瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

木暮正夫『日本の怪奇ばなし』(01)

 児童文学者の木暮正夫(1939.1.12〜2007.1.10)による全10巻の怪談シリーズ(岩崎書店)。岡本順(1962生)絵。A5判上製本カバー。
 まず平成元年(1989)10月〜2年(1990)3月に『日本の怪奇ばなし』と題して刊行され、平成7年(1995)2月に『日本の怪談』と改題・改装されて再刊されている。後者の奥付に

このシリーズは「日本の怪奇ばなし」を/改題・改装したものです。

とあるように、内容は同じである。
 いずれ暇が出来たら全10巻についても対照してみたいが、差し当たり最後の2巻について見て置こう。
・『全国怪談めぐり東日本編 安達が原の鬼ばば(日本の怪奇ばなし 9)』(一九九〇年二月二八日第一刷発行・定価951円・144頁)*1
 改題・改装本『全国怪談スポット①(日本の怪談 9)』一九九五年二月十日第一刷発行・定価1456円)
・『全国怪談めぐり西日本編 佐賀の化け猫(日本の怪奇ばなし 10)』(一九九〇年三月三十日第一刷発行・一九九〇年七月三十一日第二刷発行・定価951円・158頁)
 改題・改装本『全国怪談スポット②(日本の怪談 10)』一九九五年二月十日第一刷発行・定価1456円)
 以下、改題・改装本の方は単に改題本と呼ぶことにする。『日本の怪奇ばなし』は初版本と呼ぶ。
 さて、これらの4冊の見返し、表紙見返しが「全国怪談めぐり/東日本編絵地図」で、裏表紙見返しが「全国怪談めぐり/西日本編絵地図」で共通している。改題本には「全国怪談めぐり東(西)日本編」の書名は、他に記載されていないので、並べて見ると手抜きのような印象を覚えるが、改題本だけを見た読者にはそんなに違和感は与えないと考えたものだろう。
 扉(1頁、頁付なし)は書名が差し替えられているだけでカット・レイアウト、書名の下の「木暮正夫/岡本 順絵」は一致。
 続く「●もくじ」は2〜3頁の見開き(頁付なし)で、東日本の方は九尾の狐のカット、西日本の方は河童のカットが、それぞれ2つ、見開きの右下と左上に入る。内容は同じだが、初版本は最後に「装幀 井上正治」とあったのが、改題本では「表紙 岡本 順」となっている。
 ここでカバー表紙について述べておくと、初版本はそれぞれ各巻の標題となっている妖怪が描かれている。改題本は「鬼ばば」や「化け猫」を標題に使っておらず、別に強調もしていないが、表紙は新たに描いた同じ妖怪の絵を載せている。絵は初版本も改題本も岡本氏のもの。初版本の装幀の井上氏はデザイン担当らしく、確かに改題本のカバーはデザインも文字も全く凝ったところのない、廉価版のような仕上がりになっている。
 目次の次は白紙(4頁、頁付なし)、次に書名のみが入った(シリーズ名なし)中扉(5頁、頁付なし)があって、6頁から本文。
 初版本の東日本編の140〜141頁「あとがき」は、冒頭の「ご愛読いただいている『日本の怪奇ばなし』(全十巻)も、いよいよゴール目前となった。……」とあり、西日本編の154〜155頁「あとがき」の冒頭には「『日本の怪奇ばなし』(全十巻)をしめくくるラストの二巻は、……」とあったのを、改題本は書名のみ『日本の怪談』(全十巻)に差し替えているのだが、毎月刊行されていた(らしい)初版本ならともかく、一挙にセット販売された(らしい)改題本にはそぐわない。それじゃあどうすれば良いのか、と言うことだが、――書き直すべきだろう。
 ついで横組みの「さくいん」が各3頁あって、奥付になるのだが、奥付の裏にこのシリーズの広告がある。初版本ではこの2巻について「民話・伝説にみる怪奇ばなし。」という説明が附されているが、改題本では「各県一話。民話・伝説にみる怪談。東(西)日本編。」に改められている*2。しかしながら、西日本編は29話で確かに「各県一話」なのだが、東日本編の方は33話で、1話しか収録されていない県は東北地方では福島、関東地方では栃木・千葉の3県で他は各2話、中部地方は山梨・長野・新潟・静岡の4県だがいずれも2話を収録している。この点は、西日本編の「あとがき」にも154頁「……。とくに西日本編は一府県一話にしぼった関係で、……」と断ってあるのに。
 全く同内容の本を5年後に改題・改装して出す必要があったのか、その辺りの事情は良く分からないが、なるべくならこのような改題本は止しにして欲しいと、つくづく思う。書名が違っていると、使うに際してどうしても2つの版を念のため、確認して置く必要を覚えてしまう。……でも、改版と断らずにかなり手を入れている例もあるのだが。いや、それはそれで、これはこれで、どっちも困る。

*1:書名は奥付による。第二刷(一九九〇年七月三一日発行)も見たが定価等同じ。

*2:他の8巻の説明文は同文である。