瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

「ヒカルさん」の絵(1)

 この絵のことは、4月19日付「芥川龍之介「人を殺したかしら?」(1)」にて「奇跡体験!アンビリバボー」を取り上げたときにも言及しましたが、その後、もちごめ氏のブログ「もちごめのブログ」の2014/05/05「ヒカルさんの絵」に番組の詳しい紹介がありました。詳細はそちらを見ていただくことにして、ここでは若干の補足をして置きます。
 この話の典拠は、4月10日付「赤いマント(130)」に取り上げた、近藤雅樹『霊感少女論』です。
 オカルトまとめサイト「不思議.net」にまとめられた2ch「【閲覧注意】芸術に関する呪われそうなほど怖い絵」の書込み、2008/12/13「460」によると、エンドクレジットに「「霊感少女論」 近藤雅樹著 河出書房新社 」と示されていたようです。
 『霊感少女論』が平成9年(1997)7月18日初版発行ですから、もちごめ氏の記憶通り「奇跡体験!アンビリバボー」のごく初期で取り上げたとすれば、平成9年(1997)10月25日放映開始ですので、同番組は刊行されたばかりの同書を取り上げたことになります。
 小学生だったもちごめ氏がVHSカセットに録画したのは平成10年(1998)春の再放送らしいのですが、私が見たのもこの再放送のように思います。コーナーのタイトルは「呪いの絵/ヒカルさんの恐怖」であったことが分かります。
 もちごめ氏が問題にしている制作時期ですが、絵の裏には

1970.12/18
「少女」
 佐藤光

とあります。年記の「7」は、例えばWikipedia「7」の項に挙がっている①+③の書き方に拠るもので、左にある「9」とは明らかに異なっています。
 制作年については近藤氏も既に『霊感少女論』179頁7〜14行めに以下のように述べています。

「ヒカルさん」の絵にまつわる怪談を終えるにあたって、最後にひとこと注釈しておく。この/絵が、なぜ「ヒカルさん」の絵と呼ばれていたかということである。何人かの学生が、モデル/の名前だと記していた。実際に、そう思っていた学生たちも多かったのだろう。しかし、本当/は、松本君が書いていたように「ヒカルさん」は、この絵の作者だった。私は、この絵がまだ/保管されているのなら、見せてもらえないかと、大学事務局にお願いした。倉庫に保管されて/いた何枚もの絵のなかからさがしだしてもらったその絵には、キャンバスの裏面に「佐藤光」/の署名があった。昭和四十五(一九七〇)年暮れの制作であることを示す年記もあった。した/がって、この怪談は、およそ四半世紀にわたって語りつがれていたことになる。


 昭和45年(1970)制作だから「四半世紀……語りつがれていた」とは速断に過ぎましょう。この辺り、近藤氏の松山大学に於ける調査時期が、平成3年(1991)から平成6年(1994)であることは4月11日付「赤いマント(131)」にも示して置きましたが、この絵が階段踊り場に掲げられていた加藤会館が平成元年(1989)に取り壊されて、実際に絵を見たことのない学生が増加することによって、この調査期間中にも話が変質して来ていることを近藤氏は指摘しているのですから、何時頃発生したのかも、世代毎の聞き取りを行って確かめて見ないことには、はっきりしたことは言えないはずです。
 さて、わざわざ探し出してもらって撮影もしなかったとは思えないのですが、『霊感少女論』には写真の掲出はありません。(以下続稿)

