瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

落語

上方落語「三年酒」の原話(6)

昨日の続きで、(上)152〜154頁「二代目三木助の「三年酒」余話」について。 書き出し、152頁2〜4行め、 私はかつて、旧師であった三代目桂三木助が生前に、 「これは俺の師匠の『三年酒』だ」 といって大事にしていた録音盤があったことを記憶していた。 …

上方落語「三年酒」の原話(5)

さて、1月15日付「都家歌六『落語レコード八十年史』(1)」に紹介した都家歌六の大著の(下)巻末索引にて検索するに、「演題別索引」のXVII頁右12行め〜XXII頁左31行め「さ行」の、XVIII頁右16行めに「三年酒 144,152,345,407 」とある。 凡例に当たる…

都家歌六『落語レコード八十年史』(1)

・昭和六二年一一月二五日初版印刷・昭和六二年一一月三〇日初版発行・全二巻揃定価 18,000円・国書刊行会・A5判上製本落語レコード八十年史作者: 都家歌六出版社/メーカー: 国書刊行会発売日: 1987/11メディア: 単行本この商品を含むブログを見る落語レコー…

上方落語「三年酒」の原話(4)

さて、なかなか本題に入れないが、1月2日付(2)に取り上げた『米朝落語全集 増補改訂版』第四巻41〜42頁「解説 三年酒」にも、宇井無愁の上方落語関係の著作や東大落語会 編『増補落語事典』改訂新版に同じく、この話の典拠について触れるところはない。 …

上方落語「三年酒」の原話(3)

1月2日付(2)の続きで、『米朝落語全集』の「解説 三年酒」を確認する前に、まづ昨日見た『米朝ばなし 上方落語地図』「安治川」項の本文、最後(単行本134頁上段8〜16行め=文庫版文庫版183頁10〜15行め)に添えられた桂米朝のコメントを確認して置こう。…

桂米朝『米朝ばなし 上方落語地図』(4)

1月5日付(3)の続き。 単行本と文庫版の異同を頭から詳細に比較する余裕は今、ないので、1月2日付「上方落語「三年酒」の原話(2)」の考察を進める用意として、「三年酒」を取り上げた34項め「安治川」について、単行本(132〜134頁)と文庫版(180頁4行…

桂米朝『米朝ばなし 上方落語地図』(3)

昨日の続きで本書の成立事情について、永井龍彦記者の「あとがき」の、最後の方を抜いて置こう。 2頁め後半(単行本354頁7〜12行め・文庫版480頁8〜14行め*1) 連載中は米朝師の話をもとに私が文章化させてもらったが、本書の刊行に際して米朝師自身|が全面…

桂米朝『米朝ばなし 上方落語地図』(2)

昨日の続き。 本書の由来は、桂米朝「はじめに」の冒頭、単行本1頁(文庫版3頁)2〜4行めに、次のようにある。「/」は単行本、「|」は文庫版の改行位置。 二年四ヵ月にわたって、長々と毎日新聞(大阪版)に載せていただきました。まずもって、|毎日新/…

桂米朝『米朝ばなし 上方落語地図』(1)

『米朝ばなし 上方落語地図』 ・単行本(毎日新聞社・A5判上製本)米朝ばなし―上方落語地図 (1981年)作者: 桂米朝出版社/メーカー: 毎日新聞社発売日: 1981/08メディア: ?この商品を含むブログ (1件) を見る・昭和五十六年八月 五 日 印刷・昭和五十六年八月…

上方落語「三年酒」の原話(2)

昨日の続きで、東大落語会 編『増補落語事典』改訂新版の「神道又」の項の残り、538頁上段10〜13行め、 〔解説〕上方ばなしで、マクラに「由辰」をふること/がある。オネオネの佐助がオネオネと話し、ゴウマンの/幸助のごうまんないい方、ゴツキの源太がけ…

上方落語「三年酒」の原話(1)

先月、全て手許に揃えた訳ではないが、2017年12月31日付「宇井無愁の上方落語研究(1)」に挙げた本を複数の図書館から借りて来たのは、従来指摘されていないらしい上方落語の原話に気付いたからであった。 さて「三年酒」と云う話だが、2012年10月4日付「…

宇井無愁の上方落語研究(1)

私は長らく音声再生機器を持っていなかったので、落語はまづ文字から入った。父の書棚に揃いではなかったが講談社文庫『古典落語』があって、中学卒業の頃、それで一通り古典落語の演目についての知識を得た。高校入学後、父のラジカセをもらったが、せいぜ…

人力車の後押しをする幽霊(5)

私がこの怪異談に注目したのは10月26日付(4)に引いた話を、9月22日付「林家彦六『正蔵世相談義』(1)」に取り上げた『正蔵世相談義』で読んだからで、もう2ヶ月は前のことになる。 まづ、類話の有無を確認するために松谷みよ子『現代民話考』を調べ、そ…

三遊亭圓生『明治の寄席芸人』(1)

本書は10月24日付「人力車の後押しをする幽霊(2)」に取り上げたが、初版と新装改訂版の異同を詳しく見て置こう。 ・青蛙選書38(昭和四六年一二月二五日発行・定価千五百円・青蛙房・353頁・A5判上製本) ・新装改訂版(平成13年6月30日初版・定価3500円…

人力車の後押しをする幽霊(4)

さて、海賀氏が「事実はともかく」としているのは、10月24日付(2)に挙げた初代三遊亭圓左の速記に、マクラ(悋気の火の玉)から本題の幽霊車に切り替えるに際して、例えば『圓左落語會』では139頁6行め「……是れは全たく有りましたお話しでございます……*1…

