瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

美内すずえ『ガラスの仮面』(13)

・単行本第9巻154頁

社員:「失礼 わたしこういう者です」
名刺:大都芸能 企画部 長谷川栄一
社員:北島マヤさんにお話ししたいことがあって」
マヤ:「大都芸能 !?」
社員:「実はこの秋 渋谷に新しい大都タウンビルが完成するのですが/そこの9階に大都タウン劇場をオープンの予定です」
社員:「オープンはじめの演し物はヘレン・ケラーの「奇跡の人」」
社員:「実は去年からこのヘレン役候補をひそかに探しつづけ/各劇団のめぼしい人材をリストアップしさらに厳選に厳選を重ね/5名のヘレン役候補を選び出しました」
社員:「北島マヤさん あなたもそのうちの一人です/どうです? ヘレン役のオーディションをうけませんか?」
マヤ:驚きの表情(154頁)


 ここは文庫版では第6巻78頁だが、「一人(ルビ:ひとり)」が「1人(ルビ:り)」となっている他は同じである。そしてやはり「10階」ではなく「9階」なのだが、劇場名をこれまで「大都劇場」と言っていたのをここで「大都タウン劇場」という新しい劇場名を持ち出していることが注意される。
 大都芸能はいくつか劇場を持っているらしい。例えば、マヤが代演を務めることになる舞台「夢宴桜」を上演している劇場は、単行本第9巻45頁文庫版第5巻277頁)に「大都プラザ劇場」とあった(玄関の上には「DAITO PLAZA」)。
 そして大都劇場は、マヤが新春の海に飛び込んでゲットしたチケット(第1巻3338頁*1)で見た、姫川歌子主演の舞台「椿姫」を上演した劇場である。第1巻20頁6コマめ「東京/大都劇場」、39・40頁「東京大都劇場」とあった。40頁に1頁を使って外観が描かれている、豪壮な劇場である。だから、あの大劇場を潰して新ビル内に移転させるのかと思っていたのだが、やはり別の、新しい劇場としてオープンするようである。
・単行本第9巻ではもう1箇所、171頁からの「第7章 炎のエチュード」の最初、集まった5人のヘレン役候補に担当(長谷川)からの説明は、以下のように切り出されている。ちなみに171頁の章題、ゴシック体だったのが文庫版95頁では太い明朝体、また下部に「ヘレン・ケラー」の説明があって単行本ではサリバンが暴れるヘレンの手首をつかんでいるカット(元来はカラー)が文の左にあるが、文庫版では削除されている。

長谷川:「この秋 渋谷に大都の新しいタウンビルが完成します/9階に新劇場ができますがオープンの演し物はヘレン・ケラーの「奇跡の人」/あなた方は大都芸能がこの一年間 ひそかに探しつづけ選びに選びぬいた/いずれも優秀な才能をもつヘレン役候補です」(172頁1コマめ。文庫版第6巻96頁は「1年間」以外同じ)


・単行本第11巻44頁、部屋の入口の立て看板に「大都新ビル9F劇場/オープン記念/「奇跡の人」/顔寄せ会場」とあって、劇場名はない。この辺り、文庫版未見だが手書きだし書き換えてはいないだろう。
 しかし、この劇場名、そう単純ではなかった。単行本第11巻119頁を見てみよう。

大都新タウンビル 完成(屋上の看板「DAITO PLAZA」)
1〜6階 ショッピング街/7階8階 食堂街/(天井からの吊り装飾「OPENNING FESTA」)
9階/チン(エレベーターの扉が開く前触れの音)/大都プラザ劇場(119頁)


 こうして見るとこの「大都新ビル9F劇場」「新劇場」の名称は「大都劇場」→「大都タウン劇場」→「大都プラザ劇場」と変遷している。これなどは、本筋とは関わらないけれども、それだけに、しれっと統一して欲しいどうでも良いレベルの混乱だ。で、先に出て来た「夢宴桜」を上演していた「大都プラザ劇場」はどうなったのだろうか。この新ビルの名称は「タウンビル」で動かないものの、屋上の看板は「DAITO PLAZA」なのである。ちなみにもとの「大都プラザ劇場」は、単行本第9巻47頁3コマめや48頁2コマめ(文庫版第5巻279・280頁)等の描写・台詞からして入口は1階で、大都劇場のように独立した建物らしい。

*1:第1巻の185頁までは単行本・文庫版とも頁一致。