瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

怪異小説

赤いマント(254)

・井上雅彦「宵の外套」(9) 昨日の続きで①初出『京都宵』②再録『四角い魔術師』③再々録『夜会』の異同を確認しつつ内容を見て置こう。要領は8月8日付(250)に同じ。 昨日引いた会話の続き。【E】赤マントとの関連(一)(①474頁3行め~475頁2行め②247頁…

赤いマント(253)

・井上雅彦「宵の外套」(8) 一昨日の続きで①初出『京都宵』②再録『四角い魔術師』③再々録『夜会』の異同を確認しつつ内容を見て置こう。要領は8月8日付(250)に同じ。 「黒い外套の男」の候補として、「私」は2人の人物(?)を上げている。1人は冥界と…

赤いマント(251)

・井上雅彦「宵の外套」(7) 昨日の続きで①初出『京都宵』②再録『四角い魔術師』③再々録『夜会』の異同を確認しつつ内容を見て置こう。要領は昨日に同じ。 語り手の「私」は、6月28日付(246)に引いた「自作解題」の類に「母から聞いた想い出話」等と述べ…

赤いマント(250)

・井上雅彦「宵の外套」(6) 8月1日付(249)までで①初出『京都宵』②再録『四角い魔術師』③再々録『夜会』の本文比較を終えたところで、小説の内容について見て置くこととしよう。 まづ6月28日付(246)に引いた、これら3冊に添えられた作者・井上雅彦(19…

青木純二『山の傳説』(08)

・「戸臺部落」と「人骨をかぢる狐の話」(3) 昨日の続き。要領は一昨日に示した。 【C】人骨をかじる狐~事件 村人の体験談の後段。 ①『山の傳説』278頁5~10行め 暫く行くと、ガリ、ガリと異樣な音をきいた、思はず立すくむと、雪の中に一匹のきつねが…

青木純二『山の傳説』(07)

・「戸臺部落」と「人骨をかぢる狐の話」(2) 昨日の続き。要領は昨日に同じ。 【B】冬の野天の火葬場~事件前段 ①『山の傳説』278頁7行め~279頁4行め ある年の冬、村人が用事をすまして歸路についたのは夜も深んで居た、雪はぴつたりとやんで/居た、空…

青木純二『山の傳説』(06)

・「戸臺部落」と「人骨をかぢる狐の話」(1) 前回、8月4日付「「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(156)」の冒頭に触れた丸山政也は、2019年9月22日付(125)に見たように、その著書『長野の怖い話』の「参考文献・出典・初出・引用」に、2019年9月…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(156)

・志村有弘 編訳『山峡奇談』(3) 志村氏が杉村顕道『信州百物語(信濃怪奇伝説集)』から採録している2話は、2019年9月22日付(125)に取り上げた、丸山政也・一銀海生『長野の怖い話 亡霊たちは善光寺に現る』にも採用されている。すなわち、「蓮華温泉…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(155)

・志村有弘 編訳『山峡奇談』(2) 本書が典拠を「杉村顕道『信濃怪奇伝説集』」とするのは、昨日引用した「あとがき」に「二作品」とあったように、「◆近代」の5話め、197頁5行め~199頁3行め「人骨をかじる狐の話」と、9話め、214頁8行め~22…

赤いマント(249)

・井上雅彦「宵の外套」(5)本文③ 昨日の続きで、初出①『京都宵』と再録②『四角い魔術師』そして再々録③『夜会』の本文の異同、行空けの位置について、最後まで見て置こう。今回の異同は行を跨ぐものがあるので、②の改行位置を「/」③の改行位置を「|」で…

赤いマント(248)

・井上雅彦「宵の外套」(4)本文② 昨日の続きで、初出①『京都宵』と再録②『四角い魔術師』そして再々録③『夜会』の本文の異同、1行空けの位置について。 ・①465頁13行め「聳」=②243頁上5行め→③130頁上10行め、ルビ「そび」添加。 ・①465頁14行め「剪定…

赤いマント(247)

・井上雅彦「宵の外套」(3)本文① 6月28日付(246)の続きで、初出『京都宵』と再録『四角い魔術師』再々録『夜会』の本文を比較して置こう。仮に番号を附して見易くした。 ①『京都宵』459~486頁 2月20日付(221)にも触れたように461頁から本文。461頁は…

赤いマント(246)

2月20日付(221)の続き。2月21日付(222)として準備していたが2月21日付(222)に書いたような理由で見送ってそのままになっていた。今、その確認すべきところの『四角い魔術師』の記述を補って、4ヶ月越しに投稿する。 ・井上雅彦「宵の外套」(2) 初出…

赤いマント(237)

・岩崎京子の赤マント(12) 今回は【B】赤マント流言の内容の、①『紫ババアレストラン』にのみに見える説明を、昨日から続けて確認して行くこととしましょう。 女の子の生き肝、と云うと上方落語「肝潰し」を思い出しますが、2013年11月20日付(030)に見…

赤いマント(221)

もともとは2019年12月24日付「森川直司『裏町の唄』(1)」に述べたように、森川直司『裏町の唄』を「赤いマント(221)」として取り上げる予定だったのだが、前段階の考証で長くなってしまった。昨日まで続けた田口道子『東京青山1940』にしても同様で…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(145)

