・角川文庫45『羅生門・鼻・芋粥』(2)
昨日の続きで、角川文庫45【改版四十三版】(314頁)・【再版】【十七版】(213頁)・角川文庫14718(251頁)の本体を比較してみる。
1頁(頁付なし)扉のレイアウトは同じ、子持枠の中、横組みで上部に標題があるが角川文庫7499【再版】にのみ、標題の上に小さく「改編」とある。標題の下に小さく著者名、下部に左向きの鳳凰、角川文庫45【改版四十三版】・角川文庫7499は羽を銜えて翼・脚を広げているが、角川文庫14718は脚を揃えている。
2頁(頁付なし)角川文庫45【改版四十三版】にのみ、左下に縦組みで「本書は現代表記法により、原文を新字・新かなづかいに/したほか、漢字の一部をひらがなに改めた(編集部) 」とある。
次に「目次」、角川文庫45【改版四十三版】3〜5頁(1頁に16行)、角川文庫7499は3〜4頁(1頁に17行くらい)、角川文庫14718は3頁(頁付なし)は目次の扉で「羅生門・鼻・芋粥 目 次」とあり、4〜5頁に1頁12行でゆったりと組んでいる。この目次を比較するに、角川文庫7499と角川文庫14718は一致している。
巻頭の「老年」を見るに、角川文庫45【改版四十三版】7〜12頁と、角川文庫7499の5〜10頁は一致している。すなわち両者とも1頁18行、1行42字である。角川文庫14718は7〜13頁、1頁17行・1行37字。これも含めて、一覧表にして見る。頁の次の〔 〕には注釈の数を示す*1。
作品名 | 改版四十三版 | 角川文庫7499 | 角川文庫14718 |
---|---|---|---|
老 年 | 7〜12頁〔8〕 | = 5〜10頁〔8〕 | 7〜13頁〔25〕 |
青年と死 | 13〜22頁〔4〕 | × | × |
ひょっとこ | 23〜32頁〔8〕 | = 11〜20頁〔8〕 | 14〜24頁〔8〕 |
仙 人*2 | 33〜41頁〔12〕 | = 21〜29頁〔12〕 | 25〜35頁〔12〕 |
羅生門*3 | 42〜50頁〔9〕 | = 30〜38頁〔9〕 | 36〜46頁〔19〕 |
鼻 | 51〜60頁〔12〕 | = 39〜48頁〔12〕 | 47〜57頁〔12〕 |
孤独地獄*4 | 61〜65頁〔13〕 | = 49〜53頁〔13〕 | 58〜62頁〔13〕 |
父 | 66〜72頁〔10〕 | = 54〜60頁〔10〕 | 63〜70頁〔11〕 |
虱*5 | 73〜80頁〔6〕 | × | × |
酒 虫*6 | 81〜92頁〔16〕 | × | × |
野呂松人形*7 | 93〜98頁〔6〕 | = 61〜66頁〔6〕 | 71〜76頁〔6〕 |
芋 粥*8 | 99〜122頁〔28〕 | = 67〜90頁〔28〕 | 77〜103頁〔28〕 |
猿*9 | 123〜131頁〔4〕 | × | × |
手 巾*10 | 132〜144頁〔6〕 | = 91〜103頁〔6〕 | 104〜117頁〔6〕 |
煙草と悪魔*11 | 145〜155頁〔22〕 | = 104〜114頁〔22〕 | 118〜130頁〔22〕 |
煙 管*12 | 156〜168頁〔12〕 | ≒ 115〜127頁〔12〕 | 131〜144頁〔13〕 |
MENSURA ZOILI | 169〜176頁〔10〕 | = 128〜135頁〔10〕 | 145〜153頁〔10〕 |
運 | 177〜188頁〔8〕 | = 136〜147頁〔8〕 | 154〜167頁〔8〕 |
尾形了斎覚え書*13 | 189〜194頁〔12〕 | = 148〜153頁〔12〕 | 168〜174頁〔12〕 |
道祖問答*14 | 195〜199頁〔18〕 | × | × |
水の三日 | 200〜207頁〔4〕 | × | × |
槍が岳に登った記*15 | 208〜211頁〔1〕 | × | × |
