瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

太宰治『斜陽』の文庫本(17)

・角川文庫26(2)
 2012年8月5日付(09)に、望月氏のカバーを貼って置いたが、当時は未見だった。その後、見る機会があったのでメモして置く。
【百十五版】昭和二十六年八月十五日初版発行・平成十年四月十日百十五版発行・定価300円・190頁
 百十二版と比較するに、本体は1頁(頁付なし)扉の鳳凰が、翼と脚を広げ羽を銜えたものから、翼を広げ脚を揃えたものに変わっている他は一致。奥付、鳳凰は扉と同様に変わっており、他に異同としてはそれぞれの発行日、電話番号の市外局番(〇三)の次の4桁が「三八一七」から「三二三八」に、「〒一〇二 振替東京③一九五二〇八」が「〒一〇二−八一七七/振替〇〇一三〇−九−一九五二〇八」の2行に、「印刷所――新興印刷 」の下「製本所――」が「大谷製本」から「本間製本」に、装幀者の1行の次に「本書の無断複写・複製・転載を禁じます。」とあるのは同じだが、百十二版「落丁・乱丁本はご面倒でも小社角川ブック・サービス宛に/お送りください。送料は小社負担でお取り替えいたします。」とある宛先が百十五版は「小社営業部サービスセンターに」となっている。少し空けて1字下げで「定価はカバーに明記してあります。」とあるのは同じ。そして匡郭内の下辺右上に横組みで「©Printed in Japan」、匡郭下辺の下、左寄りに百十二版「た 1-1」とあるが百十五版「CL た 1-1」とある。右寄りにISBNコードとCコードがあるがこれは一致(カバーに同じ)。ともに裏の「角川文庫発刊に際して」までで目録類はない。
 カバー、表紙折返しは2012年9月30日付「太宰治『女生徒』の文庫本(2)」で見た角川文庫863『女生徒』改版五十七版に同じ。背表紙の形式も同じで最上部のみ白地でQRコード、以下は水色地で「|た|1-4|Y300|太宰 治   斜陽」とある。著者名はゴシック体、標題は明朝体の太字。の中にある。下部に「角川文庫 |■」。裏表紙折返しもほぼ一致、但し◇に囲われたRがない。
 カバー裏表紙の形式も同じだが、内容は百十二版と比較する。左上のバーコードは2つめの下4桁が「3100」から「3000」に、右上1行めのISBNコードは一致、百十二版は2行めに「C0193 P310E 定価310円」定価の下に小さく(本体301円)とあったのが、百十五版は2行め「C0193 \300E」3行め「定価:本体300円(税別)」となっている。
 中央に縦組みゴシック体の紹介文(1行14字)があるのは一致するが、百十二版は10行だとったのが百十五版は12行に増えており、かなりの書き換え・書き足しが認められる。ほぼ一致するのは百十二版5〜8行め「自分の/体に流れる貴族の地に反抗しな/がらも、戦い敗れて、宿命的な/死を選ぶ弟。」が百十五版4〜7行めでは「反抗し」が「抗い」となっているだけである。引用符が百十二版は半角鍵括弧であった(かず子に関する引用の括弧閉じのみ全角)のが、百十五版では半角山括弧になっている(母に関する引用の括弧閉じのみ全角)。引用されるのは百十二版は1〜2行め「私生児と、その母、けれども…/…」からだが、百十五版にはここはなく1〜2行目、百十二版では次に引かれる「古い道徳とどこまでも争い、太/陽のように生き」のみである。百十二版は2〜3行め「ていく一人/の女。」と受け、百十五版は2行め「るかず子。」と受ける(「かず子」に傍点)。母については百十二版4〜5行め「日本で/最後の貴婦人」が引用部だが百十五版2〜3行めには「日本で」はない。百十二版は引用の前の4行め「結核で死んでいく」後の5行め「のその母。」とあるが、百十五版は引用の後の3〜4行め「の誇りを胸に結核/で死んでゆく母。」となっている。誇りを胸に、というほどの気負いは感じないのだが如何。百十二版には上原の記述はないが、百十五版には弟の次、7〜8行めに「放蕩の生活をつづけるデカ/ダン作家・上原――。」とある。百十二版は8〜10行め「昭和二十二年、死/の一年前のこの作品は、作者の/名を決定的なものにした。」と簡単だが、百十五版の8〜12行めは「雑誌連載/時から評判を呼び、刊行される/やたちまちベストセラーとなっ/て、“斜陽族”なる流行語まで生/みだした、昭和文学屈指の名作。」と、やや詳細になっている。