瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

山下武『20世紀日本怪異文学誌』(14)

 昨日の続き。昨日の記事には若干追加して置いた。
 31回に及ぶ連載のうち、私の見た第60号に載るのは「(24)岡本綺堂」番号は黒丸に白抜き数字。181頁〜187頁上段、2段組、1段25行、1行30字。これが単行本では24番め(292〜303頁)に収録される「岡本綺堂「離魂病」「百物語」」である。
 この章、単行本には挿図はないが、初出誌には183頁上段左にキャプション「岡本綺堂」とある肖像写真がある。
 他の章には挿図がある。岡本綺堂の顔写真は珍しくもないが、本書に取り上げた作家にはネット上に写真の上がっていない人も少なくないから、連載時に掲出していたのならそのまま出して置いて欲しかった。それはともかく、単行本に出ている挿図は全て、取り上げた作品の載る単行本や雑誌を、なるたけ背表紙も写るように撮影したもので、山下氏の蔵書らしくバーコードも貼付されておらず、帯も附されている。白黒だけれども貴重な資料だと思われるので、ここに写真の下に横組みゴシック体で入っているキャプションを抜き出して置く。掲載位置は奇数頁は左上、偶数頁は右上の、9行分×21字分のスペースである。背表紙や帯の文字は殆ど読めないが、※印で帯の有無などを注記して置いた。
・11頁 朱欒(明治44年12月)*1
・29頁 新青年昭和2年11月号)
・33頁 ぷろふいる ※昭和9年7月号か
・47頁 木乃伊の妻(昭和22年)
・51頁 ラ・マンチャ(昭和28年) ※第7号
・59頁 腹話術師 ※函に帯
・67頁 生膽盗人 ※函に帯
・69頁 鬼の末裔 ※函に帯
・71頁 聖悪魔
・87頁 シュピオ(昭和12年 ※1月号
・91頁 別冊宝石(昭和24年) ※第1巻3号
・104頁 真夜中の檻(昭和35年 ※帯*2
・133頁 謎の二重体(昭和22年)
・193頁 ドグラ・マグラ ※函
・243頁 怪談部屋(昭和31年)
・285頁 談話売買業者(村松梢風著) ※函
・345頁 「盲目の人魚」が掲載された宝石(昭和21年) ※秋季特大號
・369頁 離魂病
 これら挿図に使用された山下氏の蔵書については、taqueshixのブログ「漁書日誌ver.β」の2012-01-13「愛書会展」のコメント欄に、その行方(散逸)につき記述されていた。
 さて、「岡本綺堂」に戻って、本文の方は同文のようだが1箇所だけ、初出185頁下段3行め「中老」が単行本299頁7行め「中臈*3」となっているのに気付いた。
 これは、2012年4月5日付「平井呈一『真夜中の檻』(17)」にも注意して置いた次の(付記)に関連して、修正したものと思われる。302頁18行め〜303頁2行め、

(附記)その後、「百物語」の初出誌につき岡本経一氏から重ねてご教示を得た。それによると、「婦/人倶楽部」大正十三年七月号掲載「生霊の白い女」がそれで、原題を「中臈の死」(大正十二年十/月作)という。*4


 「重ねてご教示」というのは本文300〜301頁にその一節が引用されている、山下氏が「春陽文庫に「百物語」が「初出誌未詳」と」なっていることについて問合せたことに対する岡本氏の私信を指す。山下氏はこの私信に示された岡本氏の「推理」に賛成して本文を書いていたのだが、その後、岡本氏が自らその誤りを知らせて来たのである。

*1:ルビ「ザムボア」。

*2:本書の書影については2012年2月2日付「平井呈一『真夜中の檻』(16)」に当時、ネットで見られたものを上げて置いた。紀田氏の載せている写真も含め帯のないものばかりであったが、その後、古書転蓬のブログ「転蓬だより」2012年11月24日付「日清役台湾史、真夜中の檻、恐怖の仮面、薔薇と蜃気楼ほか」に、帯を存している初版本の、少しブレたカラー写真が掲載された。

*3:「臈」は月+葛ではなく草冠に月+曷。ルビ「ちゅうろう」。

*4:「臈」は月+葛ではなく草冠に月+曷。ルビ「ちゅうろう」。