瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

中島敦の文庫本(07)

 角川文庫について、もう少し書いて置くべきことがあると思うが、別のものを見てみた。

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集英社文庫

山月記・李陵 (集英社文庫)

山月記・李陵 (集英社文庫)

山月記・李陵』(1993年4月25日第1刷・1993年6月5日第2刷・定価369円・286頁)
 カバー表紙絵は、猫みたいに見える。ネコ科なんだけれども。
 カバー表紙折返しに作者の学生時代の顔写真に7行の略伝(縦組み)、カバー裏表紙右上に内容の説明文(横組み)12行、折返しに「青春必読の一冊/集英社文庫ヤング・スタンダード」として「地獄変芥川龍之介」から「遠野物語柳田国男」まで、「伊豆の踊子」「坊っちゃん」「こころ」「舞姫」など国語教科書の定番を中心に29冊が挙がる。本書も15番目に挙がっている(作者名50音順)。
 口絵は4頁(白黒、頁付なし)。扉(1頁)目次(3頁)そして「山月記」の中扉(5頁)まで頁付なし。
 6頁から本文、1頁16行、1行37字。収録作品は5〜16頁「山月記」17〜26頁「木乃伊」27〜39頁「文字禍」41〜52頁「名人伝」53〜102頁「弟子」103〜164頁「李陵」165〜207頁「斗南先生」の7作品。「古譚」のうちでは「狐憑」のみ収録されていない。
 208〜250頁「語注」で1頁20行、末尾に(編集部編)とある。
 新保祐司*1「解説 ――漢学的伝統のラスト・スパーク――」251〜270頁、林望(作家)「鑑賞 ――読む方法について」271〜277頁。「解説」と「鑑賞」は1頁17行、1行40字。
 278〜286頁「中島敦 年譜」も末尾に(編集部編)とある。上段(8cm)が年譜本文、下段(3.5cm)が日本史の重要事項及び、作者に関係する写真(1頁に1つ)とその解説。
 角川文庫と同じく参考書風の作りである。特に「鑑賞」は「ある教科書会社が出している『山月記』の「教師用指南書」の授業計画モデル」を(多少色を付けて)紹介して、「現代国語」の授業が「一定の方向に強制された「制度的」な読み方で押しつけられる結果」として、「それが退屈と同義語」になってしまっている、と批判している。そうかも知れないけれども、書き方が嫌味だと思う。それに教室で「ノンベンダラリと段落に切ったり、妙な分析なんかを加え」ながら読まされて初めて、内容が分かったような気になるような生徒では、そもそも林氏の主張する「まったく各自の自由」に読む、というところまで至らないと思う。最初からこんなの読もうと思わないんだから。じゃあどうすれば読むのかと言えば、やはり教科書に載っていて授業でやるから読むのだろう。林氏はエリートだし、20年前だし、当時はまだ、とにかく読ませれば良い、でも通ったのだろう。「教師用指南書」が良いとは思わないし、たぶんここに紹介されているような教室なんて20年前だって存在しなかったろうけど。
2013年9月26日追記】第7刷(1993年4月25日第1刷・2007年3月25日第7刷・定価438円・286頁)を見た。他の刷との比較が出来ないが、カバーのレイアウトは太宰治人間失格』の第29刷・第34刷・第36刷に同じで、カバー裏表紙折返しは一致。但し本体の扉や奥付は古い形式のまま。

*1:「祐」は示す偏。