・平凡社東洋文庫122『日本児童遊戯集』(2)
2011年2月3日付(01)に、平凡社東洋文庫122『日本児童遊戯集』の奥付の混乱について指摘し、「東洋文庫 刊行書目」についてメモして置いた。これを導入として、そこから報告者について話を進めるつもりだったのだが、震災で図書館が使用しづらくなったのと、仕事が忙しくなったのとでそのままになってしまった。最初から番号を2桁にして、長期にわたって続けるつもりだったのだけれども。
今でも、当初考えていた方向へと進める準備は出来ていない。今回も、結局は内容に関係のない話である。それというのも、初版と再版を並べることが出来たのである。
・昭和43年9月10日 初版発行
・昭和43年12月20日 再版発行
本文は、同じらしい。3頁、多稼山人「序」冒頭(2行め)の「紙鳶揚げ」の振仮名が、初版は「たこあ」と綺麗に入っているのに対して、再版は「た」が欠損して左上の交差している部分を認めるのみとなっている、といったような違いは、他にもあるかも知れないがそこまで確認していない。再版の奥付は、初版のそれに「再版発行」の1行が追加されているだけである。奥付の裏の上段、一九六三年十月付、平凡社「『東洋文庫』刊行の主旨」と、下段「『東洋文庫』の特色」も一致。
上下2段の「東洋文庫 刊行書目」が6頁(頁付なし)あるのも同じ、その最後の1頁は「×月刊行予定」すなわち発行日の翌月の刊行予定が各2点にそれぞれ5行の紹介文、と「続刊」が上段3点下段11点挙がっているのも同じ。
初版は「既刊」に123点(84点123冊)、「十月刊行予定」に「124 長崎日記・下田日記」・「125 義経記(2)全二巻完結」の2点。
再版は「既刊」に129点(87点129冊)、「一月刊行予定」に「130 天工開物*1」・「131 日本事物誌(1)全二巻」の2点。
ここでは「125 義経記(2)」の紹介文を引いておこう。東洋文庫の目録は分冊になっているものはまとめて記述しているので、各冊ごとの説明はない。たまたま翌月の刊行予定だったために(2)単独の紹介文が用意されたのである。「125 義経記(2)全二巻完結 〈佐藤謙三/小林弘邦〉訳」で「既刊」では最下部に示される定価はなく、2字下げで、
第二巻は、義経主従が辛くも奥州平泉に落ちのびる苦難の旅|を中心に、吉野山での静との別れから、衣川の合戦において|義経が悲惨な最期をとげるまで。義経を愛する人々の限りな|い献身とおびただしい犠牲のうえに、物語はくりひろげられ|る。豊富な注をほどこした現代語訳。
「既刊」のうち数点に4〜6行の紹介文がある。「/」は改行を示すがゴシック体算用数字の間に挟んだものは縦中横で上下にほぼ隙間なく並んでいる。横組みの数字の改行に準じて「/」で区切った。
初版は1頁め下段「11/25/32/56 太平天国 全四巻/〈李秀成の幕下にありて〉」に5行、2頁め上段「22/30 北京風俗図譜 全二巻」*2に4行、3頁め上段「50 絵本江戸風俗往来」に4行、4頁め上段「73 ヴェトナム亡国史 他」に5行、4頁め下段「83 燕京歳時記〈北京年中行事記〉」に5行、5頁め上段「105 明治大正史〈世相篇〉」に4行。
再版は1頁め上段「1 楼蘭〈流砂に埋もれた王都〉」に5行、1頁め下段「7/15/28 ミリンダ王の問い/〈インドとギリシアの対決〉全三巻」に5行、2頁め上段「19 東方旅行記」に5行、3頁め上段「42 ペルシア放浪記/〈托鉢僧に身をやつして〉」に4行、「47 魯迅〈その文学と革命〉」*3に4行、3頁め下段「59 オルドス口碑集」に4行、5頁め上段「106/121 東京年中行事 全二巻」に5行、5頁め下段「122 日本児童遊戯集」に6行。初版とは重複していない。
ここでは本書の紹介を抜いておこう。「122 日本児童遊戯集 〈大田才次郎編/瀬田貞二解説〉550」とあって、3字下げで、
鬼定め・芋虫ころ/\・いたちごっこ・どん/\橋……な|ど、今は残酷にも失われた遊戯と唄の種々。明治三十四年|に博文館が全国各地の文客に依頼し、その調査報告を集成|した好著。明治の貧しさ、炊飯の煙ながれる露地に、いぶ|せき藁家の井戸端に、かくも豊かに遊びつつ我々の父祖は|成長した。
改行位置を「|」で示した。なお〈/〉は割書を示す。
「続刊」14点だが、初版の1点めは「入唐求法巡礼行記 〈円仁著/足立喜六訳注〉*4」で再版には7点めに「入唐求法巡礼行記 〈円仁著/足立喜六訳注/塩入良道補注〉*5」となっている。初版2点めは「朝鮮幽囚記 〈H・ハメル著/生田滋訳〉」で再版1点め。初版3点めは「天工開物*6 〈宋応星撰/藪内清訳〉」でこれは再版「一月刊行予定」に「130 天工開物*7 〈宋應星撰/藪内清訳〉」と出ていた。初版4点めは「日本事物誌 全二巻 〈B・H・チェンバレン/高梨健吉訳〉」でこれも再版「一月刊行予定」に(1)が見えていた。初版5点めは「知恵の七柱 全四巻 〈T・E・ロレンス著/柏倉俊三訳〉」で再版5点め、初版6点め「カーブースの書/四つの講話/〈中世イランの逸話集〉 〈〈ケイ・カーウース/ニザーミー〉著/黒柳恒男訳〉」は再版4点めに「ペルシア逸話集/〈カーブースの書・四つの講話〉 〈〈ケイ・カーウース/ニザーミー〉著/黒柳恒男訳〉」に、初版7点め「明治東京逸聞史 森銑三著」は再版6点め「明治東京逸聞史 全二巻 森銑三著」になっている。初版8点め「大航海記 〈ベニヨフスキイ著/〈沼田次郎/水口志計夫〉訳〉」9点め「江戸参府紀行 全二巻 〈ケンペル著/斎藤信訳〉」10点め「元朝秘史 全二巻 村上正二訳」11点め「西学東漸記 〈容閎著/百瀬弘訳〉」及び13点め「菅江真澄随筆集 内田武志編」14点め「岸田吟香日記 〈柳田泉/岸田鶴之助〉編」は再版でも同じ位置にある。12点めは初版「夢酔独言 他 〈勝小吉著/勝部真長校訂〉」再版「康煕帝伝 〈ブーヴェ著/後藤末雄訳/矢沢利彦校注〉」となっている。再版にしか見えないものはこの『康煕帝伝』の他に、3点め「増補 山島民譚集 〈柳田国男著/〈関敬吾/大藤時彦〉編〉」。
なお、初版刊行後に刊行され、再版の「既刊」の最後(5頁め下段)に挙がっている3点だが、「124 長崎日記・下田日記」は「十月刊行予定」に見えていたし、「126 黒猫・創造十年 他/〈郭沫若自伝2〉全六巻」は続き物だからともかくとして、「129 改訂 京都民俗志」が初版の6頁めに見えていないのは、事情がありそうな。