瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

塩嘗地蔵(06)

 A5変型判の写真を主体とした本をもう1冊。

図説 鎌倉伝説散歩 (ふくろうの本)

図説 鎌倉伝説散歩 (ふくろうの本)

 原田寛 写真・文『図説|鎌倉伝説散歩(ふくろうの本)』(二〇〇三年一〇月三〇日初版発行・定価1800円・河出書房新社・111頁)。大きさは21.5×16.8cm。縦書き。河出書房新社の「ふくろうの本」は5月7日付に『図説|遠野物語の世界』を紹介した。
 著者原田寛(1948生)は写真家で奥付の「著者略歴」によると「日本全国の古都や歴史の町並みを中心に撮影活動を続け、鎌倉の寺社と自然の撮影をライフワークとしている」とのこと、「鎌倉市在住」で鎌倉関係の著書が多い。「写真家 原田寛」のオフィシャルウェブサイトを見るに、ガイドブック等の写真にも原田氏撮影のものが数多く使用されているようだ。いずれまた別の著書を取り上げるかも知れない。
 昨日紹介した平凡社「コロナ・ブックス」の『鎌倉』は、鎌倉を隈無く回る、というのではなく、焦点を当てた部分をやや詳しく紹介する、という体裁だったが、こちらは「鶴岡八幡宮・金沢街道」6〜41頁(11題)、「北鎌倉」42〜65頁(10題)、「扇ガ谷・源氏山」66〜81頁(6題)、「長谷・腰越」82〜103頁(8題)、と4つに区分され、写真はもちろん文章も充実している。104頁に【参考資料】として20種の書名が挙がるが、ここではその初めに挙がる「鎌倉市教育委員会かまくら子ども風土記』」に注意しておきたい。
 さて、光触寺は6題め、「頬に焼印のある阿弥陀光触寺」(24頁中段〜26頁中段)に見え、写真は25頁「光触寺本堂に安置されている頬焼阿弥陀像。」に、26頁上段「右/今も民間の信仰を集め続けている光触寺境内の塩嘗地蔵。」と、26頁上段左の「山門」の、3つが掲載されている。文章の第1段落(24頁)を引用してみよう。

 金沢街道を十二所まで下り、脇道にそれると時宗の寺、光触寺がある。本堂の前に小さな地蔵堂があり、石造の六地蔵が祀られている。かつては商人が行き交う金沢街道に面して立てられていた。当時、六浦(現在の金沢八景)から鎌倉へ向かう塩売りが、この地蔵に初穂の塩を供えていくと、帰り道にはその塩がなくなっていたことから「塩嘗地蔵」と呼ばれるようになったという。当時、金沢街道が六浦から塩を運んでくる重要な道だったことを偲ばせる説話である。*1


 「塩嘗地蔵」で画像検索してみれば分かるように、この地蔵堂には「六地蔵」だけでなくその奥に舟型光背付きの一回り大きな石地蔵があって、恐らくこれが塩嘗地蔵かと思われるので、この説明は少し不足している。

*1:ルビ「じゅうにそ・じしゆう・こうそくじ・むつら・しおなめ」。