第十話「侑子」31〜32頁
この話は、4月10日付「小池壮彦『幽霊物件案内』(1)」で取り上げた『幽霊物件案内』の第一章「ホテル/泊まってはいけない! 」の冒頭(11頁〜12頁11行め)に「「あの話はしない方が……」」という思わせぶりな題で掲載され、その後、小池壮彦『四谷怪談 祟りの正体』115〜166頁「第三章 祟りの探訪」の最終節(159〜166頁)「東電OL殺人の闇」でも、平成9年(1997)3月に起きた、東電OL殺人事件のしばらく前に聞いたこととして、語られていた(160頁3行め〜163頁7行め)。
私がこの話を初めて知ったのは『四谷怪談』だった。この本は何年か前に通読してメモを取ったのだけれども、そのメモを発掘出来ないでいる。だいぶ忘れているからまた読み直しても良いのだけれども。
・知の冒険シリーズ(2002年5月25日第一刷発行・定価1,800円・学習研究社・265頁)四六判上製本
- 作者:小池 壮彦
- メディア: 単行本
まず、体験した人物の名前だが、『幽霊物件案内』は「この話を語った女性の名を、仮にユウコとしておく。本名で書いてもらってもかまわないというこ/とだったが、そうもいかなくなった事情はあとで話す。」としている(11頁5〜6行め)。『四谷怪談』は「この人の名前を、仮に優子としておく。」とする(160頁12行め)。そして『怪談』は「侑子」としている。そして『幽霊物件案内』で「彼女のことを私に紹介した知人」となっていた人物(12頁5行め)は、『四谷怪談』では「最後に優子に会った人というのは、彼女が怖い体験をしているということを私に知らせた人/で、仮に宮田氏と呼んでおく。この人は優子の元同僚である。」とある(161頁8〜9行め)。『怪談』では「同僚の水野という男」となっている(31頁10行め)。
本筋の展開は同じなのでそれぞれ同一人物のことと思われるのだが、しかし『四谷怪談』が「優子」が「死んだ」とするのに対し、『怪談』は「……。そ/の後に侑子は、容態の悪化と回復をくりかえし、何度も死線をさまよった。もとの肉体を完全に/失いながら、いまも同じアパートで暮らしている。」と結ぶ(32頁14〜16行め)。
以下、それぞれの文献から引用する場合は人名はそのままとしたが、地の文では「ユウコ」そして「知人」として置く。(以下続稿)