瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

2018-01-01から1ヶ月間の記事一覧

上方落語「三年酒」の原話(13)

・張華『博物志』の「千日酒」(1) 昨日の続きで、千日酒の話を、張華『博物志』卷十「雜說下」より抜いて置こう。 西晉(265〜316)の張華(232〜300)の『博物志』と、東晉(317〜420)の初期の人・干寶の『搜神記』とでは、『博物志』の方が先行してい…

上方落語「三年酒」の原話(12)

昨日の続きで、書き下し文にして示す。字間右寄りに「ー」が打たれた熟語についてはこれを太字にして示した。なお読みを確定させていない箇所があるが、追々勘えて行くこととする。また「曰く、‥‥、と。」の発言を示す箇所を鍵括弧で示すこととした。 狄希は…

上方落語「三年酒」の原話(11)

昨日は『搜神記』の訳注書について述べようと思っていたのだが、2度にわたって記事が消失してしまった。やり直す余裕がなかったので、別の記事を挙げた。今日も平日でとてもでないが同じ作業を繰り返す余裕はない。そこで先に、1月27日付(10)に訓点を省い…

Alexandre Dumas fils “La Dame aux Camélias” (3)

・新潮文庫129『椿姫』(3) 2017年7月17日付(2)の続き。 ②の本体、六十二刷・七十九刷・八十三刷・八十四刷、335頁まで一致、目録はなく裏が奥付。奥付の異同はまづ縦組み部分、それぞれ発行日の他、「発行者」が六十二刷「佐藤亮一」七十九刷・八十三…

上方落語「三年酒」の原話(10)

いよいよ本題に入る。「三年酒」の原話は東晉の干寶『捜神記』もしくは西晉の張華『博物志』、唐の李瀚『蒙求』の「玄石沈湎」の注釈書に見えている。まづ『捜神記』から見て置こう。 ・『和刻本漢籍隨筆集』第十三集(昭和四十九年八月發行・發行 古典研究…

上方落語「三年酒」の原話(09)

昨日の続きで、都家歌六『落語レコード八十年史』について。同書の内容は1月15日付「都家歌六『落語レコード八十年史』(1)」に示してある。 さて、1月17日付(05)の初めに引いた「演題別索引」に見える頁のうち、(上)144頁と345頁に触れていなかった。…

上方落語「三年酒」の原話(08)

1月20日付(07)までしばらく、都家歌六『落語レコード八十年史』(上)152〜154頁「二代目三木助の「三年酒」余話」について確認した。都家師は結論して、154頁11〜13行め、 要するに、これは我々の手でこの事実を発見、偶然の符合から幸いにも完全な形で復…

吹奏樂部の思ひ出(4)

女子高の吹奏楽部は中学も含めて110人くらいいた。その後、事情があって減ってしまうのだが、その事情は学校の雰囲気の変化とも連動しているので、やや書きにくい。 そう云えば、今朝出勤で家を出る直前、NHKのニュース番組の見出しに「高校非正規教員200人…

吹奏樂部の思ひ出(3)

さて、女子高に勤め始めた当初、これまでの学校での経験から、学校行事には何の興味もなかった。 1箇月程して球技大会があった。雨天中止の場合は平常授業の予定なので、1時間めに間に合うように出て来たのだが、曇っているがまだ降っていない。雨の予報だが…

吹奏樂部の思ひ出(2)

常勤講師は身分が保障されていない専任教諭みたいな存在で、担任を持たされたり部活の副顧問をしたり、専任教諭と同等の勤務になる(そして待遇が悪い)*1が、非常勤講師は担当授業だけの勤務で、もちろん授業準備や採点など授業以外にも仕事をしないと追い…

吹奏樂部の思ひ出(1)

今日は、体調不良ながら女子高時代の教え子が参加している素人吹奏楽団の定期演奏会に出掛けた。 私はSNSをこのブログ以外やっていない。第一携帯電話を持っていない。況やスマートホンをや。メールのやり取りとか、ラインだのチャットだの、常に縛られてい…

上方落語「三年酒」の原話(07)

都家歌六『落語レコード八十年史(上)』152〜154頁「二代目三木助の「三年酒」余話」について、1月18日付(06)の続き。 数年前に田端に三代目桂三木助の仲子未亡人を訪ねた折に、「あの録音盤はもうありませんかねえ」と尋ねたところ、しばらくして三代目…

Antoine François Prévost “L'Histoire du chevalier Des Grieux et de Manon Lescaut” (6)

・岩波文庫32-519-1『マノン・レスコー』 アベ・プレヴォ作/河盛好蔵訳 ①1929年1月5日第1刷発行 ②1957年6月25日第27刷改版発行©(236頁) ・1987年10月12日第58刷発行 定価250円マノン・レスコー (岩波文庫)作者: アベプレヴォ,Abb´e Pr´evost,河盛好蔵…

上方落語「三年酒」の原話(6)

昨日の続きで、(上)152〜154頁「二代目三木助の「三年酒」余話」について。 書き出し、152頁2〜4行め、 私はかつて、旧師であった三代目桂三木助が生前に、 「これは俺の師匠の『三年酒』だ」 といって大事にしていた録音盤があったことを記憶していた。 …

上方落語「三年酒」の原話(5)

さて、1月15日付「都家歌六『落語レコード八十年史』(1)」に紹介した都家歌六の大著の(下)巻末索引にて検索するに、「演題別索引」のXVII頁右12行め〜XXII頁左31行め「さ行」の、XVIII頁右16行めに「三年酒 144,152,345,407 」とある。 凡例に当たる…

Guy de Maupassant の文庫本(7)

