瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

高木敏雄『日本傳説集』(04)

 宝文館版は当初、菊判の上製本で、赤のOKミューズコットンの表紙が付いていたが、後に四六判の並製本が出た。
 カバーは白地で、表紙の中央やや下に江戸時代後期の版本の挿絵「狸」が茶色で印刷され、絵の上に横書き・黒で「日本伝説集/高木敏雄」絵の下に「宝文館出版」とある*1。背表紙には同じ文字が縦書き一列に入り、裏表紙は上部に「ISBN4-8320-1351-3 C0039 P1442E」とあるのみ*2。表紙折返し下部に「装画・葛飾北斎」裏表紙折返し下部に「日本伝説集」と縦書き。本体はクリーム色の布目のエンボスで、背表紙にのみ、カバーと同じ文字が入っている。
 遊び紙が1枚あって、扉は横書きで「日本伝説集/高木敏雄著/山田野理夫編集/宝文館出版」裏は白紙、次に縦書きで「日本伝説集」とのみ、頁付はないがここが1頁で(裏は白紙)、「序」から頁付「三」が入る。
 判型が違うが、本文の印刷されている寸法は15×9cmで全く同じ、つまり縮刷ではなく、余白が減っただけである。本文は第二刷(修正版)と同じらしい。頁数は同じ。
 奥付は縦書きで「日本伝説集©/一九九〇年三月十日 初版第一刷印刷/一九九〇年三月十五日 初版第一刷発行/……」とある。昭和48年(1973)版には全く触れるところがない。
 山田氏の解説「資料 高 木 敏 雄 他」(279〜296頁)の冒頭に、

  「日本伝説集」について
 冒頭私事にわたって心苦しいが、私は最近民話著作集全五巻(京都・星光社版)を執筆しているが、その文中に先学高木敏雄の業績を紹介したいとしるしてある。そのひとつを果たすために本書の復刻を企てたものである。

とあるのだが、この山田氏の文章には全く年記がないので、この平成2年(1990)版だけ見たのでは、この「最近」がいつのことなのか、全く分からない。
 そこは今ではネット社会の有難さ、で、OPACで「山田野理夫/星光社」で検索してみると、昭和47年(1972)から48年にかけての『ふるさとの民話』など5冊がヒットする(未見)ので、これはもちろん、昭和48年版のままの「最近」なのである。
 また、290〜291頁に高木氏の雑誌「郷土研究」掲載の論考を列挙して、「これら論文集も目下出版の進行中である。その折に高木敏雄にもう一度触れる考えである」と述べ、実際に、昭和48年6月刊の『日本伝説集』に続いて9月にこれらをまとめた『人身御供論』を刊行しているのだが、この『人身御供論』も『日本伝説集』の平成2年(1990)3月の四六判並製本刊行に続いて6月に四六判上製本で再刊されている(これも『日本伝説集』と同じく昭和48年版の存在には全く触れていない)ので、下手をするとこの「目下出版の進行中」が平成2年(1990)のことと誤解される恐れがある。
 尤も、これらを平成2年に合わせて書き換えられても困る(書き換えによる矛盾の発生なども少なくない)ので、ただ昭和48年初刊の旨、一言断って欲しいだけなのだ。
 それはともかく、どうも、私はこういう、時間に対する無神経さが気になって仕方がないのだが、学者でも平気で anachronism なことを書く人もいる(そしてそのような欠陥が特に批判もされずにエラくなっている)訳で、全く気にならない人も、どうも少なくないらしい。だとすると、仕方のないことなのかも知れないが、やはりおかしいと思うので、ここに注意しておく次第である。

*1:ネット上に帯付きの画像がある。

*2:奥付等にも定価の表示がないが、本体価格1400円+消費税3%42円と分かる。