瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

中田薫『廃墟探訪』(11)

 昨日間違えて(10)より前にこちらを挙げてしまい、慌てて削除した。それは扨置き。
 このところ雨や曇り続きで、湿度が高く普段から湿気取りを複数据えている1階を蛞蝓が這い回るようになった。特に深夜に甚だしい。先日、点灯せずに台所に入ったら、踵で踏み潰してしまった。厚手の靴下を履いていたのだが、張り付いた遺骸を剥がし、床に飛び出していた内臓を拭い、それから靴下に染み付いた粘液を塵紙に吸わせたのだが、これがいけなかった。塵紙が靴下に吸い付いてしまったのである。洗濯すれば落ちるだろうと思っていたところが、踵のところが蛞蝓の形のまま固まっていて、しかも塵紙も剥がれずにくっついている。流石にこの靴下では靴は履けないな、と思った。部屋履きにしているうちに落ちるだろう。しかし、このしつこい粘液は何かに使えるんじゃないか。

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 昨日の続きで、②の部分。
別冊宝島93下18〜20「‥‥、最初からこ/の家を調べてほしかったのではないか。廃/墟ハンターと誉れの高い(?)我々なら、/」→『廃墟探訪』137上9〜12「‥‥、実/は最初からこの屋敷を調べて欲しかったの/ではないか――。廃墟巡りの旅をしている/我々ならば、‥‥」。
別冊宝島94上1〜2「‥‥血族の秘密を解き明/かしてくれるのではないかと……。」→『廃墟探訪』137上13〜15「‥‥一族の/秘密を解き明かしてくれるのではないかと/考えて……。」
 問題は次の部分である。まず別冊宝島94頁の上段3行め〜中段4行めまでを引いて見よう。

「う〜ん。心霊廃墟というわけか」
 私はカメラマンと目を合わせた。
 聞くところによれば、かつて霊能者・前/田和彗が若かりし頃この屋敷を訪れ、敷居/をまたぐなり昏倒したこともある曰く付き/の物件だともいう。この家でいったい何が/起きたのかはこの段階では知る由もないが、/我々は本物の雰囲気を漂わせる心霊廃墟に、/軽い緊張と胸の高鳴りを覚えるのだった。


 『廃墟探訪』137頁上段16〜25行めでは、

「う〜ん……不気味な廃墟だ」
 私はカメラマンと目を合わせた。聞く話/によれば、かつて霊能者・前田和彗が若か/りし頃この屋敷を訪れ、敷居をまたぐなり/昏倒したこともある曰く付きの物件だとも/いう。
 この家でいったい何が起きたのかはこの/段階では知る由もないが、我々は“本物”/の雰囲気を漂わせる心霊廃墟に、軽い緊張/と胸の高鳴りを覚えるのだった。

となっている*1。台詞の「心霊廃墟」が「不気味な廃墟」に書き換えられている訳だが、確かにここまでではせいぜい情報提供者(彼女)が両親から、別冊宝島93頁下段10行め・『廃墟探訪』137頁上段3行め、

「あの家には行かないように」*2

と言われていた、と云うばかりだったのだから、この段階で「心霊」と言い切ってしまうのはフライングである。霊能者の名前を持ち出した後なら「心霊廃墟」で構わないけれども。
 さて、その霊能者だが「前田和彗(わすい)」という霊能者はいない(らしい)。前田和慧(1952.7.18生)という尼僧はいるが法名は「わけい」。何らかの記事を読んだのではなく「聞く話」すなわち音で聞いたはずだのにワケイとワスイと異なるのは何とも不安ではあるが、しかしまさか偽者興行の「美空いばり」じゃアあるまいし、やはりこれは和彗ではなくて和慧のつもりなんだと思う。私はその手の番組を見なかったので、全く知らなかったが、前田氏は平成初年にTV出演などで有名になった人らしい。当時名が知られていたのでなければここに持ち出す意味がない訳だし。――「若かりし頃」すなわち得度する前の前田氏が何をしていたどんな人なのか知らないが、わざわざ「訪れ」たのだから何事かあったのだろう。そういった辺りの事情も、この廃墟に関する重要なトピックなのだから明らかにして置いて欲しい。しかしそれにしても大体、誰に「聞くところ」なのか。(以下続稿)

*1:ルビ、別冊宝島「わすい」、『廃墟探訪』「わすい・こんとう・いわ・よし」。

*2:『廃墟探訪』の鍵括弧開きは半角。