瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

小説の背景

祖母の蔵書(107)大佛次郎③

朝日新聞社から出ていた、同じ体裁(四六判上製本、ビニールカバー。函入、函にパラフィン紙と帯)の大佛次郎の「全集」と「選集」を纏めて置こう。 これも寝間の本棚と仏間の硝子棚とに分散して収まっていた。 ・『大佛次郎自選集 現代小説』 『第三巻 真夏…

祖母の蔵書(100)内田百閒

寝間の本棚に次の2冊が、硝子扉の中に収まっていた。 ・『東京燒盡』昭和三十年四月十五日印刷・昭和三十年四月二十日發行・定價二八〇圓・大日本雄辯會講談社・261頁・四六判上製本 扉裏に墨書「 百鬼園/松木宣彦様」。 ・平山三郎 編『続百鬼園座談』一九…

赤堀又次郎伝記考証(40)

『書物通の書物随筆』第一巻『赤堀又次郎『読史随筆』』の「解題」の「赤堀又次郎について」については、ほぼ点検し尽くしたと思うのだが『読史随筆』そのものの解題と、第二巻『赤堀又次郎『紙魚の跡』』については、出身大学の図書館が遠からず卒業生の利…

竹中労の前半生(02)

さて、ある人物の経歴、特に生年(月日)に関わる前半生を考証するためには、その家族の検討も不可欠となります。 竹中氏の場合、その父親が竹中英太郎(1906.12.18~1988.4.8)と云う、昭和初期の探偵小説の「幻の挿絵画家」として知られる(?)人物なので…

黒井千次『漂う』(2)

昨日の続き。 ・年代順の整理 この連載は連想で繋いでいて、黒井氏の経歴を順を追って辿っていない。 そこで、2022年9月3日付「黒井千次『たまらん坂』(3)」に見た、講談社文芸文庫版『たまらん坂』241~250頁、篠崎美生子編「年譜」も参照しながら、年代…

黒井千次『漂う』(1)

・黒井千次『漂う/古い土地 新しい場所』印刷 二〇一三年八月一五日・発行 二〇一三年八月三〇日・定価1600円・毎日新聞社・175頁・四六判上製本漂う 古い土地 新しい場所作者:黒井 千次毎日新聞社Amazon 本書の由来は170~175頁「あとがき」に説明されてい…

武蔵野文化協会 編『武蔵野事典』(4)

昨日までで記念号と市販版を比較しつつ内容と企画・編集の経緯についてざっと確認を済ませた。今回は内容について1編を取り上げ、気になった瑣事を論って置くこととしたい。 500~573頁、人名編「武蔵野文化人名録」には、まづ500頁に坂詰秀一、すなわち武蔵…

黒井千次『たまらん坂』(3)

③講談社文芸文庫(二〇〇八年七月一〇日第一刷発行・定価1300円・講談社・254頁)たまらん坂 武蔵野短篇集 (講談社文芸文庫)作者:黒井 千次講談社Amazon カバー表紙、副題は右上に小さく示す。カバー背表紙では標題の下に小さく添える。 カバー裏表紙、右側…

西澤裕子『風の盆』(1)

・西澤裕子『風の盆』昭和五十六年三月五日 第一刷発行・定価 一、三〇〇円・日本放送出版協会・274頁・四六判上製本 私は風の盆については殆ど知識がなかったので、高橋治『風の盆恋歌』に先行する文学作品と云うことで、1月14日付「成瀬昌示 編『風の盆おわ…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(188)

・叢書東北の声44『杉村顕道作品集 伊達政宗の手紙』(11)「車夫の行方」 本作には執筆時期推定の手懸かりが全くない(と思う)。 84頁上段14行めに2行取りで「松尾芭蕉の手紙」と同じ「※」を打って、前後に分けてある。 物語は慶応四年(1868)五月十日、…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(187)

・叢書東北の声44『杉村顕道作品集 伊達政宗の手紙』(10)「松尾芭蕉の手紙」② 昨日の続き。 50頁上段1~13行めは前置きで、以下、章分けは番号ではなく2行取りで中央にやや大きく「※」を打っている。以下、仮に【番号】を振りながらその位置を示し、それぞ…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(186)

・叢書東北の声44『杉村顕道作品集 伊達政宗の手紙』(9)「松尾芭蕉の手紙」① 12月12日付(181)に引用した、杉村氏の次女・杉村翠の談話「父・顕道を語る」には、敗戦直後に刊行した小説本について「けれども、やはり筆で生活する夢はあったようです。」と…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(185)

・叢書東北の声44『杉村顕道作品集 伊達政宗の手紙』(8)「伊達政宗の手紙」 さて、借り出した当日、駅や帰りの車中で土方正志「解説」や「底本一覧」を見ても各作品の執筆時期が説明されていなかったことから、その興味でまづ表題作を読み始めた。そして…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(182)

・叢書東北の声44『杉村顕道作品集 伊達政宗の手紙』(5)樺太から仙台へ 昨日の続きで土方正志「◎解説◎杉村顕道の足跡」の気になったところをメモして置く。 ・476頁下段7行め「見い出され」は「見出され」。 ・484頁上段16行め「三遊亭可楽」は「三笑亭可…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(181)

・叢書東北の声44『杉村顕道作品集 伊達政宗の手紙』(4)未収録作品について 12月9日付(178)から本書を取り上げているので(4)とした。 この他に、土方正志「解説 杉村顕道の足跡」の気になったところとしては、昨日の引用の続き、480頁下段9行め~482…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(180)

