瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

中島敦の文庫本(14)

新潮文庫1895(4)
 昭和55年(1980)の二十五刷について。
 昨年の3月、昭和53年(1978)に増刷された新潮文庫について、すなわち、2011年3月15日付「田中英光『オリムポスの果實』(04)」で昭和五十三年五月三十日三十九刷、2011年3月19日付「森鴎外『雁』の文庫本(4)」及び2011年3月20日付「森鴎外『雁』の文庫本(5)」で昭和五十三年十月三十日六十一刷について、記述していた。
 今、手許に『雁』六十一刷はなく『オリンポスの果実』三十九刷しかないが、ここで2年後の『李陵・山月記』二十五刷と体裁の異なる点を指摘して置くと、まず昭和53年の『雁』『オリンポスの果実』ではカバー装画が表紙だけでなく裏表紙まで連続していたのが、昭和55年の『李陵・山月記』は裏表紙には絵がない。
 「新潮文庫 日本の作品」という3段組で作者50音順の目録があるのは共通しているが、昭和53年の増刷ではこの目録の前に奥付があったのが、昭和55年の増刷ではこの目録の後、1頁の「新潮文庫最新刊」の裏、現在と同じく一番最後の頁にある。
 奥付の形式は同じで、違うところは昭和53年の増刷では「定価はカバーに表/示してあります。」となっていたのが昭和55年の増刷では「定価180円」となっている。
 こうして見ると、昭和53年と昭和55年の間に、カバー(裏表紙)や奥付の位置その他、新潮文庫の体裁の改変があったらしい。
 ところで、『李陵・山月記』二十五刷では「新潮文庫 日本の作品」は13頁ある。頁付はない。会津八一から野坂昭如まで。1頁めの3段め5行め「三婆 有吉佐和子」までは『オリンポスの果実』三十九刷に同じ。『オリンポスの果実』ではその次が「百人一首 安東次男」であるが、『李陵・山月記』は「複合汚染 有吉佐和子/芝桜(上下) 有吉佐和子」が挟まる。その次に「編笠十兵衛 池波正太郎」だけだったのが4冊加わって池波作品が5冊になっているなど、増補が加わって、『オリンポスの果実』では10頁めの最後にあった「風の中の子供 坪田譲治」が、『李陵・山月記』では12頁めの2段め2行めになっている。新たに加わった作品や作家を点検してみるのも面白いだろう。追加された作家は以下の5人で各1冊。「日本の書物 紀田順一郎」「ギリシア神話(上下) 呉茂一」「北海道の旅 更科源蔵」「愛の年代記 塩野七生」「戦争で死ねなかったお父さんのために つかこうへい」。
 本文の最後と目録の間に編集方針を示した「文字づかいについて」がある。これについては2011年3月20日付森鴎外『雁』の昭和五十三年十月三十日六十一刷と平成六年九月五日九十三刷とを比較してみたが、この『李陵・山月記』二十五刷掲載のものは、小異だがどちらとも一致していない。一度、改めて「文字づかいについて」全文を年代順に比較してみる必要がありそうだ。(以下続稿)