瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

芥川龍之介『羅生門』の文庫本(08)

・角川文庫45『羅生門・鼻・芋粥』(2)
 昨日の続きで、角川文庫45【改版四十三版】(314頁)・【再版】【十七版】(213頁)・角川文庫14718(251頁)の本体を比較してみる。
 1頁(頁付なし)扉のレイアウトは同じ、子持枠の中、横組みで上部に標題があるが角川文庫7499【再版】にのみ、標題の上に小さく「改編」とある。標題の下に小さく著者名、下部に左向きの鳳凰、角川文庫45【改版四十三版】・角川文庫7499は羽を銜えて翼・脚を広げているが、角川文庫14718は脚を揃えている。
 2頁(頁付なし)角川文庫45【改版四十三版】にのみ、左下に縦組みで「本書は現代表記法により、原文を新字・新かなづかいに/したほか、漢字の一部をひらがなに改めた(編集部) 」とある。
 次に「目次」、角川文庫45【改版四十三版】3〜5頁(1頁に16行)、角川文庫7499は3〜4頁(1頁に17行くらい)、角川文庫14718は3頁(頁付なし)は目次の扉で「羅生門・鼻・芋粥 目 次」とあり、4〜5頁に1頁12行でゆったりと組んでいる。この目次を比較するに、角川文庫7499と角川文庫14718は一致している。
 巻頭の「老年」を見るに、角川文庫45【改版四十三版】7〜12頁と、角川文庫7499の5〜10頁は一致している。すなわち両者とも1頁18行、1行42字である。角川文庫14718は7〜13頁、1頁17行・1行37字。これも含めて、一覧表にして見る。頁の次の〔 〕には注釈の数を示す*1

作品名 改版四十三版 角川文庫7499 角川文庫14718
老 年 7〜12頁〔8〕 = 5〜10頁〔8〕 7〜13頁〔25〕
青年と死 13〜22頁〔4〕    ×     × 
ひょっとこ 23〜32頁〔8〕 = 11〜20頁〔8〕 14〜24頁〔8〕
仙 人*2 33〜41頁〔12〕 = 21〜29頁〔12〕 25〜35頁〔12〕
羅生門*3 42〜50頁〔9〕 = 30〜38頁〔9〕 36〜46頁〔19〕
51〜60頁〔12〕 = 39〜48頁〔12〕 47〜57頁〔12〕
孤独地獄*4 61〜65頁〔13〕 = 49〜53頁〔13〕 58〜62頁〔13〕
66〜72頁〔10〕 = 54〜60頁〔10〕 63〜70頁〔11〕
*5 73〜80頁〔6〕    ×     × 
酒 虫*6 81〜92頁〔16〕    ×     × 
野呂松人形*7 93〜98頁〔6〕 = 61〜66頁〔6〕 71〜76頁〔6〕
芋 粥*8 99〜122頁〔28〕 = 67〜90頁〔28〕 77〜103頁〔28〕
*9 123〜131頁〔4〕    ×     × 
手 巾*10 132〜144頁〔6〕 = 91〜103頁〔6〕 104〜117頁〔6〕
煙草と悪魔*11 145〜155頁〔22〕 = 104〜114頁〔22〕 118〜130頁〔22〕
煙 管*12 156〜168頁〔12〕 ≒ 115〜127頁〔12〕 131〜144頁〔13〕
MENSURA ZOILI 169〜176頁〔10〕 = 128〜135頁〔10〕 145〜153頁〔10〕
177〜188頁〔8〕 = 136〜147頁〔8〕 154〜167頁〔8〕
尾形了斎覚え書*13 189〜194頁〔12〕 = 148〜153頁〔12〕 168〜174頁〔12〕
道祖問答*14 195〜199頁〔18〕    ×     × 
水の三日 200〜207頁〔4〕    ×     × 
槍が岳に登った記*15 208〜211頁〔1〕    ×     × 
日光小品 212〜219頁〔9〕 = 154〜161頁〔9〕 175〜183頁〔9〕
大川の水 220〜225頁〔11〕 ≒ 162〜167頁〔11〕 184〜191頁〔11〕
松江印象記*16 226〜230頁〔10〕    ×     × 
出 帆*17 231〜235頁〔9〕    ×     × 
葬儀記*18 236〜242頁〔22〕 = 168〜174頁〔22〕 192〜199頁〔23〕
樗牛の事*19 243〜248頁〔6〕    ×     × 
文学好きの家庭から 249〜250頁〔7〕    ×     × 
校正後に 251〜253頁〔18〕    ×     × 
羅生門」の後に*20 254〜256頁〔5〕    ×     × 

