瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

傳説

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(119)

・堤邦彦「「幽霊」の古層」(4) 江戸時代の仏教説話が専門で怪談に関する研究も多い堤邦彦(1953生)は、「蓮華温泉の怪話」が昭和9年(1934)の『怪奇伝説 信州百物語』に掲載されていることについて、2018年8月29日付(46)に引いたように「昭和初期の…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(118)

・杉村顯『信州百物語』の評価(2) 繰り返しになるが、――結論を言うと、本書は編集に時間を掛けていない、やや安易に編纂された伝説集であった。 それが最近、やや名が知られるようになったのには、次の4つの要因が考えられる。 ① 岡本綺堂「木曾の旅人」…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(117)

・杉村顯『信州百物語』の評価(1) 確認した典拠から容易に推測されるように、本書も8月24日付「杉村顯『信州の口碑と傳説』(3)」に述べたような編纂物である。前回述べたように、転居先の樺太廳豐原支廳豐原郡豐原町で、十分に資料を揃えられない状態…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(116)

・『信州百物語』の成立(4) 9月8日付(111)の続き。 9月6日付(109)に指摘したように、『信州の口碑と傳説』巻末「近刊豫告」の「内容紹介」と、本書の内容は相当な齟齬を見せる。 以下、推測になるが――『信州の口碑と傳説』刊行時には「内容紹介」にあ…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(110)

・『信州百物語』の成立(2) 昨日の続きで、杉村氏の次女・杉村翠の談話から、叢書東北の声11『杉村顕道怪談全集 彩雨亭鬼談』の「編集過程」での「エピソード」を見て置こう。441頁下段17行め~442頁上段10行め、 ‥‥。私/たち家族も、この本が今どのよう…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(109)

・『信州百物語』の成立(1) 9月2日付(107)の続き。当初「・『信州百物語』の典拠(3)」と題するつもりだったが、既に知られている本書の執筆出版過程に、今回私が明らかにした典拠の問題を絡めて説明した方が良さそうなので、標記の見出しに改めて説…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(107)

・『信州百物語』の典拠(2)日本傳説叢書『信濃の卷』と『松代町史』下卷 昨日の続き。『信州百物語』の各話の題と頁・行は、叢書東北の声11『杉村顕道怪談全集 彩雨亭鬼談』に拠っている。国立国会図書館デジタルコレクションの初版もしくは新版に拠るべ…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(106)

・『信州百物語』の典拠(1)日本傳説叢書『信濃の卷』 昨日まで眺めて来たように、杉村顕『信州百物語』及びその姉妹篇『信州の口碑と傳説』には、青木純二『山の傳説 日本アルプス篇』から、特に日本アルプスに関連する地域について、相当数の話を採って…

杉村顯『信州の口碑と傳説』(10)

・「南信地方」(5)下伊那郡 昨日の続きで、青木純二『山の傳説 日本アルプス篇』と共通する話を挙げ、典拠と認められそうなものを「←」、部分的に一致するものを「≒」で示した。 356頁8行め~376頁3行め「下伊那郡」6題、但し6番め、371頁4行め~376頁3行…

杉村顯『信州の口碑と傳説』(09)

・「南信地方」(4)上伊那郡 昨日の続きで、青木純二『山の傳説 日本アルプス篇』と共通する話を挙げ、典拠と認められそうなものを「←」、部分的に一致するものを「≒」で示した。 317~356頁7行め「上伊那郡」9題、但し9番め、345頁2行め~356頁7行め「駒…

杉村顯『信州の口碑と傳説』(08)

・「南信地方」(3)北安曇郡 昨日の続きで、青木純二『山の傳説 日本アルプス篇』と共通する話を挙げ、典拠と認められそうなものを「←」、主題は同じだが依拠していないものを「≠」で示した。 274頁9行め~316頁「北安曇郡」9題、但し9番め、294頁8行め~3…

杉村顯『信州の口碑と傳説』(07)

・「南信地方」(2)南安曇郡 昨日の続き。 214頁4行め~274頁8行め「南安曇郡」12題、但し10番め、254~269頁5行め「有明山」は6項に分かれており、合計で17話である。 青木純二『山の傳説 日本アルプス篇』とは15話が共通する。但し【1】と【9】は、同じ…

杉村顯『信州の口碑と傳説』(6)

・「南信地方」(1)東筑摩郡・西筑摩郡・諏訪郡 昨日取り上げた「北信地方」は、地理的に見ても青木純二『山の傳説 日本アルプス篇』とは無関係であるはずなのだが、何故か『山の傳説』に含まれていた北信地方の2話(更級郡・小県郡)が、採録されているの…

杉村顯『信州の口碑と傳説』(5)

・「北信地方」の構成と『山の傳説』に類似する2例 8月23日付(2)の続きで、本書の構成を見て置こう。「北信地方」は「長 野 市」14題に続いて、42~79頁1行め「上水内郡」14題、79頁2行め~85頁1行め「下水内郡」2題、85頁2行め~88頁「上高井郡」2題、89…

杉村顯『信州の口碑と傳説』(4)

今日は、当初「・伝説集に対する麗しき誤解」との見出しで昨日の続きを述べて行くつもりだったのだが、人によっては当り前のことだし、急にこんな展開になって十分に用意が出来ている訳でもない。かつ、続きを書かないと全国各地から歎声が漏れる程に、読者…