人力車の後押しをする幽霊(3)

「幽霊車」については、海賀變哲『落語の落』(大正三年十一月十三日印刷・大正三年十一月十七日*1發行・定価金六拾五錢・三芳屋書店・序4頁+いろは分索引22頁+529頁)にも取り上げられている。 本書の成立については「甲寅十一月」付の「序」に、序2頁4行…

人力車の後押しをする幽霊(2)

昨日の続き。 落語や講談の速記を載せた雑誌「百花園」は明治22(1889)年5月から明治33(1900)年11月まで全240冊が刊行された。デジタル復刻版 百花園: 明治期落語・講談速記雑誌 全240号収録 ()" title="デジタル復刻版 百花園: 明治期落語・講談速記雑誌…

人力車の後押しをする幽霊(1)

「幽霊俥」と云う落語がある。私がこの噺に注意することになった理由は後述するが、とにかく落語の演目を調べるにはまづは『落語事典』を参照するべきだと思ったものの、どこの図書館にもある訳ではなく、何館か廻って漸く、かつて卒業論文執筆時に参照した…

林家彦六『正蔵世相談義』(1)

・一九八二年十二月十日初版発行・定価1500円・一声社・228頁・四六判上製本 八代目林家正蔵改め林家彦六(1895.5.16〜1982.1.29)の没後に、標題の連載を中心に纏めたもの。本書の由来は226〜228頁、谷口幸璽「『正蔵世相談義』のこと」に、説明されている…

桂米朝「百年目」(1)

たまに「吉朝に聞いとくなはれ」もしくは「吉朝に聞いてくれ」で検索して当ブログに逢着する人がいる。――3年前にとにかく書いてしまって、その後特に気を付けている訳ではなかったのだが、今、自分でも検索してみると2012年10月6日付「四代目桂文團治の録音…

桂米朝『いろはにほへと』(1)

・CD『艶笑上方落語 いろはにほへと』定価2,550円艶笑上方落語 いろはにほへとアーティスト: 桂米朝出版社/メーカー: EMI MUSIC JAPAN(TO)(M)発売日: 1988/06/25メディア: CD クリック: 1回この商品を含むブログ (4件) を見る・CD『艶笑上方落語 続いろはに…

正岡容『艶色落語講談鑑賞』(10)

・朝鮮烏羽玉譜(5) 309頁の最後の行、15行めに9字下げ2行取りで「国 一 館 の 夜」とあって、310頁から本文。まず、311頁13行めまで引いて見る。 浪花館の寄席の高座を、あたしが丁ど二席了へて、あとのフロツク姿の四十男で新講談のほかに/四つ竹を鳴ら…

正岡容『艶色落語講談鑑賞』(5)

金子光晴・和田芳恵・富士正晴 監修/小沢昭一・大西信行・桂 米朝・永井啓夫 編集『正岡 容集覧』全一巻・昭和五一年六月二〇日印刷・昭和五一年七月七日発行・限定一五〇〇部・定価壱万四千円・仮面社・669頁・B5判函入上製本 巻頭、扉に次いで頁付のない…

正岡容『艶色落語講談鑑賞』(4)

前回『艶色落語講談鑑賞』の目次を示したことで、6月22日付(1)にて河出文庫『寄席囃子』を批判した理由はより明瞭になったであろう。 本の標題は、長篇小説で他に収録した作品がなければ、当然その題をそのまま標題にすれば良いのだけれども、短篇を集め…

正岡容『艶色落語講談鑑賞』(3)

・『艶色落語講談鑑賞』の目次 一方の『完本正岡容寄席随筆』の構成であるが、版元の岩波書店HPの「more info」に「目次」が示されている。また、中嶋裕子(編集部)の「編集者からのメッセージ」に、 ‥‥.すなわち,『随筆 寄席風俗』(昭和18年刊),『随…

正岡容『艶色落語講談鑑賞』(2)

・河出文庫版『寄席囃子』の構成 河出文庫版、1頁(頁付なし)扉、3頁(頁付なし)目次、5頁(頁付なし)中扉「寄席囃子」、7頁(頁付なし)は「寄席囃子」の扉。9頁から本文で頁付がある。目次は次のようになっている。 随筆 寄席囃子 7 随筆 寄席風俗 63 …

正岡容『艶色落語講談鑑賞』(1)

・『艶色落語講談鑑賞』昭和二十七年十二月二十日印刷・昭和二十七年十二月二十五日發行・定價450円・地方價460円・あまとりあ社・364頁・B6判上製本 まるまる復刻した本は存在しないようである*1。Kindle版「艶色落語講談鑑賞」は『艶色落語講談鑑賞』から…

四代目桂文團治の録音(6)

放送での、前後の川戸氏と桂米朝のやりとりも、『上方落語ノート』等の米朝師の著書に書いていないことも語られているようで非常に興味深いのだが、自分のものでもないのに何もかも文字起しをするのは流石に厚かましいので自重します。探して聞いて下さい*1…

四代目桂文團治の録音(5)

10月7日(4)の続き。 * * * * * * * * * * これらの録音だが、ラジオでも放送されたことがあって、ネット上に聞いた人の感想なども散見され、その録音を聞くことも出来る*1。 昭和51年(1976)3月14日に大阪の朝日放送ラジオで「帯久」が放送さ…

四代目桂文團治の録音(4)

関係ない話ばかりしてしまった。10年前から引っ掛かっていたことで、人間国宝の最後の大舞台だから、天下のNHKとして取材してやらなきゃ、とでも云うような、傲慢な姿勢が見えていた。しかし、だからこそ、天下のNHKとしてもっと分かった人間を配して、しっ…