瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

芥川龍之介『羅生門』の文庫本(5)

・角川文庫7499『羅生門・鼻・芋粥』(2)
 【再版】のカバー表紙は天野氏ではない。恐らく【初版】と同じものであろう。上部に横書きで、下手ウマな手書き文字で「芥川龍之介」とある。全ての字の最後の一画が撥ねていることが特徴である。その下、中央やや上に群青色の背景()に、左を向いた鳥が描かれるが、輪郭と脚は赤いクレヨンで黄色の縁取り、眼の輪郭は黒で人間の眼のような形で白目の部分があり、瞳は赤。翼の部分に縹色と肌色の縞模様。背景の右上部に少し水色、また背景の上辺は黄色、下辺は赤。
 このイラストの左に縦組みで「羅生門・鼻・芋粥」とありその左・上寄りにゴシック体で「〈改編〉」とある。下部中央に横組みゴシック体で「角川文庫」とあってその下に黄色の横線に赤のギザギザが重なる。イラストはクレヨンで描いているように見える。

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 それから今日、天野氏のカバーの別の版を借りて来た。
【十六版】平成元年四月十日初版発行・平成六年七月十日十六版発行・定価301円・213頁
 続いて、【再版】【十二版】【十七版】に【十六版】を加えて、カバーの他の部分を比較して見よう。尤も【十六版】のカバーは【十七版】と同一で、これを見たことで【十七版】の背表紙の橙色が褪色していることに気付いたのであるが。
 背表紙は【再版】と【十二版】は縹色地で、最上部に「あ|2-6」とあるのは一致、その下【再版】には「改編羅生門・鼻・芋粥」とあるが【十二版】には「改編」の文字がなくなっている。また標題の太い明朝体の文字も十二版の方が若干大きい。それは中央やや下にある同じ字体でやや小さい著者名も同様である。最下部にゴシック体で「角川文庫●270」●の中に白抜きゴシック体で「P」*1。【十六版】【十七版】は最上部「CLあ|2-6」その下に教科書体で標題、中央やや下、【再版】【十二版】と同じ高さに著者名があるがゴシック体になっている。そのすぐ下に「|2-6 310」下すぐに橙色の帯状になって白抜きゴシック体で「角川文庫クラシックス」とある*2
 裏表紙、【再版】は上部にISBNコード、Cコード「P270E 定価270円」が1行に並ぶ、定価の下に小さく「(本体262円)」とあって、後は余白になっている。【十二版】【十六版】【十七版】は左上にバーコード2つ、2つめの下4桁が「2707」から「3100」に変わっている。【十二版】は右上は1行めにISBNコード、2行めにCコード以下、その定価の下に本体価格が小さく入るのは【再版】に同じ。【十六版】【十七版】も同じレイアウトだが2行め、Cコードに「P310E 定価310円」と変わっていて定価の下に「(本体301円)」とある。【十二版】【十六版】【十七版】は中央に縦組みゴシック体10行(1行14字)、5行づつ2段落の紹介文があるが、これは【再版】の表紙折返しにあったものと同文で、ルビも一致する。【再版】のものは明朝体横組みで「<改編>羅生門・鼻・芋粥」と題し*3、9行(1行16字)で2段落(5行と4行)、1行めが1字下げになっているが【十二版】【十六版】【十七版】は1字下げにしていない。2段落めは二重鍵括弧から始まるのでどちらも1字下げにしていない*4
 表紙折返し、【再版】の残りの部分・下部には「野性時代」の広告、最下部右寄りに「カバー 黒田征太郎K₂」とある。これが【十二版】【十六版】【十七版】では上部に顔写真があってその下に縦組みで「芥川龍之介(あくたがわ りゅうのすけ)」と題して、以下10行(1行17字)の紹介文がある。写真は【改版】後のもの(角川文庫14718)と同じ(範囲)だが大きい。
 紹介文については【改版初版】のものと比較しつつ見て置く。1行め「東京都生まれ。実母が発狂したために/」→「都」を抜く、実母の記述なし。2〜3行め「芥川家へ養子に出される。大正十四年、/東大英文科卒。」→「幼くして母方の伯父・」と芥川家の説明が加わる。東大卒業が大正14年(1925)では自殺の2年前まで学生だったことになってしまう。かつ、ここだけ年号がある。3〜7行め「自然主義がなお主流の/大正末期文壇にあって、「鼻」や「芋粥」/など、淡々としながらもどこかおもし/ろみのある作風は、新しい流派の先駆/となった。」→「末期」を抜く、また作風の辺りはかなり違えている。7〜10行め「晩年は宗教に関心をもちつ/つも、服毒自殺。「大道寺信輔の半生」/や、「或阿呆の一生」など、自己否定的/な自伝体小説を残している。」→「宗教」のことには触れない。「自伝的小説」についての一文もない。
 最下部右寄りに横組みで「カバー 天野喜孝」とある。
 裏表紙折返し、横組みで【再版】と【十二版】上部にゴシック体で「角川文庫芥川龍之介作品集」とあるが【十六版】【十七刷】は「角川文庫クラシックス芥川龍之介作品集」と変わっている。1行分の空白があって以下、【再版】は「<改編>羅生門・鼻・芋粥/偸盗・戯作三昧<改編>蜘蛛の糸地獄変/舞踏会・蜜柑/杜子春南京の基督/藪の中・将軍/トロッコ・一塊の土/少年・大道寺信輔の半生/河童・玄鶴山房/或阿呆の一生侏儒の言葉」の10点、【十二版】【十六版】【十七版】は「舞踏会・蜜柑/杜子春南京の基督/藪の中・将軍/トロッコ・一塊の土/或阿呆の一生侏儒の言葉羅生門・鼻・芋粥蜘蛛の糸地獄変」の7点*5、右下隅にKBマーク、最下部左寄りに小さく【再版】【十二版】に「カバー 暁美術印刷」、【十六版】【十七版】に「カバー 暁印刷」。(以下続稿)

*1:2013年2月25日追記】十二版の定価301円のカバーでは、地色は薄緑色で、最下部の数字が「310」になっている。

*2:2013年2月15日追記】別の図書館で見た十七版は本体・カバーとも異同なしだが、背表紙で使われている色が橙色ではなくかすれたような朱色になっていた。褪色の度合いの差か。

*3:ルビ「らしょうもん いもがゆ」。

*4:2013年2月25日追記】十二版の定価301円カバーでは、カバー裏表紙は十七版に一致している。

*5:2013年2月16日追記】最後の「蜘蛛の糸地獄変」を何故か「杜子春南京の基督」と誤って(しかも重複して)いたのを修正した。