瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

上野顕太郎『帽子男』(2)

 さて、講談社版では、まず巻頭に4頁カラーページがあり、ついで中扉がある(裏は白紙)。ここまでの6頁には頁付はなく、「7」頁から算用数字の頁付があるが、時代劇では漢数字になっているし、画面が紙いっぱいに描かれて頁付を入れられなかったりして、目次が役に立たないようなところもある。
 『帽子男は眠れない』『帽子男の子守唄』ともに、1頁めには黒地に円形の照準にとらえられた帽子男が描かれる。前者ではその右に、後者では左に、それぞれ1行に暖色系で標題と作者名が入る。
 2〜3頁の見開きは「目次」で、上段が目次、下段は帽子男と相棒の女性の、哀愁に満ちた逃亡の旅のワンシーンがカット割りでそれぞれ12コマずつ描かれている。二時間ドラマのオープニングを見るようだ。
 そして、4頁には本文中の1挿話のイメージをふくらませたカラーイラストが入る。その下には本文とは必ずしも合致しない説明文と、前者には(「謎の幼稚園」本文223ページより)後者には(『Happy Lucky Tricky & Empty』本文114ページより)とある。ここらへんの作りは、例えば少年少女講談社文庫の口絵(『怪談』など)みたいになっている。
 これらは、当然のことながらエンターブレイン版には採られていない。
 中扉も、エンターブレイン版は講談社版の部立てを解体しているのだから採られていない。頁付はなく、裏は白紙となっている。ここで2冊まとめて中扉とともに部立てについて記述しておこう。
 『帽子男は眠れない』では、まず5頁が「第一部/「素敵な帽子男」編」で、丸窓からはみ出るように湯気の上がるコーヒーカップを右手に持つ帽子男が描かれる。ここには帽子男シリーズ7話を収録。65頁「第二部/「魅惑の短編」編」では第一部に続く場面らしき、右手に持ったコーヒーカップをすする帽子男が描かれているが、内容は帽子男とは無関係の短編8編である。139頁「第三部/「麗しの帽子の男」編」では上目遣いに頬をふくらませ、丸窓から帽子をはみ出させた帽子男。帽子男シリーズ13話収録。
 『帽子男の子守唄』では、まず5頁が「第一部/「皆様の『帽子男シリーズ』」編」で、帽子に巻いた手拭いに風車を挿し、金魚すくいの袋を右手でつまんで見せる帽子男のイラストが全面に描かれている。帽子男シリーズ11話収録。以下は帽子男シリーズとは無関係で、113頁「第二部/「お客様の/『Happy/Lucky/Tricky/&/Empty』」/編」でこの中扉は裏が白紙ではなく114頁から本文が始まっている。内容はこの連作15話と目次にも出ている「特別付録①ハピラキ迷路」である。175頁「第三部/「あなた好みの短編」編」の中扉では、収録される3編のうち2編の登場人物たちが雑多に描かれている。「第四部/「いい味イラスト集」」は扉もなくいきなり始まって、最初の見開き右側(200頁)に部題が縦書き(他は全て横書き)で入っている。以下209頁まで見開き5面のイラストが続く。200〜201頁のあっぷっぷの顔が誰なんだか分からないが、202頁以下の4面は帽子男のイラストであるが『帽子男』に再録されていない。
 確かに『帽子男』は、この2冊の帽子男シリーズ全31作を順番もそのままに再録しているのだが、このイラスト集など、細かいところで切り捨てられた要素も多い。これについては次回、まとめて順を追って指摘して置くつもりである。また、帽子男シリーズでないものが『五万節』に再録されているのだが、こちらにもやはり漏れているものもある。(以下続稿)