瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

平井呈一『真夜中の檻』(01)

 『吸血鬼カーミラ』を読んで、疑問点を上げたり(1月9日付)して、それで先日来、図書館に行くと平井氏の本も注意している。そしたら訳書でない本が文庫の棚にあるのに気が付いた。

真夜中の檻 (創元推理文庫)

真夜中の檻 (創元推理文庫)

平井呈一『真夜中の檻(創元推理文庫)』(2000年9月14日初版・定価800円・東京創元社・427頁)
 中菱一夫名義で発表した小説2作に加えて、カバー裏表紙の説明文の最後に「……平井呈一の全容を明らかにする、ホラー・ファン垂涎の一冊。」とあるように、訳書の解題やエッセイ、それから、氏に師事した紀田順一郎荒俣宏の解説・序文、東雅夫編「平井呈一著訳書一覧」406〜408頁などの資料が収録され、確かに私のような“俄”にも、平井氏のことが分かったような気にさせてくれる1冊である。
 唯一の創作集である昭和35年(1960)刊行の中菱一夫『真夜中の檻』は、この文庫版のメインとして15〜130頁「真夜中の檻」131〜209頁「エイプリル・フール」が、巻末423〜427頁「付・『真夜中の檻』序跋」として江戸川乱歩「序」中島河太郎「跋」も収録され、末尾に(編集部 KM)とある412〜422頁「解題」に初刊本の書誌も略述されている(412頁上段)。
 この作品ごとの解題の、「真夜中の檻」の最後(412頁下段3〜5行め)にこんなことが書いてある。

 なお、舞台となる新潟県内の架空の村「法木作」/であるが、初刊以降どの刊本にもルビがなく、正確/な読みは不明である。


 この「法木作」なる地名だが、千葉県君津市に存在する。よみは「ほうぎさく」。本書初刊当時は君津郡君津町。首都圏の地名だから「ほうぎさく」と入力すれば大抵のワープロで変換出来るはずである。
 当時平井氏は君津郡大佐和町に住んでいたから、この地名は承知していただろう。もとより新潟県の地名ではないが、モデルとした新潟県の村に似た地名ということで、借りたのだと思われる。
 ちなみに文庫版376〜405頁、東雅夫による評伝「Lonely Waters――平井呈一とその時代」の403頁6〜8行めに「昭和三十八年」に紀田順一郎等が「呈一にとって「終の棲家」となった千葉県富津市大沢町の居宅」を訪ねたとあるが、昭和30年(1955)に大貫町と佐貫町が合併して大佐和町になり、昭和46年(1971)に君津郡富津町に併合、まもなく市制施行で富津市となって現在に至るので、ここでは「千葉県君津郡大佐和町(後に富津市)」とすべきである。
 もちろん、だからといって「ほうぎさく」と読むのが正しいのだ、というつもりはない。朗読するんなら「ほうぎさく」と読んどけば良いだろうが。――ただ、こんな思わせぶりな書き方なんざしなくてもいいのではないか、と、そんなことを思ったのである。(以下続稿)