・青柳瑞穂 訳『モーパッサン短編集』(5) ・新潮文庫1947 (二) 細々とした部分的な比較ではなく、大きな系統を示して細かい異同に及びたいのだが、なかなか思うに任せないので、返却期限の迫ったものから比較して見る。 ②三十三刷・三十四刷・三十五刷…

都家歌六『落語レコード八十年史』(1)

・昭和六二年一一月二五日初版印刷・昭和六二年一一月三〇日初版発行・全二巻揃定価 18,000円・国書刊行会・A5判上製本落語レコード八十年史作者: 都家歌六出版社/メーカー: 国書刊行会発売日: 1987/11メディア: 単行本この商品を含むブログを見る落語レコー…

上方落語「三年酒」の原話(4)

さて、なかなか本題に入れないが、1月2日付(2)に取り上げた『米朝落語全集 増補改訂版』第四巻41〜42頁「解説 三年酒」にも、宇井無愁の上方落語関係の著作や東大落語会 編『増補落語事典』改訂新版に同じく、この話の典拠について触れるところはない。 …

上方落語「三年酒」の原話(3)

1月2日付(2)の続きで、『米朝落語全集』の「解説 三年酒」を確認する前に、まづ昨日見た『米朝ばなし 上方落語地図』「安治川」項の本文、最後(単行本134頁上段8〜16行め=文庫版文庫版183頁10〜15行め)に添えられた桂米朝のコメントを確認して置こう。…

桂米朝『米朝ばなし 上方落語地図』(4)

1月5日付(3)の続き。 単行本と文庫版の異同を頭から詳細に比較する余裕は今、ないので、1月2日付「上方落語「三年酒」の原話(2)」の考察を進める用意として、「三年酒」を取り上げた34項め「安治川」について、単行本(132〜134頁)と文庫版(180頁4行…

山岸凉子『青青の時代』(1)

・潮漫画文庫(潮出版社)青青の時代 文庫版 コミック 1-3巻セット (潮漫画文庫)作者: 山岸凉子出版社/メーカー: 潮出版社発売日: 2005/01/01メディア: 文庫この商品を含むブログを見る・第1巻 二〇〇四年十一月二五日 第一刷発行(237頁)定価571円*1 青青…

水上勉『湖の琴』(2)

昨日の続き。 ・田坂具隆監督『湖の琴』(2) 二代目中村鴈治郎は、坊主でありながら『破戒』で藤村志保(1939.1.3生)を襲ったり『炎上』で芸者遊びをしたり(ともに市川崑監督)していたのと比べてしまったので、関係を結ぶまで随分我慢している(!)印…

水上勉『湖の琴』(1)

映画を見た。――原作からして非常に人気があったらしく、多くの版がある。湖の琴 (1966年)作者: 水上勉出版社/メーカー: 講談社発売日: 1966メディア: ?この商品を含むブログ (1件) を見る湖の琴 (1968年) (角川文庫)作者: 水上勉出版社/メーカー: 角川書店発…

新海誠『君の名は。』(3)

被害の見積もりは、もっと詳しい人がきちんと出してくれるだろうから、不得手な私がこれ以上踏み込むべきではないだろう。あの程度の被害で済むにはどの程度の隕石なのか、或いは、あの程度のクレーター(隕石孔)が出来るような隕石が堕ちて来た場合、どの…

新海誠『君の名は。』(2)

昨日の続き。 私がおかしいと思うようなことくらいは、恐らく他にもおかしいと思った人もいるだろうから、今更書くに及ばないだろうとは思うのだけれども。 * * * * * * * * * * ヒロインの通っていた高校の脇までが何も残らない程破壊され、高校…

新海誠『君の名は。』(1)

私はファンタジーのような、現実離れした設定に合わせることを要求する小説や映画が苦手で、ジブリ映画や指輪物語、スター・ウォーズ、ハリー・ポッターは敬遠して過ごして来た。2015年4月11日付「山岸凉子『妖精王』(2)」に述べたようにゲームブックや漫…

桂米朝『米朝ばなし 上方落語地図』(3)

昨日の続きで本書の成立事情について、永井龍彦記者の「あとがき」の、最後の方を抜いて置こう。 2頁め後半(単行本354頁7〜12行め・文庫版480頁8〜14行め*1) 連載中は米朝師の話をもとに私が文章化させてもらったが、本書の刊行に際して米朝師自身|が全面…

桂米朝『米朝ばなし 上方落語地図』(2)

昨日の続き。 本書の由来は、桂米朝「はじめに」の冒頭、単行本1頁(文庫版3頁)2〜4行めに、次のようにある。「/」は単行本、「|」は文庫版の改行位置。 二年四ヵ月にわたって、長々と毎日新聞(大阪版)に載せていただきました。まずもって、|毎日新/…

桂米朝『米朝ばなし 上方落語地図』(1)

『米朝ばなし 上方落語地図』 ・単行本(毎日新聞社・A5判上製本)米朝ばなし―上方落語地図 (1981年)作者: 桂米朝出版社/メーカー: 毎日新聞社発売日: 1981/08メディア: ?この商品を含むブログ (1件) を見る・昭和五十六年八月 五 日 印刷・昭和五十六年八月…

上方落語「三年酒」の原話(2)

昨日の続きで、東大落語会 編『増補落語事典』改訂新版の「神道又」の項の残り、538頁上段10〜13行め、 〔解説〕上方ばなしで、マクラに「由辰」をふること/がある。オネオネの佐助がオネオネと話し、ゴウマンの/幸助のごうまんないい方、ゴツキの源太がけ…