瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

美内すずえ『ガラスの仮面』(34)

ガラスの仮面 (第18巻) (花とゆめCOMICS)

ガラスの仮面 (第18巻) (花とゆめCOMICS)

・単行本第18巻3頁の扉絵、ヴェネツィアの町を背景に剣を手にしたビアンカが描かれているが、これは私が図書館で借りている、旧蔵者が昭和58年(1983)頃に買い揃えた単行本の、各巻奥付の後にある広告「美内すずえの本」に使われていた*1。これらについても、まとめてチェックして置こうかとも思う。全くの瑣事だが。
 さて、3頁が扉なのだがその前に遊紙が1枚あって何も印刷されていないが、これが1〜2頁に当たる。4〜5頁は「●今までのあらすじ」で、ここまで頁付がない。
 単行本第18巻の巻頭6頁文庫版第11巻36頁単行本第18巻の巻末196頁文庫版第11巻226
 単行本第18巻は、7頁、マヤは図書委員の草木広子に出会い、8頁、彼女が読んでいた『女海賊ビアンカ』の話を聞かされる。そして一人芝居「女海賊ビアンカ」の上演に成功し、さらに「通り雨」に取り組むという展開になっている。
・単行本第18巻14頁文庫版第11巻44頁)1コマめ、マヤは草木広子から借りた『女海賊ビアンカ』を読み始める。

「そうです お集まりのみなさん/ この船上での裁判のためにわたくしは自分の一身上の秘密をここで告白しなければなりません」
「驚かれたでしょうが 今お聞きおよびのようにわたくしは/男の身なりをしてはいますが実は女なのです」
 そうして“彼女”は語りはじめた
 本名はビアンカ・カスターニ
 その名を聞いて群集はどよめいた
 カスターニ家をいえばヴェネチア共和国でも貴族中の大貴族だったからである


 「 」の使用は原文のママ。本からそのまま引用しているのだから「 」で括られているところが登場人物の台詞で、そうでないところは地の文である。
 そして、単行本第18巻18頁文庫版第11巻48頁)、たまたま入った体育倉庫で、ビアンカを演じてみるのだ。

マヤ:「お集まりのみなさん!/驚かれたでしょうが 今お聞きおよびのように/わたくしは男の身なりをしてはいますが実は女なのです」
マヤ:「この船上での裁判のためにわたくしは自分の一身上の秘密をここで告白しなければなりません/本名はビアンカ・カスターニ」
マヤ:パンパン(手を叩く)「お静かに!」
マヤ:「驚かれるのもごもっとも!/カスターニ家はヴェネチア共和国の中でも貴族中の大貴族!/信じられないのも無理はありません」


 マヤは早速、地の文も巧みに台詞に取り入れているが、発言内容の順序が違っている。やはり単行本第18巻14頁1コマめの方が自然である。「一身上の秘密」は、第一にまず「女なのです」だろう。「女なのです」と言ってしまってから「一身上の秘密……告白しなければなりません」ではなく。たぶん。
 この混乱の元は、単行本第18巻14頁1コマめの文字の配置を見れば分かる。そして、ここに写した通りに読むべきであることも、鍵括弧「 」の配置・使い方からして間違いない。すなわち、ここの台詞は群集に語りかけるビアンカの右と左に配置されているのだが、

ビアンカの右】
「そうです お集まりのみなさん/「驚かれたでしょうが 今お聞きおよびのようにわたくしは/男の身なりをしてはいますが実は女なのです」
ビアンカの左】
 この船上での裁判のためにわたくしは自分の一身上の秘密をここで告白しなければなりません」

となっていたために、読む順序が混乱したのであろう。……直後なんだけど。
単行本第18巻28頁文庫版第11巻58頁)5コマめ、マヤに対する脚本担当の文芸部の吉沢くんの台詞に「な…る」があり、単行本第18巻30頁文庫版第11巻60頁)4コマめで、やはり草木さんがマヤの発言に対して「な…る…」と言っている。これは「なるほど」をタメて言っているのだろうけれども、当時流行ったのだろうか。私は幼かったので、記憶していないが。(以下続稿)

*1:第18巻の第16刷では「ガラスの仮面①〜(26)巻」。