瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

NHKスペシャル『幻の大戦果』(4)

 今日返却期限の図書館の本があったのだが、勤め先からは少し遠いので寄らずに帰って来た。良い歳なのだから、いい加減、2011年9月22日付に書いて置いた、昨年9月21日の台風15号の強風下を歩いた経験に学ばないといけない。その代わり、早く帰って来たので、ここのところ寄ろう寄ろうと思いつつその暇のなかった地元の内科で、癌検診の試料採取キットをもらって来た。

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堀栄三『大本営参謀の情報戦記――情報なき国家の悲劇――』一九八九年九月十五日第一刷・定価1359円・文藝春秋・285頁・四六判。

堀栄三『大本営参謀の情報戦記――情報なき国家の悲劇(文春文庫)』1996年5月10日第1刷・定価447円・文藝春秋・348頁。
・2008年5月15日第12刷 定価514円*1
・2013年1月15日第19刷 定価543円*2
・2016年9月5日第24刷 定価560円*3
 これが、NHKスペシャルに言う(書籍版181頁)堀氏の手記が「一部加筆修正されて出版されてはいる」ものである。6月15日付(1)に貼ったNHKスペシャルHPに【問い合わせメモ】として、参考資料について紹介しているうちに、以下の記述がある。

●堀栄三少佐の手記
大本営陸軍部・情報参謀、堀栄三少佐が、終戦直後に記した手記「比島の悲劇」。
当初は出版を予定していたが長らく未発表のままだった原稿。今回初めて撮影された。
出版はされていません。個人蔵のため非公開。 


 放送でも『比島の悲劇』という標題は撮影されていた。ところが『大本営参謀の情報戦記』を見るに、単行本284〜285頁文庫版340〜342頁「あとがき」に、堀氏は恐らく同じ手記について、以下のように述べているのである。単行本は1頁20行、1行44字。文庫版は1頁18行、1行39字。「あとがき」の2〜3段落で、単行本・文庫版ともに「あとがき」の1頁めにある。

 戦争が終って郷里に引揚げた昭和二十年秋、堀は「悲劇の山下兵団」と題して、某出版社向けに四百枚ほどを書き綴った。傍で見ていた父が、「負けた戦さを得意になって書いて銭をもらうな!」と叱った。堀が参加した比島決戦だけでも、四十七万七千名が戦没している。その人たちは書くことも、喋ることも、訴えることも出来ないのだ。明治男の父の言葉には、いつも言外に大事な意味があった。
 それ以来、堀は戦争についてはいっさい貝になっていた。……*4


 肝心の題が違う。
 現存するのは『比島の悲劇』という原稿で、これは原稿用紙に書かれ、書籍版183頁の写真でも判読出来るが放送では「……協會」という封筒の上に置いて撮影されており、これはもちろんこの封筒に収められていたということだろう。この何とか協会が「某出版社」なのだろうと思うし(違うかも知れないが)、原稿用紙もかなり厚い束で400枚くらいはありそうである。この「あとがき」に拠れば、堀栄三(1913.10.16〜1995.6.5)は終戦直後に手記をまとめたものの養父の堀丈夫陸軍中将(1881.7.2〜1952.4.4)に叱責されて以来、筆を執ることもなかったようだから、この『大本営参謀の情報戦記』執筆以前の古い手記が、2つあるとは思えない。(以下続稿)

*1:2015年8月7日追加。

*2:2016年2月17日追加。

*3:2023年3月23日追加。

*4:ルビ「ぜに」。