瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

明治期の学校の怪談(1)

 「讀賣新聞」第1044号、明治11年(1878)7月10日水曜日、4面の紙面の2面(頁付なし)3段組の1段めに次の記事がある。「新聞」という欄である。改行箇所は 』 で示した。

○あの雪隱から幽靈が出ると本とうか本とうとも/\』確に見た人がいくらもある姿ハ美くしい女で髪の毛を』ふり亂し色青ざめて夕方から怨めしいと出かける夫だ』から生徒が否がッてだん/\退校するそうだと麴町邊』で話して居たが是ハ其學校の教員が常に大そう勉強さ』れるゆゑ追々に生徒が殖るから夫を他の何とかいふ教』師が聞いて彼の學校へばかり入校されてハいかにも近』所に居て僕が怠たる樣に當るからとて心易い女髪結へ』三十錢やッて頼み其女が幽靈が出ると諸方へいひ觸ら』せたとかいふ評判なんと人に先生とでもいはれる者が』不埒千萬な


 偽情報だから怪談ではないのだが、もし裏事情がバレなければ、学制公布(明治五年八月)直後、最古の学校の怪談*1になっていたかも知れない。当時は公立の小学校が整備される以前で、私立の、寺子屋の延長の小学校が乱立していた時代で、このような競争もあったのである。
 偽の幽霊話という辺りの発想は、落語の「お化け長屋」みたいだ。
 振り仮名をまとめて示しておく。

こうか・いうれい・で・ほん・ほん』たしか・み・ひと・すがた・うつ・をんな・かみ・け』みだ・いろあを・ゆふかた・うら・で・それ』せいと・いや・たいかう・かうじまちへん』はな・ゐ・これ・そのがくかう・けうゐん・つね・たい・べんきやう』おひ/\・せいと・ふゑ・それ・ほか・なん・けう』し・き・あ・がくかう・にふかう・きん』じよ・ゐ・ぼく・おこ・やう・あた・こゝろやす・をんながみゆひ』せん・たの・そのをんな・いうれい・で・しよはう・ふ』ひやうばん・ひと・せんせい・もの』ふらちせんばん

*1:投稿当初「最古(?)の学校の怪談(1)」というタイトルにしていたが、晩に「明治期の学校の怪談」に改めた。