瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

岩本由輝『もう一つの遠野物語』(3)

 奥付の前の頁に「――著 者 紹 介――」がある。横書きで、まず振仮名付きの氏名、1937年の誕生、1961年の大学卒業、1967年の大学院博士課程修了(経済学博士)までは初版・追補版とも同じ。初版は「現 職 山形大学教授」とあるが、追補版は「同 年 山形大学講師,以後助教授,教授を経て/1988年 東北学院大学教授,現在に至る」となっている。続いて〔著 書〕として、初版には8種、追補版には6種追加されて合計14種挙がる。
 奥付は著者紹介と見開きになっていて、初版・追補版ほぼ同じレイアウトである。
 初版は奥付の裏は白紙で、見返し(遊紙あり)になっている。
 追補版では左開きで目録が7頁(頁付なし)ある。まず「刀水歴史全書」の目録が4頁、「1994年1月現在」である。[1]から[33]種まで並んでいるが、[18]と[20]の間が真っ白で何もない。また「[13]小説のモデル柳田国男」のみ未刊である。副題は「逆説的歴史学の試み」で、著者は「岩本由輝東北学院大学教授)」で「鏡花に“正義の人”、独歩に“語るに足る友”と評/された柳田は、藤村・蘆花・風葉・泡鳴らの作品に/も登場する。作家の見た巨人の像は?  予¥2900」との説明がある。番号の下に縦書きで小さく「進行中」と入り、予価も示されているが、結局刊行されなかった。版元HPの「刀水歴史全書」のページを見るに、シリーズNOは現在[80]まで進んでいる(城戸毅『百年戦争』2010年5月刊)が、最後に「欠番 13,19,52」とある。
 なぜこんなことに拘泥ったのかというと、「『遠野物語』から省かれたもの―むすびにかえて」初版(243〜261頁)追補版(253〜271頁)の冒頭に次のようにあるからである。

 本書でとりあげたことがらは、当初、刀水歴史全書の一冊として企画されている『小説のモデル・柳田国男』のなかで、水野葉舟柳田国男という一章を設けて扱う予定であったが、資料を渉猟するうちに、柳田の『遠野物語』の成立にいたるまでの経緯を示す興味ある事実が数多く発見されたため、このような形で別に一書を編み、先発させることとなったわけである。


 他に刀水歴史全書に岩本氏の著書は「[12]きき書き六万石の職人衆」副題「相馬の社会史」が入っている。追補版の「1994年1月現在」の目録には「相馬に生き残った100種の職人の聞き書き。歴史家/と職人の心の交流から生れた明治・大正・昭和の社会史。/旅職人から産婆まで。続刊を予定  252p ¥1854」との説明があるが、版元HPの「刀水歴史全書/きき書き六万石の職人衆」のページの説明文には「……産婆,ほとんど他に見られない諸職が特に貴重」とあって、最後が違っている。すなわち、この『六万石の職人衆』の続刊もやはり予定されながら刊行されなかったのであった。
 この、本にまとめられなかった研究成果が一体どうなったのか、どうも気になる。岩本氏は現在も論文を発表し続けているが、まとまらなくとも素材として提示してもらいたいものである。
 さて、追補版では続いて「人間科学叢書」のやはり「1994年1月現在」の目録が3頁ある。[21]まで並ぶが既に[5]が欠番である。これは版元HPによるとその後[44]まで続刊されている。この中にも岩本氏の著書が[14]と[22]の2点入っている。この目録7頁めの裏が、奥付である。