・岩波文庫31-075-2(2)
①はこれで終わりで、1頁空白があって、奥付。②は327〜352頁に唐亜明*1「横光利一の『上海』を読む」が追加されている。次に〔編集付記〕があり3項目、1項めに底本についての説明がある。
一、底本には、単行本『上海』(書物展望社、昭和十年刊)の決定版テキスト(本書五頁「序」参照)/
を使用した。振り仮名については、『上海』初版(改造社、昭和七年刊)を参照し、補った。
この底本については、小田切氏の「解説」に、既に以下のような詳しい記述があった。引用は①(240頁4〜12行め)による。本字で現代仮名遣い、但し本字は完全に再現出来ないので一部新字で代用している。②314頁8行め〜315頁2行め。
……。上海から歸って半年ほどして、『風呂と銀行』という題名で第一囘分が/『改造』に發表され、以後同誌に分載された。第一囘分を作者は昭和三年の一〇月號だったと述/べているが、それは一〇月號という意味ではなく一〇月中に發行のもの、つまり一一月號という/意味であった。第二囘は翌四年三月號に『足と正義』という題で、第三囘は同六月號に『掃溜の/思想』という題でそれぞれ發表され、殘りの部分の原稿もその一二月には完成していた。昭和七/年七月、改造社から『上海』という題の單行本として刊行された。このときにもかなり作者によ/る訂正が行われたが、さらに昭和一〇年三月に書物展望社から再刊するに當っては全面的に修正/を行い、これを「決定版」とした。戰後刊行の横光全集(改造社)本をはじめとして現在流布し/ているのはこの決定版であって、岩波文庫の底本もこれである。……*2
さらに小田切氏は「雜誌に出た時のや昭和七年本」との違いについて述べている。作者が「決定版」とした、というのは①には収録していない昭和10年(1935)版の「序」(②5頁)に、「昭和七年」版の「全編を改竄し」た「この書をもって上海の決定版としたい」とあるのに拠る。
2項めは「差別的」な表現について、3項めは「一、左記の要領に従って表記がえをおこなった。」で左に「岩波文庫(緑帯)の表記について」を載せ、最後に(岩波文庫編集部)。裏は白紙で次に奥付。
奥付は第3刷と改版第1刷と殆ど同じ。異同は発行日・発行者の他「電話」の「営業部」→「販売部」、「印刷・製本 法令印刷」→「印刷 製本・法令印刷」、ISBNコードが10桁→13桁。裏は岩波茂雄「読書子に寄す」。
第3刷、目録4頁「'02.1.現在在庫 B-1(〜4)」、最後に「岩波文庫の最新刊」の「2002.1.」と「2002.2.」。改版第1刷は目録10頁「2006.11.現在在庫 B-1(〜5、E-1〜2、F-1〜3)」、最後に「岩波文庫の最新刊」の「2008.1.」と「2008.2.」。