瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

終電車の幽霊(3)

 よく似た話は埼玉県北埼玉郡羽生町(現・羽生市)でも、「大東亜戦争」の末期に行われていた。昭和59年(1984)刊『羽生昔がたり』の2頁に載っている(第1話)。原本未見だが羽生市のHPの「『羽生昔がたり』*1に公開されている「終電車の怪*2。――東武鉄道館林行の終電車の最後尾の車両の座席に、利根川の土手の手前にある千手院という寺の脇にさしかかるといつの間にか美女が座っており、利根川の鉄橋を渡って茂林寺前駅の近くに来ると消えている、という評判で、車掌を2人に増員させた、という。型としては新美氏の記録したものに近いが、当時の羽生町では人間の幽霊ということにならず「むじな」の幽霊という噂になったというのは、「ムジナもん*3を市のキャラクターにしている土地柄というべきか。
 さて、新美氏がこの終電車の噂話に関連して書き添えている「幽霊電車」の童話の構想だが、これももちろん新美氏が思い付いたのではなくて、どこだかに幽霊電車の噂があって、それに、間違って乗ってしまったら、という設定を構えたのであろう。
 前回挙げた本で探してみるに、今野圓輔 編著『日本怪談集〈幽霊篇〉』第九章「タクシーに乗る幽霊」の概説部分232〜239頁「駕籠から人力車へ/幻の無人自動車/幽霊と交通機関」の「幽霊と交通機関」の節の冒頭(236頁)に、玉川電車の終電後に走る「ひとりの女性を乗せた幻の臨時便」の話を紹介している。これが松谷みよ子『偽汽車・船・自動車の笑いと怪談(現代民話考III)』第三章のうち「幽霊自動車・幽霊電車・幽霊自転車など」に再録されている(304頁)。この節には9話収録されているが幽霊電車はこの1話のみ、ちくま文庫版『現代民話考[3]偽汽車・船・自動車の笑いと怪談』でも、話の増補などはなくそのままになってる。玉川電車の話は大正期に遡るようだが、意外と報告例が少なかったようだ。
 なお、以前にも書いたけれども水木しげるが苦手なので私は見ていないが、『ゲゲゲの鬼太郎』にも「幽霊電車」が出て来て、幾度となくアニメ化されている。「妖怪&怪奇wiki特撮アニメ大百科事典」にある、「幽霊電車」のページに詳しい。新美氏が「幽霊電車」を扱ったらどのような展開になったか興味のあるところであるが、実現しなかった。

*1:2019年10月5日追記】投稿当初のリンク「文化・観光>羽生の文化>羽生昔がたり」が切れていたので貼り直した。

*2:2019年10月5日追記】投稿当初のリンク「終電車の怪」が切れていたので貼り直した。

*3:2019年10月5日追記】投稿当初のリンク「ムジナもん」が切れていたので貼り直した。