・朝里樹 監修『大迫力! 日本の都市伝説大百科』 本書のことは11月23日付「赤いマント(211)」に取り上げたが、「二章 迫りくる影」の21項め(通しで42項め)、116~117頁に「おんぶ幽霊」が立っていた。 見開きのイラスト、左頁(116頁)に青光りする女性…

赤いマント(219)

【お詫び】11月下旬の記事の書名が全て『現代日本怪異事典』となっておりました。書名の校正漏れを指摘したところにこうして間違ってしまい、誠に面目ない次第です。煩雑になりますので一々の記事には断らず、纏めて訂正して、ここに記してお詫び申し上げま…

子不語怪力亂神(3)

昨日の続きだけれども芥川龍之介の話には戻らないので、別の題にした。 * * * * * * * * * * 『東日流外三郡誌』にハマっていた友人の主張は、――仮に偽書であったとしても、このような本が生み出される土壌があったことには変わりないのだから、や…

「足要りますか?」(6)

・永山一郎「配達人No.7に関する日記」(6) 台風が来るとて、帰りの電車がいつもより若干混んでいた。近所のスーパーの棚からパンが、食パンも菓子パンも消えていた。魚や肉も殆どなくなっていた。明日は休業とのこと。家人は先週満104歳になった祖母を見…

「足要りますか?」(5)

・永山一郎「配達人No.7に関する日記」(5) 一昨日からの続きで小説の筋をやや詳しく見ている。所謂ネタバレと云う奴だが当ブログは面白そうな小説を紹介することを目的としていない。書いてある内容の確認と、どう読解すべきかに興味があるので、わざと…

「足要りますか?」(4)

・永山一郎「配達人No.7に関する日記」(4) 昨日の続きで10日め(96頁下段5行め~97頁上段5行め)、冒頭部を抜いて置こう。96頁下段6~10行め、 十枚のカード。配達人No.7が三日前呟いたように文面/が変わっている。( )内の文字が “大腿部モ含メルモ…

「足要りますか?」(3)

・永山一郎「配達人No.7に関する日記」(3) 一昨日からの続き。 例によって前置きが長くなったが、話の生まれた環境を重視したい私としては、当時永山氏が勤務していた沓喰分校について、やや詳しく確認して置きたいところなのだけれども、それはやはり後…

「足要りますか?」(2)

・永山一郎「配達人No.7に関する日記」(2) 昨日の続き。 北原氏が手にした遺稿集(マンジュウ本)はなかなか手に取る機会がなさそうなので、先々週、某区立図書館の返却期限に合わせて『永山一郎全集』の取り寄せを依頼して、先週、借りて来たのだった。…

「足要りますか?」(1)

・永山一郎「配達人No.7に関する日記」(1) 敬体ではなく常体で「足要るか」のこともあるらしいが、昭和62年(1987)高校1年生のとき、兵庫県立高校で級友から初めて聞かされたときの台詞に従って置く。 私がこの話を思い出したのは、9月9日付「「木曾の…

田中貢太郎『新怪談集(実話篇)』(01)

・『日本怪談実話〈全〉』 日本怪談実話―全 (1971年)作者: 田中貢太郎出版社/メーカー: 桃源社発売日: 1971メディア: ?この商品を含むブログを見る日本怪談実話〈全〉作者: 田中貢太郎出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2017/10/25メディア: 単行本この…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(127)

・『長野の怖い話 亡霊たちは善光寺に現る』(3) 昨日の続きで「二十二 招かれざる客 (北安曇郡)」の、丸山政也のコメントの残りを見て置こう。99頁10行め~100頁(5行め)、 もっともこの時代は、こういった怪談話は口伝え、いわば口承文芸的に広まった…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(125)

この春、ブログでコツコツやっているだけでは、なかなか認知してもらえないらしいことを思い知ったので、4月から告知用に Twitter を始めたのだが、Twitter の仕組みや Tweet 閲覧者の行動が分かって来るに連れて、やはり殆ど効果がないことを実感している。…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(123)

昨日の続き。 ・杉村顯『信州百物語』の評価(4) 但し『信州の口碑と伝説』や『信州百物語』の「小説仕立て」の話は、「近刊豫告」にあったように杉村氏の「流麗伸達の行筆」が生み出したものではなく、青木純二『山の傳説』や、藤澤衞彦編著、日本傳説叢…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(122)

・杉村顯『信州百物語』の評価(3) 9月15日付(118)の続き。 前回(昨日)も問題にしたが、② 著者が判明したことも、本書が復活を遂げる(?)に与って大いに力があったと思われる。 作者も成立事情も分からぬまま本書を読んだ場合、「怪奇」でないただの…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(112)

・北原尚彦所蔵の『信州百物語』初版(1)*1 さて、昨日引いた杉村氏の次女・杉村翠の談話の中に、北原尚彦が初版を持っていることが「今回の復刊でわかった」としているが、そもそもは無関係な動きであった。 すなわち、叢書東北の声11『杉村顕道怪談全集 …