瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

山田野理夫編『遠野のザシキワラシとオシラサマ』(6)

 昭和49年版(昭和52年版)について、後回しにしている山下氏の解説の内容、それから巻末の佐々木光広編「佐々木喜善全著作目録」の内容にまだ触れていないが、もう少々確認しておきたいことがあるので後回しにする。ここでは中公文庫版について述べておく。

 目次と奥付、編集付記については3月1日付(2)で述べた。今のところ文庫版の改版はない(カバー改装もない)訳だから、カバーやらについて記述するのは省略する。原本を手にとって下さい。改版が出て違いが発生したら、比較して書きたくなると思う。
 元版である宝文館版との相違は、桜庭一樹「文庫版解説」及び「索引」が最後に追加されていることもそうだが、何よりも「編者 山田野理夫」の名が消えて「著者 佐々木喜善」のみになっていることに象徴される山田臭(?)の排除で、3月3日付(4)にも述べたように山田氏の散文詩及び写真もなくなり、僅かに「遠野の市の謡」と昭和63年版の「後記」にその痕跡を止めるのみとなっていることであろう。ちなみに、昭和63年版の「復刊」であることは明記されているが、昭和49年版の存在はこの本からでは分からない。201頁にある昭和63年版の山田氏の「後記」により、昭和63年版が「新装版」であって、元版はその前に出ていたことまでは分かるのだが。
 さて、桜庭氏の解説だが、桜庭一樹桜庭一樹〜物語る少女と野獣〜』(平成20年7月31日初版発行・定価1400円・角川書店・190頁・A5判並製本)の166〜178頁「文庫解説傑作選」に「佐々木喜善 著/『遠野のザシキワラシとオシラサマ』解説」として再録されている(171〜173頁)。

桜庭一樹 ~物語る少女と野獣~

桜庭一樹 ~物語る少女と野獣~

 ほぼ同文なのだが若干異同がある。
・202頁11「中国山地」 → 171頁上17「中国山脈」
・203頁4「真っ黒な」 → 171頁下11「夜のように真っ黒な」
・204頁2「『怪談』」 → 172頁上19「「怪談」」
・204頁19「パタパタ」 → 173頁上6「パタパタと」
 また、文庫では205頁2「飄々」にのみ「ひょうひょう」とルビが附されているが、この再録では増やされていて、順に挙げていくと、「梁・啼き(声)・(掘り)炬燵・襖・惹かれ・餅・鬱蒼・苔・涎・敬虔・磯・呪詛・彷徨・妖怪・歯牙・棲む・密かな安堵・飄々」に附されている。文庫では末尾、1行空けて下部に(作家)とあるが、再録では*3つで区切って、別に5行、執筆の経緯のぼんやりとした説明があり、末尾に(桜庭一樹)。
 さて、この「文庫解説傑作選」、冒頭(166頁)の宣伝文句に「桜庭一樹の書く解説はとにかく「読ませる」。/解説に惹かれて本編を読みたくなる、のももちろん、/解説そのものがひとつの世界になっており、/何度も読み返してしまう味わいがあるのだ。/中でも評判高い3冊の解説を、版元のご厚意により特別掲載」とある。確かに「ひとつの世界」になっている。内容の解説ではなくて、桜庭氏の読書感想文なのだけれども、本書の場合、別に山下久男「(監修者の)解説」があるから、エッセイのような「解説」でも構わない訳だし。ただ、これを載せるのであれば、山田氏の散文詩と編集当時の写真を削る必要はなかったようにも思うのである*1

*1:それならいっそ、山下氏の解説だけ残して、中途半端に浮き上がってしまった山田氏の「遠野の市の謡」(3月4日付(5)参照)も削除した方が良かったのではないか。