「法木作村」は、もちろん架空の村で、それが信濃川と渋海川の分水嶺に近い集落の位置に嵌込まれているだけなのである。
もし、本当にこの小説に書かれているようなことが実在の村にもあったとしたら、……いや、あるとは思えない。
だから、これ以上の突っ込んで調べようという気はない。舞台に借りただけなのである。しかし、場所は確かにこの辺なのだから、余裕があれば実際に歩いて見たら面白いだろう、とは思う。
けれども、そんなことはしてもしなくても良いと思う。この小説の場合、してみても意味がないだろう。飽くまでも、本文に書いてあることから分かることを、特殊でない材料を使って確かめる。大体のことが分かれば良いのである。
そうは言っても少々気がかりであるので、念のため『'11-12 NTT東日本 ハローページ』の「50音別個人名」、だから青表紙の「企業名」じゃない緑表紙の方の『新潟県長岡版』(2011年12月発行・東日本電信電話株式会社・216頁)を見てきた。[収録地域]は「長岡市・小千谷市・見附市・三島郡」。この長岡市の「あ」の辺りを見ても、小千谷市の「あ」の辺りを見ても、「浅…」という姓はあっても「麻…」という姓の人は1人も出ていなかった。
まさかこの地域に実在する姓を使ったりはしていないだろうとは思っていたのだが、……もちろん最近は載せていない家も多いらしいのだけれども。
それから、黄色い表紙は『タウンページ』です。あれは「職業別」電話帳。関係ないけど。気になったので。
ここで気になったことを一つ、ついでに済ませて置く。冒頭部の18頁、2つめの段落、
麻生家は三百年の昔から今に連綿とつづいている、郷土でも指折りの古い家柄の家である。先祖は越前浅井家の郎党とかで、主家滅亡ののち亡命してこの地にかくれ、のち、故あって帰農したと同家の先祖書きにはしるされているけれども、……
とあるのだが、「浅井家」は近江北部を領した戦国大名で、「越前」を領したのは朝倉家である。ともに天正元年(1573)の秋に織田信長により滅ぼされている。ここはわざと混ぜたのではなく、平井氏が曖昧な記憶のまま書いてしまっただけなのだろうと思うが。
それはともかく、もう少々地理の記述について触れて置いても良い点もあるのだが、思い出したら後日やることにして、地理確認に使った資料についてメモして置く。
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・『新潟県都市地図(ニューエスト15)』(2007年3版4刷発行・定価2000円・昭文社)B5判並製本。
ニューエストは今は出ていないらしく、Amazon詳細ページには中古品の出品があるのみで、書影も出ていない。
ネット上にもGoogle地図やYahoo!地図、電子国土ポータル、Mapionなどの地図があって、それぞれ一長一短だが対照しながら見ればだいたい分かる。それでも私などにはやはり紙の地図の方が使いやすい*1。