 角川文庫45【改版四十三版】では「道祖問答」と「水の三日」の間と「文学好きの家庭から」と「校正後に」の間がそれぞれ1行空いている。すなわち短篇小説・随筆・後記に分けてあるので、「校正後に」というのはそんな題の文章があるのではなくて「注釈」275頁3行めに「二五一*校正後に 第四次「新思潮」の編集後記から芥川の文を採録した。」*21とある。頭に○を附した箇条書きで末尾の括弧に出典を示す。すなわち(新思潮創刊号*22)1条、(新思潮第四号)1条、(新思潮第六号)1条、(以上新思潮第七号)3条、(以上新思潮第九号*23)5条、(以上新思潮第二年第一号*24)7条。
 ざっと見たところ、本文については「=」で示したところ、角川文庫7499は角川文庫45【改版四十三版】をそのまま流用しているように見えるが、それでも「≒」としたところには異同があることに気付いた。すなわち「煙管」の6〜7頁めの切れ目「供の/侍たち」のところ、角川文庫45【改版四十三版】161〜162頁はルビ「とも さ/むらい」となっているが、角川文庫7499は120頁「とも」のみで「さむらい」はなくなっている*25。また「大川の水」の最後、6頁めの16行め下寄せで(一九一二・一)とあり、17〜18行めに一回り小さい活字で2字下げにて「その後「一の橋の渡し」の絶えたことをきいた。「御蔵橋の渡し」の廃れるのも間があるまい。」の追記がある*26が、角川文庫45【改版四十三版】225頁は18行め「/い。」だが角川文庫7499の167頁は17行めがさらに1字下げで18行めは「/まい。」になっている。(以下続稿)

*1:2020年10月17日追記】縦罫代わりに「角川文庫14718」の列の各枠の頭に「|」を入れて置いたが、はてなブログ移行により邪魔なだけになったので削除した。

*2:ルビ「せん  にん」。

*3:ルビ「らしようもん」。

*4:ルビ「こ どくじ ごく」。

*5:ルビ「しらみ」。

*6:ルビ「しゆ  ちゆう」。

*7:ルビ「の ろ ま     」。

*8:ルビ「いも  がゆ」。

*9:ルビ「さる」。

*10:ルビ「はん  けち」。角川文庫14718「 は ん け ち」。

*11:ルビ「た ば こ  あくま 」。

*12:ルビ「 き せ る 」。

*13:ルビ「おがたりようさいおぼ  がき」。

*14:ルビ「どうそ もんどう」。

*15:ルビ「やり  たけ」。

*16:ルビ「まつえ いんしようき」。

*17:ルビ「しゆつ ぱん」。

*18:ルビ「そうぎ き 」。

*19:ルビ「ちよぎゆう   」。

*20:ルビ「らしようもん」。

*21:ルビ「こうせい・こうき・あくたがわ」。

*22:ルビ「しんしちようそうかんごう」。

*23:ルビ「しんしちよう」。

*24:ルビ「しんしちよう」。

*25:角川文庫14718では137頁11行めで改行・改頁箇所ではなく「とも さむらい」のルビがある。

*26:ルビ「み くらばし・すた」。なお角川文庫14718の191頁3行め「/があるまい。」