瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

小池壮彦「「事件」になった戦後の怪談・奇談年表」(2)

 冒頭、以下の文章がある。最初の3行分の上部12字分を太い横線で仕切ってその上に「年表の/主旨と凡例」とあって、

 戦後から今日までに流布した怪談・奇談の/うち、主に社会的事件としてマスコミが報じ/たものを選び、その概要を記した。採り上げ/た項目は、世情を賑わせた幽霊事件を主とし、未確認生物の目撃事件も/対象とした。が、UFOの目撃情報は割愛した。一個人の怪奇体験は、/社会的影響力の有無を考慮して選んだ。また、戦後の世相史を眺望する/趣旨から、社会的に大きな影響を及ぼした事件・事故・災害も採り上げ/た。発生の年月を特定できない幽霊事件は、原則として採らなかった。/ただし、世相史との関わりという趣旨から見て重要と思われるものは、/次の処置により載せた。【247頁右・上段】
 ①発生の月は未詳だが、季節を特定できるものは、月の代わりに季節/  を記した。
 ②年月・季節とも未詳のものは、事件の発生が明るみに出た年月に項/  目を据えた。
 それぞれの項目の末尾に記載事項の出典を付した。資料が複数にわた/るものは、最も具体的な記述のある資料名を記した。単行本の場合は著/者名・書名・発行所名を記した。資料によって事件の伝え方が異なる場/合は、参照したすべての資料名を列挙した。その際の順番は、事件を報/じた年月の早い順とした。

とある。以下は年表形式で上下2段に「西暦|元号|月事件・報道のあらまし」として、「あらまし」は1行35字。
 出典は主として雑誌や新聞である。ただ誌紙名しか挙がっていないので「事件」と同時期の報道でない場合、当該記事を探すのはかなり面倒だと思われる。すなわち、昭和24年(1949)7月条に三鷹事件に纏わる幽霊事件、昭和26年(1951)4月条に桜木町事故に纏わる怪談が挙がるが、出典は『女性自身』である。『女性自身』は昭和33年(1958)創刊だから、巻号が記載されていないと頭から見て行かないと辿り着けない。別に参考資料があってそこに巻号が記されていれば分かるが、この表だけでは分からない。①②のような処置のなされたものも、同様である。
 さて、この基準からすると、新聞報道のなされた「事件」は原則として採録されているはずだ、と思われるのだが、2011年1月14日付「村松定孝『わたしは幽霊を見た』考証(03)」に挙げた、今野しのぶによって新聞から拾われた6件の幽霊事件のうち、この「年表」昭和45年(1970)8月条に見える「北海道空知郡栗沢町の萬念寺に安置される髪の伸びる人形の話題」=「お菊人形の伝説」以外の5件は、採録されていない。
 『わたしは幽霊を見た』には他にも囲み記事で3件、同種の事件が紹介されるが、これらもやはり採録されていない。なお、このうち1件が昭和47年(1972)の「カシマ」の記事であった。(以下続稿)