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 一昨日からの続き。
 ニュースを見るが解説者が奇妙なことを言う。個々の火山の専門家を養成しろとか、もっと観測を強化しろとか。
 観測は十分だったんじゃないのか。もし気象庁や火山学者がこれを口実に予算を引き出そうとなさるのならば、もう少し何かをしていたら今回の水蒸気爆発の予測が出来ていたのか、答えてもらいたいところだ。
 それに、噴火の間隔は長い。日本で、20世紀最大の大正3年(1914)の桜島噴火からは100年、昭和期最大の噴火である北海道駒ヶ岳の大規模な軽石流を伴う噴火は昭和4年(1929)だ。かなり詳細に記録されているけれども、目撃者は殆ど残っていない。そして、どちらもその後同じ規模の噴火をしていない。樽前山は寛文七年(1667)と元文四年(1739)に江戸時代最大級の噴火を起こしているが、古記録には殆ど具体的な記述はない。個々の火山の専門家を養成したところで、その火山の噴火を実際に見ずに死ぬことになってもおかしくない。御嶽山だって昭和54年(1979)には死火山が噴火したと騒がれたのだ。つまり、有史以来噴火の記録が全くなかったのだ。専門家を養成したところで、その火山で起こり得る限りのタイプの噴火を見ることなど無理だ。すなわち、特徴を見極めて判断を出すなど不可能だ*1
 最低限の整備をして、少しでも何かあれば早めに情報を出す、これに尽きるのではないか。
 コメンテーターはシェルターを作れとか言っているが、若干そんな対策をしても間に合わない。このくらいの前兆地震で規制していたら登れる火山がなくなってしまう、という意見も見たが、今回、噴石に打たれて死んでも構わないと思って登っていた人などいなかっただろう。警戒レベルが上がっていなくても地震のことを知っていたら登らなかった人もいただろう。登らせないのが一番だ*2。規制すべきではない、という意見を認めるとすれば、登山予定者には現状を周知徹底して、それでも登りたいという人は自己責任とするしかあるまい。何かあったときの救助・収容作業の費用は本人負担にする。収容作業に二次災害などの危険が伴う場合は放置されても構わないと誓約させる。――しかし皆がそれなりの知識を持って登る訳でもなく、本人が誓約していても家族が耐えられないだろう*3。やはり事前に規制して(不発に終わろうが終わるまいが)影響を受ける関係者に補償をする(観測強化はそこそこにしてその予算を回す)のが良いのではあるまいか*4
追記】羮に懲りて膾を吹く、ではないが別の活火山の周辺の温泉宿にキャンセルが出ているようだ。……関係ないから。普段無関心の癖に、こういうときに限って「火山がこんなに」と取り上げて、しかも殆どの火山が今、噴火活動をしていないにもかかわらず、監視態勢がなってないなど、さも問題であるかのように、大して勉強している訳でもないコメンテーターが煽るようなことを言うから、過剰に不安にさせられてしまうような人も出て来てしまうのだ。――しかも、気象庁なんかも今回の噴火について、データがないから判断出来なかった、と言っているそうだ。上に書いたように過去100年に噴火していない山にはデータがない訳だ。1000年以上活動していない活火山もある。どこにもデータはない。噴出物を調査して大体の推移を推し量ることは出来る。しかし、毎回同じように活動をする訳でもない。それなのに110も火山があって47しか監視されていなくて、大丈夫かみたいな適当なことをしたり顔のコメンテーターに言わせるのはどうなのか。観測してたって100年・1000年単位ではデータの重ねようもないではないか。……もともと火山に詳しい人なんかいないだろうから、後生だから事前に予習を受けさせてから出演させて下さい。

*1:有珠山のように一定の間隔を置いて特徴のある活動をするのであればある程度分かる。三宅島もそう思われていたが、あの低温火砕流の存在を周知させる噴火を起こした。いや、有珠山だって現在の活動パターンが出来たのが江戸時代のことなのだ。

*2:お前は9月28日付「浅間山の昭和22年噴火」に書いているように火山に登る気が全くないからこんなことを言うのだ、と言われれば、全くその通りなのだけれども、常に登らせるなとは云っていない。活動期があれば休止期もあるので、大規模な活動が終了した後など、奇観をこぞって見に行けば良い。TVコメンテーターたちは、これまで火山に殆ど関心がなかった癖に「日本には110もの活火山があって」危険、などと煽るような発言をするのは慎んでもらいたい。解説者らしき人物もうろ覚えの適当な、不適当なコメントを重ねている。いや、火山に限ったことでなく、ワイドショーやニュース番組の出演者にそんな期待をする方が間違いなのだろうけれども、普通の人はそれを何となく信じてしまうじゃないか。

*3:今回、最悪、遺体の収容が出来ない可能性も出て来た。いよいよつらい状況である。――仮に収容不可能になった場合、「心配停止」状態の人たちは結局「死者」には勘定されずに「行方不明」になってしまうのだろうか? やはり「死者」とするべきなのではないのか?

*4:平成12年(2000)の有珠山の例を予知成功の例として喧伝しているけれども、あんな察知しやすい例を挙げて「予知」は出来るみたいなことを云うのは止めて欲しい。じゃあ、御嶽山の観測を強化したら今回の水蒸気爆発の予知が適切に出来たのか。――そこのところの答えが不明瞭なまま、話をすり替えて「予知」の強化を云々しようとしている人は、信用出来ない。マグマ噴火なら今の態勢で十分だろう。むしろ、変化を認めたときにどう対策するか、の方が大事だろう。