9月29日付(02)に、①②のカバー表紙折返しに『わたしが出あったおばけ』という当初のシリーズ名が残っていることを、指摘して置いた。
この、①②と③④⑤との不統一は、奥付の裏のこのシリーズの広告にも認められる。まず①②の広告を確認して置こう。
横組みで、上に「現代の民話・おばけシリーズ」と大きくシリーズ名が入る。「現代の民話」は丸ゴシック体、以下は明朝体である。次の行もやや大きな字で「* 日本児童文学者協会/採集・編(全5巻)」とあり、その下、左に傘を差す少女(上半身)のカットがある。これは①の表題作「消えてしまった少女」の絵だが、その右、6行の説明文に、
明治以降今日まで日本各地で生まれた現代/民話の定着をめざして、とくに怪談・おば/けばなしと呼ばれるものを採集し再話しま/した。全国から作品を公募したため、素材/や年代、地域のバラエティに富むユニーク/な作品集となりました。
とある。これはカバー裏表紙の説明文(9月29日付(02))に似ているが全体に簡略化されている。但し「現代民話の定着をめざして」という意識はカバー裏表紙には見られないものである。以下、横線で1巻ずつ上下を区切りながら、標題(数字は半角ゴシック体)と収録作品が列挙されている。改行位置を示すのに使ってきた「/」が原文に多用されているので、改行位置は原文のままとした。
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1 消えてしまった少女
消えてしまった少女/おばけがくれた青い紙/ネコかぼちゃ/髪の毛のながい少
女/怪談をつくる話/そば一本/銭湯から出てきた人/寄宿舎のおばけタロヒ/
茂平のくわ/ちんちん電車とようかい/神社のなき声/骨しゃぶり/他
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2 ゆうれいがふくフルート
ゆうれいがふくフルート/白い少年/月夜の女の子/やっぱりミオさんはやって
きた/Y病院9号室/田村さんのおよめさん/おきろや/すすりなく車/うかば
れぬ少女の声/うしろすがたの正ちゃん/海底の墓/工場の源さん/他
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3 まぼろしのパーティー
もどってきたゆうれい列車/まぼろしのパーティー/呪いの足型/物おき小屋の
三味線/血をのみにくるゆうれい/おんぶされたさむらい/銃殺された死体/4
号館のなぞ/通夜にやってきた子ども/竹やぶの兵隊ゆうれい/他
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4 ま夜中に鳴るピアノ
ま夜中に鳴るピアノ/小鳴門橋の白い女/さとうのゆきがつもった/青木フデさ
んのこと/動かぬ大砲/わたしの見たおばけ/兵器庫の音/はぜ土手の話/いろ
りにいた人/タロは見た/もうひとりのスチュワーデス/病み田/他
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5 帰ってきた兵隊ゆうれい
山んばの出た里/地の底から出たゆうれい/ネオン街のほこら/ただ成金/ゆう
れいと東京大空襲/墓とどろぼう/トンネルの中で消えた女/カキの木になべが
なる/怪奇枕がえし/大きな顔のおばけ/知らせにきた海軍さん/他
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菊判カバー装・4色口絵・さし絵豊富・巻末解説つき・平均204ページ
編集委員……加太こうじ・北川幸比古・香山美子・鳥越信・横笛太郎
②までは③④⑤に載る広告とも一致している。そして、③④⑤が実際に刊行されたものと順序が違っている。すなわち、③④⑤は何らかの事情で当初予定の通りに刊行されなかったのだ。
ちなみに①②の各12篇はそのまま収録されている。但し②は実際の収録順とかなり前後している。
それはともかく、次に③④⑤に載る広告から、③④⑤の部分を引いてみよう。一回り大きい標題を太字で強調するのは止めて、一致しない部分を太字にして示してみた*1。
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3 すすり泣く階段
すすり泣く階段/生きているゆうれい/ネオン街のほこら/ただ成金/ゆうれい
と東京大空襲/墓とどろぼう/トンネルの中で消えた女/カキの木になべがなる
/怪奇まくらがえし/大きな顔のおばけ/知らせにきた海軍さん/他
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4 まぼろしの軍用列車
まぼろしの軍用列車/オリョール号のマズルカ/のろいの足型/物おきべやの三
味線/血をのみにくるゆうれい/おんぶされたさむらい/銃殺された死体/4号
館のなぞ/通夜にやってきた子ども/竹やぶの兵隊ゆうれい/他
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5 ま夜中になるピアノ
ま夜中に鳴るピアノ/小鳴門橋の白い女/さとうのゆきがつもった/青木フデさ
んのこと/動かぬ大砲/わたしの見たおばけ/兵器庫の音/はぜ土手の話/いろ
りにいた人/タロは見た/もうひとりのスチュワーデス/病み田/他
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以下、①②の広告のこの部分を【A】、③④⑤の広告のこの部分を【B】とする。
さて、【A】と【B】とでは③④⑤の題と順序が違っている。「4 ま夜中に鳴るピアノ」が「5 ま夜中になるピアノ」になっているのは小異だが(実際には『ま夜中に鳴るピアノ』の題で刊行されている)、「3 まぼろしのパーティー」が「4 まぼろしの軍用列車」に、「5 帰ってきた兵隊ゆうれい」は「3 すすり泣く階段」と改題されている。何らかの理由で順序を変更し、改題して刊行することになったのだろうが、理由は見当が付かない。それはともかく、この広告を比較することにより、収録作の原題が推察される。
③『すすり泣く階段』の広告には、ともに11篇が示されるが、【A】にあった「山んばの出た里/地の底から出たゆうれい」を【B】では表題作と「生きているゆうれい」に差し替えている。しかし「生きているゆうれい」は実際には⑤『ま夜中に鳴るピアノ』に別に収録されており、ここではこれを「地の底から出たゆうれい」の改題と勘違いしたものらしい。なお「トンネルの中で消えた女」は「ゆうれいが出るトンネル」と改題されている。
④『まぼろしの軍用列車』の広告にも、ともに10篇が示されるが、表題作が【A】では「もどってきたゆうれい列車」と題されていた。【A】で表題作となっていた「まぼろしのパーティー」は、内容からして「オリョール号のマズルカ」であろう。ほか「小屋」→「べや」・「子ども」→「兄」の修正が目立つ。
⑤『ま夜中に鳴るピアノ』もともに12篇が示され、実際の収録作品と表記が違うだけのものが殆どだが、1つだけ「わたしの見たおばけ」という作品がよく分からない。実際に収録されている20篇のうち、この広告に見える題と一致する11篇を除いた残り9篇のうちの1篇に当たるものと思うが、どれもそれらしいものがない。ちなみに③④と⑤では刊行時期が1ヶ月ズレているが、③④の収録作品の修正も、この⑤の刊行に当たって改題(?)された作品の修正も、なされていない。
*1:【2017年4月28日追記】当初「一致する」としていたが、異同を太字にしているとしか思えないので「一致しない」に訂正した。