瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

中島敦の文庫本(17)

旺文社文庫(4)
 ここまで、改版の『愛と青春の名作集』を「上製本」と呼んで来たが、これは良い呼び方ではなかった。
 何故なら、文庫版の上製本旺文社文庫にはあるからである。
 そういえば、私の高校にも、この上製本旺文社文庫と、それから上製本新潮文庫があったと記憶している。
 出来ればもう一度、あの図書室に入り浸りたいと思っているのだが、県立高校だからもう知った教職員もいないはずだ。だから、母校に旧師を訪ねるなんてことも出来ない。災害などはあったがまだ当時の建物が残っているようだが*1、建替えなどということになったら、それを機会に古い、今や誰も手にしないような本はがさっと捨てられてしまうことだろう。それまでになんとかならないか。思い切って図書購入費を寄贈して、瑣末亭文庫(仮)でも作って、そうすれば入り込めるだろう。さらに毎年少しずつ上乗せもして行けば、毎年視察と称して入り込める、……かも知れないが、生憎近くに住んでいないし、それこそ入り浸っていたので手にした本を通覧するだけでも二三日で済むようなものでもないし。――いや、それじゃ、図書館には出来るだけ古い本を保存して欲しいと思っているのに、新しい本を寄贈して古い本の処分を促進させることになったら本末転倒である。そもそも、まとまったお金もない。いや、――なくはないがそこまで思い切れない*2
 とにかく、文庫版上製本の存在を知っていながら呼称に混乱を来した訳で、反省するしかない。が、旺文社文庫ではこれを〔特製版〕と呼んでいるので、私もこれに倣うことにする。
 今、私の手許には特製版(200円・昭和43年6月1日発行)と特製版(1984年2月1日発行)がある*3。どちらも並製本の初刊時(昭和42年1月10日初版発行)を示していない。仮に昭和43年版と昭和59年版とする。まだあるかも知れないので番号は振らないで置く。
 装幀は並製本と同じである。昭和43年版は当時出ていた並製本(私の手許にあるのは昭和44年5月20日重版発行)と同じく表紙の地色が淡い緑色であるのに対して、昭和59年版は黄緑色である。また昭和43年版は丸背だが、昭和59年版は角背になっている。ともに並製本にはない、スピン(紐栞)が付いている。
 他に相違点を挙げると、表紙のヒエログリフをあしらった枠の下部、ヘレニズム期の君主(?)の横顔の貨幣が緑色で印刷されているが、特製版ではこの貨幣の上に横組み緑色の楷書体で〔特 製 版〕とある。
 背表紙の上部、標題と著者名は同じだが、下部、並製本では「旺 文 社」と隷書体で、その下に「 A41」とあったのが、特製版の下部には「特製版」と楷書体で入れ、その下に少し空けて表紙にあった貨幣、その下に隷書体旺文社」と入る。昭和59年版では緑で印刷されているが、昭和43年版は貨幣を金属(銀色)で作って貼り付けている(ようだがこの上に分類のための色シールが貼られているために顔の部分が隠れて見えない)。見返しは表紙よりも淡い色で横縞の透ける紙で、遊び紙の裏にはこの横縞が浮かんで来ない。これは昭和59年版も同じ。以下、本体は同じだが、保存環境の違いもあるのかも知れないが、昭和43年版の本文用紙が白さを保持しているのに比して、昭和59年版は茶ばんでいる。(以下続稿)

*1:Google EarthYahoo! 地図の航空写真による。

*2:今持っている本なら贈呈して構わないが、要らないだろうし。やはり新しい本の購入費が良いのだろう。いずれにせよ、ただの妄想である。

*3:前者は奥付に価格が記載されているが、後者にはない。