は219頁である。 どの版で改訂が行われたのか、他の版と比較していないので未だ何とも云えないが、差当り改訂七版と改訂十七版を比較してみる。 1頁(頁付なし)扉から198頁までは、ざっと見た限りでは同じである。8〜13頁「目 …

浅沼良次『流人の島』(2)

昨日の続きで、改訂七版と改訂十七版の奥付を比べてみよう。 改訂七版は本文215頁まで、その次に1頁白紙を挟んで奥付、改訂十七版は本文219頁まででその裏が奥付。 中央やや上に明朝体横組みで「流 人 の 島/―八丈風土記―」とあり、その下にやや青味を帯び…

浅沼良次『流人の島』(1)

2011年11月23日付「七人坊主(22)」で触れた浅沼良次『流人の島―八丈風土記―』については、「初版と改訂版を比較して述べてみたい」と述べ、その後、2011年11月26日付「七人坊主(23)」2011年11月27日付「七人坊主(24)」2011年11月28日付「七人坊主(25…

阿知波五郎「墓」(6)

主人公「しま」は「死にたい」と「決心」して、自ら書庫に閉じ込められます。 七月十九日の朝、出勤してきた渋谷が、417頁5行め「夏の閉館前で忙しい」と言うのを6行め、しばらく「手伝い」、そして418頁1行め、渋谷に「しまさん、もういいよ。‥‥」と言われ…

阿知波五郎「墓」(5)

「墓」が応募した懸賞の募集期間や発表について、広島桜2(通行探偵)氏が今朝方昨日の記事に投じたコメントにて、教えてもらいました。広島氏は2時間ほど掛けて、少しずつ、ご自身が調べ得た結果をその都度、4度に分けて投稿しています。私は10月4日付(1…

阿知波五郎「墓」(4)

それでは、阿知波五郎「墓」の内容について、鮎川哲也『こんな探偵小説を読みたい』所収本文(414〜440頁)をもとに確認して置きましょう。 415頁5行め。主人公の「しまは青葉保育園の保母である」。 414頁7行め、舞台は「M大学附属、文化研究所の書庫」で…

『大鏡』の文庫本(4)

・岩波文庫30-104-1(4) 4月27日付(3)の続き。 黄帯(幅6.0cm)の付いた第25刷を見たので、第22刷と比較してみた。 本体表紙の、帯に隠れていない部分は第22刷に一致。 帯の折返しには何も刷られていない。表紙側の上部にはゴシック体横組みで、 文徳天…

『男はつらいよ フーテンの寅』(1)

2011年3月8日から9日に掛けて準備したもので、2011年3月9日付「予告編について」に続いて、余り日を置かずに投稿するつもりであったが、11日の地震のためにそのままになってしまった。 その後、「男はつらいよ」シリーズは第20作までは大体(多分1作か2作抜…

阿知波五郎「墓」(3)

昨日の続きで、鮎川哲也『こんな探偵小説が読みたい』に見える、阿知波五郎「墓」をアンソロジーに収録するのを断念した一件について、見て置きましょう。404頁5〜8行め、 この「墓」(楢木重太郎名義)という短編を(氏の創作はすべてが短編なのだが)、わた…

阿知波五郎「墓」(2)

昨日の続き。 さて、鮎川哲也『こんな探偵小説が読みたい』の、カバー表紙折返しの上部にある、明朝体横組みの紹介文には、次のようにあります。 夏季休暇を翌日に控えた大学図書館で、ひ/とりの女性が書庫に閉じ込められた! 鉄と/コンクリートで固められ…

阿知波五郎「墓」(1)

これも主題は9月23日付「「ヒカルさん」の絵(02)」から一貫して同じです。いえ、以前からこの小説には注意していて、10月1日付「閉じ込められた女子学生(1)」に引いた日本文学芸術学部写真学科の話に気付いたことで記事に出来そうだと思い、そして、掲…

閉じ込められた女子学生(3)

なお、2ch「死ぬほど洒落にならない怖い話を集めてみない?289」の、2012年1月20日書込みの「250〜252、254〜256、258〜260」は、「東京のある美術大学」を舞台として、現役学生の幽霊(?)体験談から始めて、怪異の由来となった事故に話が及んでいます。こ…

閉じ込められた女子学生(2)

・松谷みよ子『現代民話考12』(2) さて、単行本『現代民話考12』は平成8年(1996)5月刊で、近藤雅樹『霊感少女論』刊行は平成9年(1997)7月刊、1年以上前に刊行されています。しかしながら、近藤氏にこの話を報告した崎口君(仮名)は9月27日付「「ヒカ…