上武和彦 文/関戸勇 写真『鎌倉――古寺社と四季の花道――(マチュア選書)』(1994年7月1刷発行・定価2136円・偕成社・231頁)B6判、オールカラー、並製本カバー、縦書き2段組。
オールカラーで写真も美しく、本文の説明もやや詳しく、しかも漢字の半分くらいに振仮名が附されており、なかなか親切丁寧な作りである。
章は大きく18〜77頁「北鎌倉――谷に抱かれた禅刹*1」と78〜221頁「鎌倉――海と山に囲まれた古都*2」に分けられ、前者には6つのコースが紹介されている。後者はさらに「一 鶴岡八幡宮へ、そして鶴岡八幡宮から」(80〜137頁)として、まず「鶴岡八幡宮」(81〜83頁)を紹介し、さらに鶴岡八幡宮を起点とする4つのコース(84〜137頁)へと進める。「二 源氏山へ」は2コース(138〜149頁)、「三 松葉ガ谷の寺々を訪ねて名越切通しへ」1コース(150〜169頁)、「四 潮風薫る海近き古寺社」として4コース(170〜221頁)、合計17コースが紹介されている。
「鎌倉」の「一」の「2 古刹・禅刹・古跡を訪ねて朝比奈切通しへ」(100〜117頁)は、鶴岡八幡宮を起点として滑川を遡るコースで、「光触寺」は112頁から114頁上段に見える。まず、
朝比奈切通しにほど近い、静かな山間の地に本寺はある。本尊の〈頬焼阿弥陀〉と〈塩嘗地蔵〉で知られるが、境内は四季の彩も豊かである。*3
とあって、112頁上段は「▲光触寺本堂右奥に咲く花菖蒲(6月初旬)。*4」のキャプションのある写真。続いて開基の一遍、開山の作阿、そして『頬焼阿弥陀縁起絵巻』について述べ、塩嘗地蔵の記述は114頁上段2行めから。
境内の一隅に〈塩嘗地蔵〉と称される石造地蔵菩/薩像があり。昔、六浦(横浜市金沢区)の塩売りが/初穂に塩を供えると、帰りには塩がなくなってい/るので、お地蔵様が嘗めたのだろうという伝えを/もつ。もと旧金沢道に面してお堂があったが、明/治になって本寺に移された。*5
114頁上段の後半は十二所神社。113頁上段は「▲庶民信仰厚い塩嘗地蔵。*6」の写真で、堂の全景。なお、100頁下段のコース案内の絵地図にも、塩嘗地蔵のイラストが描き込まれている。