瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

角川文庫の松本清張(1)

・昭和30年代 粒ぞろい短編集(1)
 松本氏の没後しばらくしてから、角川文庫では従来刊行していた短篇集を解体して、テーマ毎に新たに編集したものを出すようになる。2月23日付「松本清張『潜在光景』(2)」で見た、角川ホラー文庫『潜在光景』がその走りらしい。
 ここに取り上げたシリーズは同じ装幀で、カバー表紙の下部、横組み「角川文庫」の上に灰色で「Matsumoto Seicho Showa 30's Collection 1(〜3)」とシリーズ名が入っている。
【1】角川文庫14547『男たちの晩節』

男たちの晩節 (角川文庫)

男たちの晩節 (角川文庫)

・平成十九年一月二十五日初版発行(297頁)定価514円
・平成十九年一月二十五日初版発行・平成二十二年八月二十五日九版発行 定価514円
 カバーが若干違う。表紙は一致。
 カバー背表紙は初版は上部「QRコード|ま|1-33|Y514|」とあったが九版は「ま 1-33」のみ、地色は九版は肌色で初版はごく薄い桃色。次にゴシック体で著者名、少し空けて「男たちの晩節」で囲われている。色は初版の方が若干淡い。標題は明朝体、著者名と標題は九版の方が太い。下部の「角川文庫 |■」は一致*1
 カバー裏表紙はほぼ同じだが、右上のゴシック体横組み14行(1行14字)の紹介文が組み直されている。10行めまでは同文で字配りも同じだが、初版では1・2・7・10行めの行末の句点がぶら下げではみ出していたのが、九版ではその行の文字や句読点の横幅を縮めて、行末に半角の句点をはみ出ないように収めている。11〜14行めは、初版「/秀逸な短編を次々著した昭和30/年代作品群の中から人生の晩節/をテーマに選び抜いた、粒ぞろ/いの短編集。」が九版では「/秀逸な短編を次々著した昭和30/年代の作品を中心に、人生の晩/節をテーマに選び抜いた、粒ぞ/ろいの短編集。」となっており、11行めの算用数字「30」は初版ではこの2桁で1.5字分だったのが、九版は1字分に収めている。
 カバー表紙折返し、上部の顔写真と名前は同じ、その下の紹介文は同文だが、初版は算用数字が2桁で1.5字分だったのが九版は2桁で1字分に、初版は二重鍵括弧が全て半角だったのが、九版では連続して使用している箇所では半角、前後が文字の場合は全角になっている。最下部にゴシック体で2行「装画恩地孝四郎「葉っぱと雲」」「装丁鈴木成一デザイン室」とあるのは同じだが九版は一回り小さい。また「/」が初版は前記、算用数字と同じ幅だったのが、九版は1字分取っている。九版は、著者紹介からここまでの間は余白になっているが、初版では著者紹介のすぐ下に子持枠(3.2×4.3cm)があって、やはり横組みで次のように記載されていた。

昭和30年代
粒ぞろい短編集(3冊)
――――――――――
男たちの晩節 既刊
三面記事の男と女 '07年2月刊
学芸の偏狭者たち '07年3月刊


 横線(3.8cm)の上はゴシック体、下は明朝体。3つめは実際には違った題で刊行されている。
 裏表紙折返し、ゴシック体横組みの「角川文庫|松本清張の本 ||」であるのは同じ、初版は本書まで19点、九版は24点25冊で「三面記事の男と女/偏狂者の系譜/神と野獣の日/或る「小倉日記」伝/乱灯 江戸影絵 上・下」が追加されている。細かい異同としては1点めの「顔・白い闇」の中黒点が全角から半角に変わっている。九版は右下にKBマークがあるだけだが、初版は書名列挙の下、余白を挟んで明朝体で小さく「カバー 泉文社」とある。
 本体は奥付も九版発行の1行が追加されていることと「製本所―BBC」が「製本所―本間製本」となっている他は一致*2、裏は「角川文庫発刊に際して」、目録は「角川文庫ベストセラー」で1頁7点がそれぞれ4頁、初版は1頁めが松本清張で「顔・白い闇/霧の旗/徳川家康/信玄戦旗/黒い空/犯罪の回送/松本清張の日本史探訪」、2頁めは多島斗志之2点、田辺聖子4点、太宰治「晩年」、3頁めは太宰治で「女生徒/ろまん燈籠/走れメロス/津 軽/斜 陽/人間失格・桜桃/グッド・バイ」、4頁め高杉良7点*3。九版は3頁めの6点めまでが松本清張、残りは太宰治。松本氏の分は1頁め「顔・白い闇/山峡の章/水の炎/死の発送/失踪の果て/紅い白描/黒い空」2頁め「数の風景/犯罪の回送/一九五二年日航機「撃墜」事件/松本清張の日本史探訪/聞かなかった場所/潜在光景/三面記事の男と女」3頁め「偏狂者の系譜/神と野獣の日/乱灯 江戸影絵(上)(下)/夜の足音 短篇時代小説選/蔵の中 短篇時代小説選/或る「小倉日記」伝」で、このうち「短篇時代小説選」の2点はカバー裏表紙折返しに出ていない。太宰氏の分は3頁め「晩年」、4頁め「女生徒/走れメロス/斜 陽/人間失格ヴィヨンの妻/ろまん燈籠/津 軽」*4
 太宰氏の分で2つ、標題が異なっているが、「人間失格・桜桃」が「人間失格」になっていることは2012年6月24日付「太宰治『人間失格』の文庫本(05)」にて注意して置いた。標題の下にある3行(1行22字)の紹介文は、初版と九版で一致している。それから「グッド・バイ」が「ヴィヨンの妻」になっている。これも昨年来見当は付けていて2012年10月23日付「太宰治『女生徒』の文庫本(6)」に「いづれ取り上げるつもり」と予告したのだが未だ『ヴィヨンの妻』を見る機会がないので記事に出来ないでいる。紹介文は、初版『グッド・バイ』は「死の前日までに十三回分で中絶した未完の絶筆で/ある表題作をはじめ、「パンドラの匣」など著者/が最後に光芒を放った最晩年の傑作集。」で九版『ヴィヨンの妻』は「不安にさいなまれて酒に逃げる男を妻の視点で描/いた表題作ほか、未完の絶筆「グッド・バイ」、/「パンドラの匣」など最晩年の傑作短編集。」となっている。他の太宰氏の作品の紹介文は一致、これは両者に共通する松本氏の作品4点についても同じ。(以下続稿)
4月14日追記】当初「松本清張の文庫本(1)」と題していたが、改題した。

*1:5月17日追記】五版(平成二十一年三月十五日五版発行)を見た。カバーは九版に同じ(のようだ)。【5月19日追記】十一版(平成二十四年七月三十日十一版発行)を見た。五版と並べて見るに、カバーは同じだが黒が薄くなり、背表紙の●|■が五版は●|■だったのが十一版は●|■である。これは褪色のためばかりではないだろう。

*2:Amazon詳細ページのなか見!検索では「平成二十年八月三十日四版発行」を見ることが出来る。カバーは初版と一致、奥付は発行日以外は九版と一致。【5月17日追記】五版の奥付は「製本所―BBC」となっており四版「製本所―本間製本」と異なるのみ。【5月19日追記】五版は装幀者の後に「本書の無断複写・複製・転載を禁じます。」の1行と「落丁・乱丁本」について2行の計3行があったが、十一版では「無断複製」云々が4行に増えて合計6行になっている他は、それぞれの発行日が異なるのみ。

*3:5月17日追記】五版は初版に同じ。

*4:5月19日追記】十一版は九版に同じ。