・杉村顕道の家系(7) 叢書東北の声44『杉村顕道作品集 伊達政宗の手紙』488頁下段~492頁「付「金田一京助 杉村顕道未刊行和訳唐詩選序文」について」は、12月9日付(178)に引いたように「カメイ記念展示館」での杉村惇回顧展に際して設けられた「顕道コ…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(179)

・杉村顕道の家系(6) 昨日の続き。 私の杉村氏の著書『信州の口碑と傳説』及び『信州百物語』、そして「蓮華温泉の怪話」の検討結果は、一昨年の8月から10月に掛けて、Twitter に53回(!)にわたって「杉村顕道「蓮華温泉の怪話」の素性」と題して連投し…

白馬岳の雪女(078)

・遠田勝『〈転生〉する物語』(37)「五」1節め③ 一昨日の続きで101頁7~9行め、『日本伝説傑作選』へのコメントを見て置こう。 6の「白馬の雪女」(『日本伝説傑作選』)は、松谷みよ子と同じく、村沢武夫の「雪女郎の正体」/を原拠とする、職業作家の手に…

白馬岳の雪女(076)

・遠田勝『〈転生〉する物語』(35)「五」1節め① 「第一部 旅するモチーフ」=「小泉八雲と日本の民話――「雪女」を中心に」の最後の章は、100頁4行め~129頁「五 遠野への道」と題されている。その最後は1行分空けて129頁8行め、 こうして「雪女」は、遠野…

中島悦次『傳説の誕生』(4)

さて、本書9章め「傳説雪女」については、「あとがき」三二九頁3行めに「 同 「傳説雪女」 昭和 八・ 二・ 八(水) 後六・二五―六・五五」とあって、昭和8年(1933)2月8日水曜日の18時25分から55分に日本放送協会東京放送局(JOAK)の第一放送「趣味講座「傳説…

白馬岳の雪女(61)

一昨日からの続き。 ・橘正典『雪女の悲しみ』(3) 昨日は、目録・データベース類の誤りと、本書執筆の背景を見ただけで終わってしまった。 さて、表題作となっている「雪女の悲しみ/ ――ラフカディオ・ハーン『怪談』考――」だけれども、昨日示した『富山…

白馬岳の雪女(56)

白馬岳から随分離れ、丸山氏の文章からも遠ざかっているが、仕方がない(?)ので昨日の続き*1。 ・丸山隆司「【研究ノート】民話・伝説のポストコロニアリスム」(5) ところが平成6年(1994)の「和人のアイヌ文化理解について――事例その1 青木純二『アイ…

白馬岳の雪女(50)

昨日の続き。 ・遠田勝『〈転生〉する物語』(25)「一」8節め④ 遠田氏は、この丸山氏の文章には気付いていないようだ。ここで同じ箇所――「はしがき」6段落めを抜いての、遠田氏のコメントを、事の序でに見て置こう。37頁2~13行め、「一 白馬岳の雪女伝説」…

白馬岳の雪女(49)

8月27日付(31)に青木純二のアイヌ伝説捏造(疑惑)について、遠田勝『〈転生〉する物語――小泉八雲「怪談」の世界』検討の序でに、近年の Twitter の諸氏の指摘を中心におさらいして見た。 しかしながら、久し振りに振り返ったものだからうっかりして、一昨…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(174)

記事のタイトルは「白馬岳の雪女(37)」或いは「上田満男『わたしの北海道』(4)」でも良かったのだが、私の青木純二調査のそもそものきっかけは「木曾の旅人」の改作者としての興味からだったのでこの題にして置こう。 ・上田満男『わたしの北海道』更科…

白馬岳の雪女(31)

昨日の続き。 ・遠田勝『〈転生〉する物語』(11)「一」8節め① 続く34頁12行め~38頁9行め、8節め「「雪女」と偽アイヌ伝説」にて、遠田氏は青木氏が既に『アイヌの傳説と其情話』にて2話も、ハーンの「雪女」の翻案を行っていた、と指摘する。 青木氏のアイ…

白馬岳の雪女(29)

昨日の続き。 ・遠田勝『〈転生〉する物語』(09)「一」6節め 30頁13行め~32頁10行め、6節め「バレット文庫の「雪女」草稿」の前半を抜いて置こう。30頁14行め~31頁8行め、 白馬岳の「雪女」伝説が、ハーンの「雪女」に由来するもうひとつ有力な証拠をあ…

白馬岳の雪女(20)

昨日の続き。 ・和田登『民話の森・童話の王国 信州ゆかりの作家と作品』(2) 白馬岳の「雪女」には第2部に登場する松谷みよ子が大きく関わっているのだけれども、本書では、第1部にのみ取り上げられている。 すなわち「第1部 民話編」の「3 妖怪伝説…

白馬岳の雪女(17)

・遠田勝『〈転生〉する物語』(01)はじめに① それでは、差当り「十六人谷」についての確認が終わったところで、今度こそ7月31日付(04)の続きで、8月1日付(05)に保留にした遠田勝『〈転生〉する物語――小泉八雲「怪談」の世界』の内容を検討して行こう。…

白馬岳の雪女(14)

・辺見じゅん「十六人谷」(6)自筆草稿 今日から遠田勝及び牧野陽子の著書に取り掛かるつもりだったが、辺見じゅん「十六人谷」に関して若干、メモ程度の追加をして置きたい。 ・「高志の国文学館 年報」平成25年度(平成26年11月25日発行・高志の国文学館…