瑣事加減

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柳田國男『日本の昔話』の文庫本(11)

・角川文庫553(8)
 21頁「日本の昔話分布図」によると「増補分」は44箇所、⑧が2箇所あるので43題。それから「73」は、○数字すなわち増補分と○のないものと2箇所あるが、12月17日付(4)で注意して置いたように、○のない「73」は「78」の誤りである。以下に増補分を列挙して置く。
「七 片足脚絆」(広島県佐伯郡大柿町。「〈芸備/叢書〉昔話の研究」広島師範郷土研究室編)
「八 雲雀の金貸し」(石川県河北郡高松町。「加能民俗」十五号)(鹿児島県肝属郡。「大隅肝属郡方言集」野村伝四)
「九 かせかけみみず」(大分県大野郡上井田村。「直入郡昔話集」鈴木清美)
「二〇 金の斧銀の斧」(大分県直入郡久住町。「直入郡昔話集」鈴木清美)
「二三 蛇の息子」(山梨県西八代郡九一色村。「続甲斐昔話集」土橋里木)
「二八 人影花」(鹿児島県大島郡喜界島。「喜界島昔話集」岩倉市郎
「三〇 山梨の実」(岩手県一ノ関市。菅原多喜子採集)
「三一 三枚のお札」(秋田県鹿角郡宮川村〔現鹿角市〕。「昔話研究」一ノ二)
「三二 古箕にふるしき、古太鼓」(新潟県佐渡郡畑野村。丸山久子採集)
「三六 たのきゅう」(高知県高岡郡東津野村。「土佐昔話集」桂井和雄)
「三七 化けくらべ」(福島県平市。「磐城昔話集」岩崎敏夫)
「三八 猫と狩人」(山梨県西八代郡九一色村。「甲斐昔話集」土橋里木)
「四〇 味噌買橋」(岐阜県大野郡高山町〔現高山市〕。「続飛騨採訪日記」沢田四郎作) 
「四一 夢を見た息子」(秋田県仙北郡荒川村水沢〔現協和町〕。「秋田郡邑魚譚」武藤鉄城)
「四二 寝太郎三助」(広島県高田郡。「安芸国昔話集」磯貝勇)
「四四 藁しび長者」(長崎県壱岐郡志原村〔現郷ノ浦町〕。「壱岐島昔話集」山口麻太郎)
「四六 金の椿」(福井県。「福井県郷土誌」第二輯民間伝承篇)
「四九 竹の子童子」(熊本県球磨郡。「昔話研究」一ノ八)
「五二 姥皮」(岩手県二戸郡福岡町。佐藤良裕採集)
「五三 絵姿女房」(鹿児島県奄美大島名瀬〔現名瀬市〕。「昔話研究」二ノ七)
「五五 寄木の神様」(鹿児島県奄美大島。長田須磨子採集)
「五八 蛙の女房」(新潟県佐渡郡畑野村。丸山久子採集)
「五九 蛇の玉」(福島県平市。「磐城昔話集」岩崎敏夫)
「六二 ものいう蟇」(熊本県天草郡。「郷土研究」五ノ四)
「六四 銭の化物」(鳥取県日野郡江尾村〔現江府町〕。池田弘子採集)
「六五 見るなの座敷」(青森県三戸郡五戸町。「てっきり姉様」能田多代子)
「六六 鼠の浄土」(福岡県企救郡。稿本「福岡県昔話集」)
「六七 かくれ里」(鹿児島県大島郡喜界島。「喜界島昔話集」岩倉市郎
「六九 風の神と子供」(新潟県古志郡山古志村。「とんと昔があったげど」第一集 水沢謙一)
「七二 鳥呑爺」(長野県。「信濃昔話集」牧内武司)
「七三 どんぐりを嚙んだ音」(埼玉県川越市。「川越地方昔話集」鈴木棠三
「七四 白餅地蔵」(秋田県仙北郡角館町。「旅と伝説」一四ノ五)
「七五 狼の眉毛」(奈良県吉野郡大塔村。「吉野西奥民俗採訪録」宮本常一
「七七 木仏長者」(岩手県上閉伊郡遠野〔現遠野市〕。「老媼夜譚」佐々木喜善
「八〇 山の神と子供」(鹿児島県大島郡沖永良部島。「沖永良部昔話集」岩倉市郎
「八一 三人兄弟の出世」(鹿児島県薩摩郡甑島。「甑島昔話集*1岩倉市郎
「八二 槍を持った星」(香川県仲多度郡佐柳島。「讃岐佐柳島・志々島昔話集」武田明)
「八四 餅の木」(長崎県下県郡仁位村〔現豊玉町〕。「くったんじじいの話」鈴木棠三
「八九 鼠経」(熊本県葦北郡水俣町〔現水俣市〕。「昔話研究」一ノ七)
「九〇 蛙の人まね」(岩手県二戸郡爾薩体村二佐平〔現二戸市〕。「二戸の昔話」菊池勇)
「九一 そら豆の黒いすじ」(静岡県浜名郡芳川町〔現浜松市〕。「静岡県伝説昔話集」)
「九二 百足の使い」(長崎県西彼杵郡伊王島。「伊王島郷土史」松尾謙治)
「九七 木のまた手紙と黒手紙」(新潟県古志郡山古志村。「とんと昔があったげど」第一集 水沢謙一)
 四四は12月27日付(10)新潮文庫版の47「藁しべ長者」の、五九は62「盲の水の神」の差替え。
 二三・三八の「九一色村」は明治22年(1889)以来、上九一色村下九一色村であり、下九一色村は改訂版刊行前の昭和29年(1954)11月3日に消滅しており、土橋里木(1905〜1998)が上九一色村古関の人であるところからしてもこれは「上九一色村」であろう。また四三「磯貝勇」となっているが礒貝勇(1905.1.10〜1978.4.6)である。
 挿絵がある話が3つ、註もやはり3話に附されている。
 挿絵には画家の名前はなくサインも見当たらない。一(23頁)二七(57頁)七八(151頁)。
 註は一回り小さな活字で1行め1字下げ、2行め以降は2字下げ、1行41字。二三(51頁)に「 註 この話の話者が、越中の薬売りから聞いた話だという。」と断っているのは話の舞台が「富山の町」だからである。四〇は長文で、2段落13行、3行の1段め(79頁)は『昔話覚書』にこの話についての「一文」を収めていること、10行の2段め(80頁)は味噌買橋の名称の由来について、沢田四郎作「味噌買橋後聞」(「民間伝承」四ノ七)によって説明している。五五(111頁)は2行で方言と俗信について。
 「あとがき」の内容は、収録されている話について気が付いたこと若干とともに、後日補う予定である。そして、来月刊の新版と対照して見たい。(以下続稿)

*1:ルビ「こしき」。