瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

赤いマント(71)

・高嶋友也「頭に回るは笑い声」

 YouTubeに上がっている「都市伝説上の怪人・赤マントをテーマにしたミュージッククリップ」で、作者である映像作家高嶋友也のHP「Tomovies」には以下のように説明されています。

頭に回るは笑い声
都市伝説を歌とアニメで表現する「こわうた」シリーズ。
昭和の世を震え上がらせた怪人・赤マントのミュージックビデオ。

2008年制作 / 自主制作 / 2:50 / 制作期間:2週間
「頭に回るは笑い声」作詞・曲 高嶋友也/歌 古都

 主人公の少年はまず紙芝居「怪人赤マント」を目にします。シルクハットに顔は白塗りの「赤マント」は、機動隊の包囲をすり抜けてマントを翻しながら夕方の高層ビル街の上を逃げて行く、そんな場面のようです。
 小学校でもどうやら先生が赤マントについて注意を与えているようです。児童の間では新聞記事の切抜きが巡回しています。この記事「また男児誘拐さる 今月4人目 愉快犯の犯行か」は0:41に大写しになって文字も判読出来ますので、ここに文字起しはしないで置きます。要点のみ挙げると、記事冒頭「昨夜未明」とあって、犯行時刻が夕方ではないことになっています。但しこれに続く犯行場面の再現(0:43〜1:30)は、その前の歌詞(0:31)にある「日の暮れた帰り道」に近い夕焼けの情景です。場所は示されていませんが被害者が「富山県立戸出西部小学校」の10歳(恐らく満年齢)の男児であること、この小学校は「富山県立」ではなく「高岡市立」で実在します。「目撃者」がいて「身長180センチ、鍔の広い帽子をかぶり、赤いコートを羽織るといった背格好」で、「一部の見解では昭和15年頃に世間を騒がせた怪人・『赤マント』になぞらえた愉快犯による犯行ではないかという見解を強めている。」というのですが、この文は首尾一貫していません。それから記事自体はまだ続きがあるはずなのですが切抜きは2段分だけで、この文の途中で上段から下段に移るのですが、太字にした部分は上段と下段に重複しています。
 さらに、「赤マント」は「昭和初期」の「都市伝説」「噂」で、「赤いマント」を身に付けた「人さらいが子供を誘拐し殺す」といった内容であることなどが説明されています。
 こうして見ると、このアニメーションは戦前の赤マント騒ぎではなく、戦後、まだ紙芝居が子供たちを集めていた昭和30年代くらいを舞台に設定しているようです。そうだとすると昭和15年(1940)頃を指して「昭和初期」というのはおかしいように思うのですが、それはともかく、記事にある過去の「噂」の内容や「(怪人)赤マント」と題する紙芝居が登場する辺りは、2013年12月12日付(52)で見た、池内紀『悪魔の話』にあるものに近いようです。
 ここに出て来る赤マントは路上に出没するのですが、歌詞に「赤色と青い色/どっちが好きか言ってしまえば」とある(0:45〜0:49)ので、怪人からの問掛けもあるようです。こういった辺りは、2013年12月25日付(65)に挙げた中島公子「坂と赤マント」に近いと言えましょうか。