瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

山下武『20世紀日本怪異文学誌』(07)

 ブログを始める前に書いていたものを上げたりした時期もあったし、書溜をしていたこともあった。が、今はその余裕がない。山下氏の本については、メモを挙げていくだけだから何とかなると思っていたのだが、昨日は帰宅したのが23時40分頃で、それから慌てて書いて、23時59分に投稿したはずが「00:00」という表示になったので、詰まらないことながら「已んぬる哉」と思ったのだが、日付を見るに「5月2日」付だった。謎である。けれども、記事が表示された時点でまだ23時59分だったことは確かなので、何だか釈然としないながらも、まぁ、そうかな、と思っている。……何が「そうかな」なんだか自分でも分からないが*1

  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *

・235頁10行め「……。嫉妬、陰謀、復讐、侮辱、猜疑、竊盗心、その他のあらゆる悪が横行したのだ。/」とある。山下氏は引用文の仮名遣いは原文のままにしているようだが、漢字はそのままという訳ではなさそうだ。だとすれば「竊盗心」は「窃盗心」で良い。
・235頁12行め「陥ち入った」は「陥った」。
・236頁5〜7行め、

「木馬の馭者」(大正12年5月)では狂った主人公が母親を刺し殺す。但し“あめんちあ続篇”と表/題の下にあるものの、ストーリーに何の脈絡もなく、「あめんちあ」の影佐が当の主人公なのかどう/かも定かではない。……

とあるが、正篇の方は231頁7行めに「「あめんちあ」(大正14年5月「改造」)」とあった。続篇の方に正篇発表の2年前の年記が入っているのだが、富ノ澤麟太郎(1899.3.25〜1925.2.24)の命日からして没後に、関係者が「改造」に持ち込んだもので、正篇の執筆は「木馬の馭者」より前だったのだろう。「木馬の馭者」より前に同人誌に発表されていたのかも知れない。同じことならそっちの時期を示して欲しい。或いは両方とも生前未発表で、片や脱稿の時期を、片や没後発表の時期を示したものか。富ノ澤氏については、「747 seconds」というサイトに書誌・参考文献がまとめられている。ところで、230頁6行め「「夢と真実」(昭和3年4月)」は没後に私家版として刊行されたもので、国会図書館に行けば近代デジタルライブラリーの館内限定公開で読むことが出来る。山下氏も富ノ澤氏について書き始めた冒頭229頁2行めに「富ノ澤麟太郎(一八九九〜一九二五)」と生没年を示していたのだから、この昭和3年(1928)の『夢と真実』刊行の事情について、少しでも説明があると有難かった。没後だから執筆時期ではあり得ないし「あめんちあ」のように掲載誌名が入っている訳でもなく、……せめて『 』で括ってあれば没後刊行の単行本との見当が付くのだが。
 さて、富ノ澤麟太郎の著作権は切れているが、青空文庫で読むことが出来るのは「あめんちあ」のみである。その図書カードには、以下のようにある(5月3日現在)。

作家データ
分類: 著者
作家名: 富ノ沢 麟太郎
作家名読み: とみのさわ りんたろう
ローマ字表記: Tominosawa, Rintaro
生年: 1899-03-25
没年: 1925-02-24

底本データ
底本: 書物の王国11 分身
出版社: 国書刊行会
初版発行日: 1999(平成11)年1月22日
入力に使用: 1999(平成11)年1月22日初版第1刷
校正に使用: 1999(平成11)年1月22日初版第1刷

                                                                                                                                                            • -

底本の親本: 改造
出版社: 改造社
初版発行日: 1911(明治44)年5月


 本文の最後にも同様のデータが示されている。念のため、挙げて置く。

底本:「書物の王国11 分身」国書刊行会
  1999(平成11)年1月22日初版第1刷発行
底本の親本:「改造」改造社
  1911(明治44)年5月
初出:「改造」改造社
  1911(明治44)年5月

 もちろん、これはおかしいので、12歳の少年が小説を「改造」に発表したことになってしまう。そもそも「改造」は大正8年(1919)4月創刊だから明治44年(1911)5月には存在しない。青空文庫工作員が初出誌の確認までするとは思えないから(それでも「作家データ」と「底本データ」を並べているのだから気が付いて欲しいところだが)、国書刊行会の本が間違っていたのだろう。

分身 (書物の王国)

分身 (書物の王国)

8月10日追記】『書物の王国⑪ 分身』一九九九年一月二二日初版第一刷発行・定価2400円・国書刊行会・254頁・菊判上製本。『書物の王国』編集委員会東雅夫須永朝彦国書刊行会編集部で、本巻の責任編物は東氏。251〜253頁「解題」は東雅夫「影に怯えて」である。ここまで2段組。254頁「収録著者・作品略伝」から3段組で2段めから3段めに「富ノ沢麟太郎(一八九九―一九二五)小説/家。小説「セレナアド」「流星」等。*2」とある。次は白紙で、その裏「表記・テクストについて」(頁付なし)に「あめんちあ 「改造」1911年5月」とある。

*1:養老町の星 幸ちゃん」が北野誠にのど自慢出演時に鐘2つだった感想を聞かれたときの答えだったと思い出した。

*2:ルビ「とみのさわりんたろう」。