瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

終電車の幽霊(4)

 2012年4月20日付(1)で取り上げた、新美南吉の日記に関連して、その後気付いたことどもを挙げて置く。今回は「終電車の幽霊」の話ではないのだが、補足ということで、追記として差込むのも手間なので(4)にして置く。
 まず、2012年4月21日付(2)に、『現代民話考』に「碓氷峠の幽霊娘」が載っていない、と書いたのだが、載っていた。御所トンネルの記事(4月30日付「御所トンネル(3)」等)を準備しているときに気付いたのだが、5月1日付「御所トンネル(4)」で見た「列車のトンネルの怪・橋の怪」の「分布」の4番め、単行本295頁14行め〜296頁10行め*1に、「御所トンネル」の話の前に収録されていたのである。
 しかし、この話をトンネルの怪異とするのは違和感がある。トンネルに幽霊が出る、のではなくて、幽霊娘が消えるタイミングがトンネルなので、娘はトンネルまでずっと乗っているのである。トンネルで消えるのも、いつの間にか消えているので、特にトンネルで怪異が強調されるという訳でもない。従って、この「碓氷峠の幽霊娘」はやはり「いつのまにか乗っている死者」に含めた方が良いと、考える。
 それからもう1つ、この6月1日(土)から応募受付が始まった今年の「第25回 新美南吉童話賞」に、今回から新たに「幻の童話」部門が新設された。これは新美氏が構想メモを残しながら作品化しなかった「幻の童話」を完成させる、というもので、課題になっている新美氏のメモは以下の通りである。

南吉の構想メモ(「幻の童話」部門)

① こがね虫は金持ちだ、と子供が歌っている。その歌(※)をきいてびっくりしたこがね虫のこどもの話。(童話) (昭17.6.11)
※野口雨情作詞の童謡「黄金虫」

② よく笑う少女が学芸会でよく笑う人間の役をふられそれ以来笑うことをやめてしまった話。(昭16.11.8)

③ 僕は終電車のあとで青い火をともして真夜に走る幽霊電車のことを書こうと思っていた。それにある夜酒に酔った男が知らずに乗ってしまうのである。(昭16.12.12)
※当時、知多鉄道(現名鉄河和線)の終電車に女の幽霊が出るという噂があり、それを基に南吉が記したメモです。


 この③幽霊電車の構想については、2012年4月22日付(3)で触れて置いた。
 まさか瑣事加減を見て思い付いた(!)訳でもあるまいが、年末には新美氏の構想を承けての新作が、72年を経て披露されることになった訳で、それはやはり新美氏の作品ではないのだけれども、一応注意して置きたい。――応募してみようかしらん(笑)。

*1:今、手許に文庫版がない。確認し次第追記する。