現在流布している塩嘗地蔵の“伝説”を、ガイドブック類から拾っているが、①六浦の塩売り商人が行きに商いの初穂としてこの地蔵に供えた塩が帰りにはなくなっていた → ②地蔵が嘗めたのだろうということで「塩嘗地蔵」の名が付いた → ③なくなった塩は、実は近くの住人が失敬していたのだった――というのが、完全な形であるが、記述スペースが限られるガイドブックの中には、無理にこの“伝説”に触れようとして「塩を嘗めた地蔵」という怪談めいた(?)書き方になっているものが散見される。
尤も、完全な“伝説”だとて戦後に捻り出された、落語の「やかん」みたいな説なので、きちんと書いてあるから良いというものではないのだが、少なくとも①の前半は古い文献に見えるところだから、そこを略してしまって「嘗めた」ところだけ残すのは如何なものか。変わった“伝説”だから中途半端でも触れたいのは分かるし、こんな風に妙な具合に現在も変化しつつある“伝説”の例として、大変興味深いところではあるのだが。
しかし、中には、塩嘗地蔵に触れて“伝説”に一顧だにしないという見識を示したガイドブックもある。今回はそういったものを紹介してみたい。
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山下喜一郎『徹底 鎌倉花めぐり』(2010年9月24日第1刷発行・定価1500円・講談社・160頁)A5判、縦書き。
- 作者: 山下喜一郎
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- 作者: 水野丹石,佐野藤右衛門
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- 作者: 山下喜一郎
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- 作者: 山下喜一郎
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- 作者: 中野正皓
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10頁から133頁まで、見開きに1箇所ずつ花の名所(殆どが寺、重出あり)を取り上げ、写真と文を2:1の割で配して紹介している。光触寺は58〜59頁に「光触寺【ハナショウブ】」として取り上げられている。塩嘗地蔵の記述は以下の通り。
……。金沢街道から、朝比奈の切通しを越える人々の交流は古くから盛んで、境内にある塩嘗地蔵は、往時の面影を今に残している。*1
*1:ルビ「しおなめ」。