瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

夏目漱石『こゝろ』の文庫本(5)

・角川文庫(5)
 11月3日付(4)の続きで、角川文庫13391【改版十八版】と比較しつつ【改版二十七版】の手拭い柄カバーについて。この、てぬぐい専門店「かまわぬ」コラボレーションによる和柄スペシャルカバーについては、10月8日付「壺井栄『二十四の瞳』の文庫本(4)」に、その基本的なパターンを記述して置いた。

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 黒地で柄は黄ばんだ白。上部にカバー裏表紙折返しから裏表紙・背表紙・表紙の右上まで、長方形の白紙を載せたようになっていて、その右端、裏表紙折返しの右上には明朝体縦組みで「角川文庫※夏目漱石の本」※のところには丸い葉が3つ付いた梢のマーク、1行分空けて11点、これは改版十八版にある11点に同じだが9番め「こゝろ」が「こころ」に変わっている。裏表紙の右上、明朝体縦組み8行(1行24字)の紹介文があるが、これは改版十八版のカバーの同じ位置にあったゴシック体横組み14行(1行14字)の紹介文とほぼ同文、6〜7行め「「あなただけに私の過去/を書きたいのです…。」」→3〜4行め「「あ/なただけに私の過去を書きたいのです…」。」と句点の位置が変わっている。左上のバーコード2つ、ISBNコード・Cコード・定価は一致*1。背表紙は「な 1-10 夏目漱石   こころ」とやはり明朝体。角川文庫13391の標題は本体はもちろんカバーも「こゝろ」だったのが、この手拭い柄カバーのみ全て「こころ」になっている。そして表紙の右上が白の長方形の左端で、製本や裁断によって大きさや位置にズレが生じると思うが、私の見たものについて参考までに記して置くと、縦が8.0cm、その上、天から0.4cmは手拭い柄、表紙に入っている分は横3.2cm。右上に著者名、右下に小さく「角川文庫」、その左に大きく標題「こころ」が、やはり明朝体で入る。
 背表紙の下部、手拭い柄の上に明朝体で小さく「角川文庫」とあるが柄と紛れて読みにくい。裏表紙折返しの下部、1.2×5.5cmの長方形に白くして「装画 てぬぐい 和傘(株式会社かまわぬ)/   ©KAMAWANU CO.,LTD.All Right Reserved/装丁 大武尚貴+鈴木久美(角川書店装丁室)」とある。また、表紙折返しにも8.7×5.9cm白くして、改版十八版の同じ位置にあった四角の顔写真と同じ写真を同じ縮尺のまま丸く切って右上に示し(従って四角に比して肩が入らず四角で切れていた顎の影が全部入っている)、その左に横組みで「夏目漱石Soselo Natsume 」として、その下に横組み12行(1行18字)の紹介文、これは改版十八版のゴシック体横組み24行(1行17字)の紹介文を一部省略したものである。以下異同を挙げて置く。まず冒頭の「本名、夏目金之助。」を省略。2行め「現在の新宿区喜久井町に生まれる。」→1行め「現在の新宿区生まれ。」。続く2〜8行め「明/治17(1884)年、大学予備門予科に入学。/明治19(1886)年に腹膜炎を患い進級試/験を受けられずに落第したほかは首席/で学業に励んだ。在学中に正岡子規と/出会い、交流を続けたことが、俳諧的と/いわれる作風や人生観に影響した。」は省略されている。11行め『坊っちゃん』の前、17行め「俳句雑誌」の前に打たれている読点が、4行め・7行めにはない。13〜16行め「イギリス留学へ出発。神経/衰弱に苦しみ明治36(1903)年、帰国。/一高および東大、明治大学の講師を兼/任した。」→6行め「イギリス留学出発。」のみ。18〜19行め「/風刺とユーモアがあふれる文体が新鮮/に世に迎えられる。」は省略。21行め『こゝろ』→10行め『こころ』。22行め「「則天去私」の精神を追求して/描いた『明暗』」→10行め「『明暗』」のみ。
 折返しの幅は私の手許にある改版十八版は表紙・裏表紙ともに7.5cm、改版二十七版は表紙7.5cm・裏表紙7.4cm。

*1:2017年7月19日追記】今手許にある改版二十九版のカバーには定価の下に「ADOKAWA」とある。但し奥付は「発行所―株式会社角川書店」「発売元―株式会社角川グループホールディングス」であって、カバーのみ「KADOKAWA」発足後のものに掛け替えられている。