杉村顯『信州の口碑と傳説』(3)

以下に述べることは考えて見れば当り前のことである上に、私自身、大体こんなものだろう、と云う見当は、持っていたのだけれども、最近の学界の議論は承知していないし、自分でも十分に整理し切れていない。かつ、本書に限った問題でもないので、ここで不慣…

杉村顯『信州の口碑と傳説』(2)

・編纂の動機 昨日の続きで、乙部泉三郎「序」及び杉村顯「自序」から、本書編纂について述べた箇所を見て置こう。 まづ、乙部氏の「昭和八年正月」付の「序」は、まづ「最近頓に勃興した郷土研究」の意義について述べ、しかし、県立図書館長として館の利用…

杉村顯『信州の口碑と傳説』(1)

①初版(昭和八年三月一日 印 刷・昭和八年三月五日 發 行・定價金貳圓四拾錢・信濃郷土誌刊行會・8+19+393頁・B6判) ②覆刻版(昭和六十年十一月十一日初版発行・定価 四、八〇〇円・郷土出版社・A5判上製本) 私は以前この覆刻版を、多分横浜市立中央図書…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(105)

・青木純二『山の傳説』(7) さて、8月15日付(102)まで4回に分けて引用した青木純二「晩秋の山の宿(白馬岳)」本文の、白銀冴太郎「深夜の客」との異同について、8月16日付(103)に何例か挙げて杉村顕道「蓮華温泉の怪話」は「晩秋の山の宿」に依拠し…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(85)

・末広昌雄「雪の夜の伝説」(20) ここまで、8月15日付(34)に引いた灰月弥彦の2018年1月24日21:19の tweetを切っ掛けに、朝里樹『日本現代怪異事典』から小松和彦監修『日本怪異妖怪大事典』と辿って末広氏の「山の伝説」について検討し、さらにその隠さ…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(84)

・末広昌雄「雪の夜の伝説」(19) 今回は昨日の続きで、ここまでの検討につき一応の結論を述べるつもりでしたが、その前に細かいことを2つ、取り上げて置きましょう。 * * * * * * * * * * 「嫁子ネズミの話」の「一」節めの類話が、同じ佐々木喜…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(82)

・末広昌雄「雪の夜の伝説」(17) 昨日の続きで、末広氏が依拠したと思しき佐々木喜善『東奥異聞』の「嫁子ネズミの話」の「一」節め、5段落めを抜いて置きましょう。 そこでスギのレッチウの者ども、女人のお告げの洞にいってみると、いかにもいわれたとお…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(81)

・末広昌雄「雪の夜の伝説」(16) 昨日の続きで、末広氏が依拠したと思しき佐々木喜善『東奥異聞』の「嫁子ネズミの話」の「一」節め、4段落めの残りを抜いて置きましょう。 ‥‥。女人はひどく喜んでスカリに向かっていうには、おおよく聴けよ。われこそはた…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(80)

・末広昌雄「雪の夜の伝説」(15) 昨日の続きで、末広氏が依拠したと思しき佐々木喜善『東奥異聞』の「嫁子ネズミの話」の「一」節め、4段落めの初めを抜いて置きましょう。 そのあとその女はスギのレッチウの小屋にいって、前同様のことをいって一夜の世話…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(79)

・末広昌雄「雪の夜の伝説」(14) 昨日の続きで、末広氏が依拠したと思しき佐々木喜善『東奥異聞』の「嫁子ネズミの話」の「一」節め、3段落めの後半を抜いて置きましょう。 ‥‥。その小屋では狩人が、たださえ女という語を嫌うのに、ましてなによりいちばん…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(78)

・末広昌雄「雪の夜の伝説」(13) 昨日の続きで、末広氏が依拠したと思しき佐々木喜善『東奥異聞』の「嫁子ネズミの話」の「一」節め、2段落めと3段落めの前半を抜いて見ましょう。傍点「ヽ」が打ってある箇所は再現出来ないので仮に太字にしました。 私に…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(77)

・末広昌雄「雪の夜の伝説」(12) 昨日の続きで、末広氏が依拠したと思しき佐々木喜善『東奥異聞』の「嫁子ネズミの話」の「一」節め、1段落めの残りを抜いて見ましょう。 ‥‥。この村の山中にこだまネズミというて、普通のネズミよりはやや小がらな、焦茶色…

お茶あがれ地蔵(3)

・広坂朋信『東京怪談ディテクション――都市伝説の現場検証』(2) それでは4月11日付(2)の続きで、「お茶あがれ地蔵とホステスの幽霊」から、お茶あがれ地蔵に関する記述を抜いて置こう。110頁2〜14行め、 もう一つ江戸時代の話をしておく。東武東上線北…

お茶あがれ地蔵(2)

この話を現代の怪異談と関連付けて見せた本としては、小池氏以前に次の本がある。 ・広坂朋信『東京怪談ディテクション――都市伝説の現場検証』1998年8月20日初版第1刷発行 書影は2016年8月30日付「広坂朋信『東京怪談ディテクション』(1)」に貼付した。…

お茶あがれ地蔵(1)

この地蔵について記事にすることは、2月2日付「小池壮彦『怪談 FINAL EDITION』(11)」に予告してあった。 まづ、小池壮彦の記述を紹介することとする。小池氏が発掘した話と云う訳ではもちろんないので、早い時期の文献から拾って行くべきかと思ったのだが…