瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

太宰治『人間失格』の文庫本(08)

・角川文庫(8)
 三日前からの角川文庫14732についての続き。
 最後に2段組の入江才八郎編「年譜」。185頁から始まるのは【改版初版】【改版五版】【改版十四版】ともに同じだが、【改版初版】【改版五版】が196頁までであるのに対し、【改版十四版】は195頁までしかない。1段19行、1行19字(見出し行を除く)は同じだが、【改版初版】【改版五版】では最初の185頁の「年譜」を2段抜きで5行分使い、またそれぞれの年の見出し行の前後も1行づつ空けていたのを、【改版十四版】ではまず冒頭「年譜」を3行分に詰め、年の見出し行の後の空白を詰め、その他改段箇所に出来た空白を詰めるなどして1頁減らすことに成功している訳である。
 改版により全体に振仮名が増えているが、「年譜」でも同様。【改版十四版】で改めたところもある。角川文庫28=角川文庫7501から改変したところを1頁めについてざっと比較してみよう。
「明治四二年(一九〇九)」→【改版十四版】「明治四十二年(一九〇九)」条
・「〈源」(ヤマゲン)の屋号」→【改版初版】「〈源(ルビ「やまげん」)の屋号」
・「母はたね」→【改版初版】「母はタ子(ルビ「たね」)」
・「子守のたけ(「たけ」に傍点)→【改版初版】「子守のタケ」
「大正一二年(一九二三) 一四歳」→【改版十四版】「大正十二年(一九二三) 十四歳」条
・「父死去。享年五三歳。」→【改版十四版】「父死去。享年五十二歳。」
 父の享年を数えから満年齢に変えたのは、この「年譜」が太宰氏の年齢を満年齢で勘定しているから合っているとは言える。
 奥付の前、角川文庫7501は白紙だったが、【改版初版】【改版五版】では以下のようにある。

本書は『太宰治全集』(筑摩書房)を底本とし、旧字体新字体に、/旧仮名づかいを新仮名づかいに改めました。      〈編集部)


 この頁の表は白紙。【改版十四版】では「年譜」の頁を詰めることでこの断り書を195頁の裏に配している。また文章もさらに1段落4行、「不適切と思われる表現」について追加して最後に(編集部)とする。
 奥付は同じ、【改版初版】で「製本所―BBC」とあったのが【改版五版】【改版十四版】は「本間製本」に変わっているのみ。
 奥付の裏、角川源義「角川文庫発刊に際して」。最後に1頁に7点掲載の目録(頁付なし)「角川文庫ベストセラー」があるのは同じだが、【改版初版】と【改版五版】は8頁あって全く同内容だったが、【改版十四版】は10頁で、目立っていた手塚治虫(11点)灰谷健次郎(10点)がなくなるなど、かなりの出入りがある。
 一応これで角川文庫『人間失格』については一通り確認した。今後、より早い版や最新の梅氏のカバー*1を手にする折があれば、また取り上げたいと思う。

*1:2013年3月18日追記】梅氏のカバーは現在書店に出ているものであるが、これは不注意で「最新」ではなかった。梅氏のカバーが登場したのは生田氏のカバーより前、すなわち一時期生田氏の写真になっただけなのである。梅氏のカバーについては2013年3月18日付(17)に記述した。