瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

美内すずえ『ガラスの仮面』(10)

 単行本第2巻について。
・5頁の下に「おもな登場人物」があることは、9月13日付(08)で触れたが、その上に以下の3コマ描かれている。

「劇団つきかげ」研究生56名
うち演劇経験歴5年以上の者Aクラス11名/5年以下の者Bクラス37名
初心者Cクラス8名/マヤもここにはいる


 そして6頁から「第2章 炎の階段」である。文庫版第1巻ではここが186頁で、この単行本5頁は、文庫版にはない。
 しかし、ここは省略するべきではなかったと思う。読み進めるうちにこの頁に書いてあるようなことは飲み込めてくるが、あった方が、よく分かる。
・31頁4コマめ、さやかの心内語「それもむだな動きは最大限におさえただ足の裏をかたむけただけで!」は文庫版211頁も同じだが、「最小限におさえ」だろう。ちなみに文庫版では左の余白に☆(?)が3つ輝いているカットがあるが、単行本ではこの辺りでさやかたちが話題にしている「道におちていた釘をふんづけた」演技の説明になる、23頁5コマめのマヤの全身像(拡大!)と4コマめの足裏とを1つのコマに収めて示している。しかし如何にも説明的過ぎるのでやめたのだろう。 
・89頁8月27日付(02)で指摘した文庫版第1巻269頁、速水真澄が劇団つきかげを初めて訪問するシーンでの挨拶だが、問題の3コマめ、真澄の台詞は「長いあいだのごぶさたをおわびにきました/それとお許しをいただけるならお話をすこし」となっていて、問題ない。文庫版「ごぶたさ」は改版に当たっての改悪なのであった。
・112頁、同じく文庫版では第1巻292頁だが、1コマめの『若草物語』のベス役が上手く行かず同じシーンを繰り返すマヤに対する、退屈した周囲の劇団員のぼやきは、

団員A:「やれやれまたか/あの子のおかげてちっとも先へすすみしない」
団員B:「やっぱりCクラスの子なんて無理なのよ」

となっていて、問題ない。ここが「やや」と衍字になっているのもやはり文庫版での改悪である。普通、読者は新しい版が古い版に手を加えている場合、最良の状態になっているはずと期待するが、新しい版が必ずしも最良ではない、というのが実情なのである。……いや、この程度の間違いでは誰も困らないのだけど。
・131頁9月13日付(08)の最後でも触れたがここは文庫版の切れ目になっていて、文庫版第1巻の最後・311頁と文庫版第2巻の最初・5頁に重複して掲出されている。
・174頁2〜3コマめ、小野寺先生の速水真澄に対しての台詞。

小野寺:「たくらんだものだな 真澄くん/雑誌記者達をあおってここへよびよせ/誌にこきおろして有名な演劇評論家たちの評論を載せる」
小野寺:「そう…… それも再起不能なほど辛らつなやつをな……」


 「名誌」はルビ「かくし」があるので問題なく読めるが、2コマめの台詞は文章として少々落ち着かないように思う。ちなみに文庫版第2巻48頁では「誌」と訂正されている。
 奥付の後に見開きの「花とゆめコミックスは全国書店で好評発売中!! 」という目録があり、その次の見開きは右が「美内すずえの本/花とゆめコミックス」で筆頭は「ガラスの仮面①〜24巻」24も丸数字だが出ないので。左は「小説ガラスの仮面」の広告で、巻頭頁「第一章/マヤのはばたきの序曲」の一部が示される*1が、マヤの母・春がここでは「母の春子」になっている。

*1:ルビ「プレリュード」。