日光小品 | 212〜219頁〔9〕 | = 154〜161頁〔9〕 | 175〜183頁〔9〕 |
大川の水 | 220〜225頁〔11〕 | ≒ 162〜167頁〔11〕 | 184〜191頁〔11〕 |
松江印象記*16 | 226〜230頁〔10〕 | × | × |
出 帆*17 | 231〜235頁〔9〕 | × | × |
葬儀記*18 | 236〜242頁〔22〕 | = 168〜174頁〔22〕 | 192〜199頁〔23〕 |
樗牛の事*19 | 243〜248頁〔6〕 | × | × |
文学好きの家庭から | 249〜250頁〔7〕 | × | × |
校正後に | 251〜253頁〔18〕 | × | × |
「羅生門」の後に*20 | 254〜256頁〔5〕 | × | × |
角川文庫45【改版四十三版】では「道祖問答」と「水の三日」の間と「文学好きの家庭から」と「校正後に」の間がそれぞれ1行空いている。すなわち短篇小説・随筆・後記に分けてあるので、「校正後に」というのはそんな題の文章があるのではなくて「注釈」275頁3行めに「二五一*校正後に 第四次「新思潮」の編集後記から芥川の文を採録した。」*21とある。頭に○を附した箇条書きで末尾の括弧に出典を示す。すなわち(新思潮創刊号*22)1条、(新思潮第四号)1条、(新思潮第六号)1条、(以上新思潮第七号)3条、(以上新思潮第九号*23)5条、(以上新思潮第二年第一号*24)7条。
ざっと見たところ、本文については「=」で示したところ、角川文庫7499は角川文庫45【改版四十三版】をそのまま流用しているように見えるが、それでも「≒」としたところには異同があることに気付いた。すなわち「煙管」の6〜7頁めの切れ目「供の/侍たち」のところ、角川文庫45【改版四十三版】161〜162頁はルビ「とも さ/むらい」となっているが、角川文庫7499は120頁「とも」のみで「さむらい」はなくなっている*25。また「大川の水」の最後、6頁めの16行め下寄せで(一九一二・一)とあり、17〜18行めに一回り小さい活字で2字下げにて「その後「一の橋の渡し」の絶えたことをきいた。「御蔵橋の渡し」の廃れるのも間があるまい。」の追記がある*26が、角川文庫45【改版四十三版】225頁は18行め「/い。」だが角川文庫7499の167頁は17行めがさらに1字下げで18行めは「/まい。」になっている。(以下続稿)
*1:【2020年10月17日追記】縦罫代わりに「角川文庫14718」の列の各枠の頭に「|」を入れて置いたが、はてなブログ移行により邪魔なだけになったので削除した。
*2:ルビ「せん にん」。
*3:ルビ「らしようもん」。
*4:ルビ「こ どくじ ごく」。
*5:ルビ「しらみ」。
*6:ルビ「しゆ ちゆう」。
*7:ルビ「の ろ ま 」。
*8:ルビ「いも がゆ」。
*9:ルビ「さる」。
*10:ルビ「はん けち」。角川文庫14718「 は ん け ち」。
*11:ルビ「た ば こ あくま 」。
*12:ルビ「 き せ る 」。
*13:ルビ「おがたりようさいおぼ がき」。
*14:ルビ「どうそ もんどう」。
*15:ルビ「やり たけ」。
*16:ルビ「まつえ いんしようき」。
*17:ルビ「しゆつ ぱん」。
*18:ルビ「そうぎ き 」。
*19:ルビ「ちよぎゆう 」。
*20:ルビ「らしようもん」。
*21:ルビ「こうせい・こうき・あくたがわ」。
*22:ルビ「しんしちようそうかんごう」。
*23:ルビ「しんしちよう」。
*24:ルビ「しんしちよう」。
*25:角川文庫14718では137頁11行めで改行・改頁箇所ではなく「とも さむらい」のルビがある。
*26:ルビ「み くらばし・すた」。なお角川文庫14718の191頁3行め「/があるまい。」