瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

上野顕太郎『帽子男』(3)

 各話の題の文字が全て明朝体からゴシック体に差し替えられていると2月22日付(1)に指摘したが、見れば見るほど違和感を覚える。しかし、エンターブレイン版の編成とサイズとには合致しているような気もする。
 吹き出しの植字は講談社版と変わっていないように見える。しかし、画中に直接入っている活字の処理が、どうも違っているようなのである。
 『帽子男は眠れない』について見ていこう。「帽子男の同窓会」の2頁目4コマ目の「……!」、講談社版42頁は闇の中に白抜きで入るが、エンターブレイン版44頁では黒で周囲を白く抜いて入れてある。「合い席の帽子男」5頁目1コマ目も同様に処理されている。
 「車中の対決」の題が違っていることも(1)で触れたが、3頁目1・2・5コマ目の文字も、講談社版183頁では背景に紛れて(という程でもないが)少々読みづらいが、エンターブレイン版109頁では文字の周囲の白が倍の幅に増えて読み易くなっている。同様の例を一々指摘してはうるさいので、以下、場所を示すにとどめておく。「取調室の帽子男」4・5・7頁目、「帽子男の目薬」5頁目、「合い席の帽子男」2・5・6頁目*1、「観光地の帽子男」7頁目、「アイスコーヒーの帽子男」3・5・7頁目。ちなみにこの「アイスコーヒーの帽子男」の4頁目7コマ目、講談社218頁に比してエンターブレイン版144頁は若干文字位置を上にずらして、帽子の影に文字がかかる面積を微妙に減らしているようである。
 もう止めてもいいのだが、念のため『帽子男の子守唄』も見ておく。文字の周囲の白の面積が増えたというのは、もう一々書かないで置く。今度は逆に、講談社版の方が文字の周囲の白が広く、エンターブレイン版の方が狭くなったりしているのだが……それ以外の処理について、挙げておこう。
 それは講談社版61〜70頁、エンターブレイン版207〜216頁の「断崖の帽子男」である。これについてはemasakaのブログ「本を読む 読書やコンピュータなどに関するメモ2009-07-05「「謹製イロイロマンガ」「帽子男」「五万節」」に、「「断崖の帽子男」を見ると、修正も入ってるらしい。」と指摘されている。10頁のうち、最初と最後を除く8頁は127コマから成るぱらぱら漫画(上野氏は“動画”と呼んでいる)になっていて、コマ以外の部分は黒く塗りつぶされているが、2〜3頁は余白(余黒?)を多めに取って、白抜きで説明を入れている。この文字が、エンターブレイン版ではほぼ新しいものに差し替えられているのである。改変箇所を挙げると、下段冒頭「〈上野顕太郎敬白〉」の〈 〉がなくなっている(「上野顕太郎敬白」)。次の説明文の冒頭にハートマークがあるが、エンターブレイン版では空白(段落頭1字下げ)である。また、「帽子男」“動画”の括弧が、それぞれ『帽子男』「動画」に変わっている。
 以下、説明が続くが「図①」が「図A」に(2箇所)、「図②」が「図B」に(1箇所)なっている。3頁目の「色を塗ると……」の段落、講談社版は段落頭1字下げになっていないが、エンターブレイン版はなっている。最後の「※」の附された注意書き、講談社版ではここまでの文字と同じサイズだが、エンターブレイン版では小さい文字にしてある。なお3頁目の図に「図B」のキャプションがエンターブレイン版にはあるが、講談社版ではキャプション自体を欠いていた。
 また、ぱらぱら漫画には「サブリミナル広告入り!」と2頁目右枠外に謳ってあったように、5コマ広告が入っている(3・5・6・8・9頁目。広告には番号が附されていないので、コマ数は合計132である)。エンターブレイン版では「BEAM COMIX/夜は千の眼を持つ/エンターブレイン」以下、いずれもビームコミックスの「星降る夜は/千の眼を持つ」「五万節」「帽子男」「わたしたちの/好きなもの/安永知澄 しりあがり寿 河井克夫・共著)」だが、講談社版では5つ全て「モーニングKCDX/「帽子男は眠れない/A5判・800円(税込)/講談社」であった。
 要するに「断崖の帽子男」の「修正」についても、エンターブレイン版の全体的な文字の差し替えと一連のもので、絵そのものに修正は入っていないらしいのである。
 最後に、『わたしたちの好きなもの』の書影を示しておこう。

未読。(以下続稿)

*1:7頁目は変わらないように見える。