瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

浅沼良次編『八丈島の民話』(3)

 ③、上製本四六判の浅沼良次編『新編日本の民話46 八丈島』(一九八五年十月一日初版発行 特装版第一刷・231頁)企画・編集 未来社、製作・発売 トーレン。このトーレンの住所は②の東京連合印刷(ほるぷ)と同じである。合印刷=トーレンなのであろう。背表紙には未来社とある。
 装幀はこの「新編」で統一されており、①初版を踏襲していない。扉の次にカラー口絵「鬼の石」のイラスト(裏は白紙)。1頁(頁付なし)は「八丈島」のイラスト地図で、地名の他「半七ゾク・羽倉簡堂・タコのムコ殿・ホトトギスの兄弟・ほうれんごし・七曜様・お薬金次郎・ベニジャラとカケジャラ・嫁かつぎ・一ツ目の女・まじけたアッパメ・子育て天狗・三郎とマツカリガケ・道ろくじん・人捨ヤア・汗を流す地蔵・みこし入道・ゆずり葉・金塊チャラリン・業平と権左・島のギタマギ*1・亡魂船・アズバタの木」の23題が記入されている。右上に「伊豆諸島」中の「八丈島」の位置図。
 2頁(頁付なし)は「『新編 日本の民話』 凡例」で、8項目ある。「新編」とあるように、元版の「未来社版『双書 日本の民話』(全79巻)」を「編集しなおした」もので、書名や編者の入れ替え・追加なども行ったというが、『八丈島の民話』には関係がない。特にここに紹介する必要があろうと思われるのは、5項めと7項めである。

一、『新編 日本の民話』の基本的編集方針として従来、神話、伝説、昔話が混在してい/
  た弊を改め古老から採集した、特色ある昔話を中心に再話したものを選択した。地域/
  の特殊性によって若干文献による再話もあるが、極力避けることにした。『双書 日本/
  の民話』に収録した「わらべ唄」は割愛した。
一、さし絵は在来本で原画のあるものはそれを利用し、他は井上宏氏をわずらわした。


 3〜8頁「まえがき」は、1段落めの「宣伝」が「喧伝」に改められ、最後の浅沼氏の住所「東京都八丈島八丈町大賀郷」が削除されている他は同文。9〜12頁(頁付なし)「目次」の最後に「さし絵・口絵=井上 宏」とある。松川氏の原画は失われていたらしい。
 収録されているのは57話(13〜231頁)で、4話省略されている。
 ①④(②)にあって③に省略されている話は以下の通り。
・ 1番め「女護が島」 原話 『椿説弓張月曲亭馬琴著/三根 山田喜与吉(故人)
・30番め「化猫退治」 原話 『椿説弓張月曲亭馬琴
・43番め「痘瘡の神」 原話 『椿説弓張月曲亭馬琴
・50番め「漂着船の歌」原話 末吉 浅沼な■よ(故人)/大賀郷 菊池た■の(八一)
 主として『椿説弓張月』に拠った話が削除されている。これらの話は「おおむかしの話でおじゃる。」で始まっており、これが「再話」に際して語りらしく添加されたものだということが分かるのだが、一方「古老から採集した」ものである「漂着船の歌」が省略されているのは、漂着船に因んだ歌謡の紹介でストーリー性はなく「はなし」と見なさなかったからであろう。他にも「新編」の凡例に「極力避ける」としている「伝説」や「文献による再話」も少なくないのだが、これを削ると頁数が減ってしまうので、「地域の特殊性」に鑑みて、最低限の削除に止めたようである。
 「七人の坊さん」は31番め、128〜132頁に載る。挿絵はない。
 なお「孤灯行者」は③の目次のみ「狐灯行者」と誤っている。(以下続稿)

*1:ママ。本文「キダマギ」。