瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

松本清張『聞かなかった場所』(3)

・角川文庫3335
 2012年9月7日付(1)2012年9月8日付(2)に、初版(角川文庫3335)の四十五版(平成八年八月三十日四十五版発行・定価420円)を、改版(角川文庫13545)の八版と比較しつつ紹介した。

 その後、初版(角川文庫3335)の三十八版(平成二年七月三十日三十八版発行・定価350円)を見た。この伊藤憲治のカバーについては既に5月15日付「角川文庫の松本清張(6)」に触れた*1が、今回、四十五版と比較しつつもう少し詳しくメモして置きたい。これまでの記事で判明しているようなことは繰り返さなかった。
 Amazon詳細ページに行くとなか見!検索出来ることになっているが、クリックして表示されるのは改版四版である。石と砂の混ざった平地の中央に実物の巨石、その陰になるところが明るく、そうでないところが青く着色されている。左下に黄緑色で草、背景の地平線の上は赤紫色で、地平線に近いほど明るい。右下にゴシック体横組みで「角川文庫」とある。
 カバー表紙折返し、横組みで、上部「聞かなかった場所」と題して、2行・5行・2行・5行・3行の5段落17行(1行17字)の紹介文。これはMATSUMOTO SEICHO COLLECTION(四十五版)ではカバー裏表紙に移されているが、冒頭1字下げもなく段落分けもなされていない。内容は同じだが若干書き換えられているので以下少しづつ比較して見よう。1〜2行め「 農林省の食糧課係長浅井が、それを/知らされたのは出張先の神戸であった。」が1〜2行め「農林省の食糧課係長浅井が、妻の死を知らされたのは出張先の/神戸であった。」に、3〜7行め「 その晩、地元食品加工業者の招待に/よる宴会の途中、料亭の女中が彼に東/京の自宅からの電話を告げた。妻英子/の、外出先での心臓麻痺による急死、/――耳を疑う知らせであった。」が2〜4行め「その晩、地元食品加工業者の招待による宴会の/途中に入った東京の自宅からの電話は耳を疑う知らせであった。/妻英子の、外出先での心臓麻痺による急死である。」に、8〜9行めの浅井の心中思惟「 (英子は発作が起こったとき、どこ/を歩いていたのだろう?) 」は4〜5行め同文だが、( )及び読点が全角から半角に変えられている。10〜14行め「 急きょ帰京する寝台車の中で、浅井/は思った。そして、義妹によって語ら/れた、都内代々木のその場所、それは/妻がかつて口にしたことのない町であ/った。……」が5〜8行めに同文、改行位置のみ示すと「…する/寝台車…語られた、/都内代々木の…ない/町で…」、15〜17行め「 妻の死の真相を追って、思わぬ運命/にまきこまれる、一官吏の悲劇を描く/力作。」はこれも同文で8〜9行め、改行位置を示すと「まきこ/まれる」。下部の広告は3月5日付「角川文庫の「野性時代」の広告(1)」に示した分類の③。(以下続稿)

*1:一部誤記があったので修正した。